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第23話 王国の激怒と、一夜の宴(その3)

「う~ん……誰がアーシとやるのぉ?」


門から現れた少女――魔獣王レガリアのその一言と解き放たれた禍々しい威圧感に、先頭の三人は一瞬うろたえたが、後ろに控える三千の兵士たち全員の顔から一瞬で血の気が引いた。


「ひえぇぇっ!??!?」

「あ、あれは……魔獣王……!?」

「バカな! なぜ魔獣王がこんな辺境の村にいるんだ!??!?」


大混乱に陥る兵士たち。だが、恐怖はそれだけに留まらなかった。


「うぐぐ……頭がガンガンするぅ……。あちゃー……っていうか、全員弱そー」


空から不機嫌そうに舞い降りたテンペスタの姿を認めた兵士たちが、さらに悲痛な悲鳴を上げる。


「あ、あれは……魔翔王の娘っ!!」

「ひぇ〜っ! 雷が落とされるぞぉぉぉっ!!」

「あんな化け物、どうやって倒せばいいんだよぉぉっ!!」


自由奔放に振る舞う幹部たちの後ろで、漆黒のゲートから静かに足を進めてきた黒フードの影――。


「……」


無言の死神ネクロアがその姿を現した瞬間、三千の王国軍は完全に顔面蒼白となり、文字通り死の恐怖に震え上がった。


「ひっ……! 死神っ!!」

「最悪の厄災が出たぁぁぁっ!!」

「ひいぃぃぃっ! お助けぇぇぇっ!!」


陣形など影も形もなく崩れ去り、逃げ出そうと押し合いへし合いを始める三千の兵士たち。完全なパニック状態に陥った自軍に対し、弓の名手・ヴァルツが顔を跳ね上げて怒号を飛ばした。


「落ち着けぇっ! こちらには国内随一の居合を誇る『剣聖』ガルシア殿、精神的支柱となる『迅槍』のブラッド殿がおられるのだぞっ! あの鳥など、この俺が即座に撃ち落としてやるわっ!!」

「フン、安心しろ! そんなデカいだけの斧で、一秒に五発を繰り出す我が槍の突きを受け切れるかな!?」


槍を構えたブラッドが不敵に鼻で笑い、長刀の柄に手をかけたガルシアも静かに刃を数センチ抜いて見せた。


「……俺には神の加護がついている。死神よ、我が聖剣の錆となって消滅するがいい」


――そして、戦いの火蓋は切られた。


真っ先に地を蹴って突進したのは、槍の達人・ブラッドであった。


「ハァァァッ!!」


空気を引き裂く甲高い打撃音とともに、一秒間に五発という目にも留まらぬ超連撃の突きがレガリアへ襲いかかる。

だが、レガリアは巨大な黒鉄の斧の腹を盾にし、激しい火花を散らしながらすべての突きを余裕でガードしてみせた。


「どうした魔獣ッ! ガードするのが精一杯かぁ!!」

「ふふ、元気いいねぇ……美味しそ〜」

「ふざけるな! 命を乞え――『爆竜突』ッ!!」


ブラッドが放った必殺の一撃。凄まじい衝撃波を伴う突進に対し、レガリアはひらりと後方へ跳躍してかわした。


「かかったなッ!!」


空中で体勢を崩したレガリアを見逃さず、ブラッドは「勝った」と確信して空中へ追撃の跳躍を敢行する。


――シャーーーッ!!


「……!!!?!"


直後、ブラッドの視界を覆ったのは、レガリアの下半身から伸びる黒蛇の尾であった。

黒蛇の口から勢いよく噴出された紫色の強酸毒液が、ブラッドが誇る自慢の槍を一瞬間でドロドロの液体へと溶かし去る。


「なっ……槍が……っ!?」


武器を失い、空中での体制を崩して絶望に目を見開くブラッド。

そんな彼を見上げ、レガリアはマイペースな笑みを浮かべると、巨大な黒鉄の斧を容赦なく振るい抜いた。


——ドスッ!!


空気すら断ち切る一閃。ブラッドの身体は、頭頂部から股下まで綺麗に縦一文字に叩き切られ、真っ二つとなって大地に転がった。


「よぉし、餌ゲットぉ」


返り血を浴びながら、レガリアはマイペースに黒鉄の斧を肩に担ぎ直すのだった。

お読み下さりありがとうございます!

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