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第六話 勇者と守護の誓い

「ショータ殿! 私は嬉しい!

あなたをまもり、あなたを導くことが私の使命なんだ。あのマルダ様のお墨付すみつきを貰えたんだぞ!

よーし! 必ず魔王を倒すぞ!!」


ライラは砂竜さりゅうを駆り、勢いそのままに帰路を急いでいた。

砂竜の長い尾は俺の背後で左右に激しく揺れ、砂塵が激しく舞っていた。


「ラ、ライラ…! すまないが、少しゆっくりで頼む。どうにも、俺はコイツが苦手らしい…。」


「ショータ殿…! す、すまない! また調子に乗ってしまった。

あそこの岩の上なら砂に呑まれない。少し休もう!」


「ありがとう、ライラ…本当にすまない…。」


ーーー


俺はまた、ライラの膝枕ひざまくらで休むことになった。太腿ふとももの温もりが、俺を癒してくれる。


「全く…こんなことで、俺は魔王を倒せるのだろうか…。」


「ショータ殿、本当にすまない。私はすぐ浮かれてしまって…。

私の膝枕で良ければ、好きなだけ休んでくれ。」


ライラはそう言い、俺の胸を優しくさすってくれていた。


「…ルミエールで黒梟くろふくろうに襲われ、イズファルに助けられてジュラへ渡り、初めてあかつきに出会った。

思えばライラとは、そのジュラからずっと一緒なんだな。」


「ふふ…そうだな。ショータ殿を初めて見た時は、正直なところ…なんだか頼りなかったよ。」


「はは…。俺もそう思うよ。」


「だけど、あれから色んなことがあり、その度にショータ殿はたくましくなった。体つきもかなり大きくなった。

でも私は…変わらぬあなたの心根こころねが好きだ。普段は頼りない時もあるが、いざと言う時のあなたに勇者の気配を感じていた。

これは、強い種を求める私の中の“女の本能”だと思う。」


「ライラにそう言ってもらえると、自信が出てくるよ。」


「しかし、ショータ殿が“魔王をたおす者”…か。まさに勇者だったわけだ。」


「…ライラ。俺、マルダに会えて良かったよ。」


「ショータ殿…。不安ではないか?」


「ああ。不安が無い訳じゃない。

だけど、俺が独りで魔王に立ち向かう訳じゃない。マルダも言っていたけど、ライラや仲間達の力が俺には必要なんだ。」


「任せてくれ。身も心も、私が助けてやる。」


「ああ。頼むよ、ライラ。

今の俺には信頼できる仲間がたくさんいる。あとは、俺自身が力を信じるだけだ。」


「そうだね。ショータ殿の“選択の力”は“信じる力”。きっとやれる。大丈夫さ。」


ライラはそっと俺に口づけをした。


「ライラ…。」

俺は彼女を強く抱き寄せる。


「ショータ殿…。」


彼女の鼓動が胸に伝わる。


「ライラ、俺を愛してくれてありがとう。」

「ショータ殿…。私はずっとあなたを愛しているよ。」


俺たちは熱く抱き合い、互いの絆を確かめ合った。


ーーー


しばらく二人で横になり、お互いの脚が絡まり、お互いの唇が触れる距離感で軽い抱擁ほうようを続けていた。


「ショータ殿…。私はマルダ様の予言で気になることがあるんだ…。

“三つ目の鍵は、愛の転生者”

これは、一体誰なんだろう。」


「転生者か…。マルダは自分ではないと言っていたし、まだこの世界にいないとも言っていた。」


「私は、女でなければいいと思っている。」


「なぜだ?」


「だって…愛の転生者だぞ? 女だったらショータ殿のことを好きになるに決まっている…。」


「ライラ! まだ現れてもいない者にやきもちを焼いたのか?」


「そ、そんなことは…!」

ライラの赤褐色せっかっしょくの肌は、さらに紅潮していた。


「あ、ああ、そうだ…やきもちだ! 悪いか⁈」


「ライラ! 本当にお前は可愛いな!」


「ショータ殿! 私はこう見えて乙女なんだ。優しくしてくれ!」


俺たちは再びじゃれ合い、体を重ねた。

二人きりでいられる今だけが、俺たちの時間だから。


ーーー


未開の地の深き谷底の都市、バース。


この場所と王都シルヴァリスを繋ぐ谷底の道を、ノブナ達はメーガンが改良したメサイアとともに掘り進めていた。


「ランマルさん! お、お願いします!」

メーガンがメサイアから指示を出す。


「よし。行きます!」

ランマルが両手を岩盤へ向ける。


「《黒球こっきゅうさん》!」


巨大な漆黒の玉が三つ、連続して岩盤へと飛び、触れた場所の空間ごと削り取った。


「ヒキガさん! 岩盤を固めてください!」


「任せろ! 《氷結ひょうけつしゅう》!」


ヒキガの術で土壁は凍り、崩落を防ぐ。


「ランマルさん、ヒキガさん、ありがとうございます。今日はここまでにしましょう。

メサイアに戻って休んでください。あとは工員が夜の間に磁場道じばどうを舗装しておきます。明日また続きを。」


「メーガン。お前もあとは工員に任せて休んでおけ。」

操縦室にいたノブナが言った。


「ノブナ様、ありがとうございます。

ランマルさんの新たな能力《黒球》は瓦礫がれきが出ませんので、かなり効率が上がっています。」


「あれはコウブの能力だったが、魂核こんかくを培養しておいて正解だったな。

あとで我にも移植してみよう。」


そこへ、ランマルとヒキガが操縦室へ戻ってきた。


「母さん、コウブの《黒球》はすごいです。これならハクの予想より早く道を繋げられます。春には間に合いそうですね。」

ランマルが嬉しそうに報告する。


「ランマル、お前の気力はたいしたものだ。あれ以上になると、俺の《氷結》が追いつかないぞ。」


「ヒキガ。お前の魂核を培養し、人工人間に埋め込めば仕事も楽になると思ったが…お前の力の属性が強すぎる。使いこなせる体が見つからん。負担を掛けてすまないな。」


「仕方ないさ。

属性に適合する体が必要なんてな。人工人間も万能じゃないってことか。」


「ハクギの研究を見ても、新しい能力に適合する体を創るのは至難の技だ。

ランマルにコウブの《黒球》が適合したのは奇跡に近い。我も試してみるが、成功率は低いだろう。」


「とにかく、明日のために飯をしっかり食って休ませてもらうよ。

ランマル、一緒に食いに行こうぜ。ノブナも、メーガンもどうだ?」


「はい! ヒキガさん、わ、私もご一緒させてください。」


「うむ。我も行こう。」

ノブナはにっこりと笑って答えた。


メサイアは二万人の女王派を収容するための移動要塞として改修されたが、長期の地下道建設のため、食堂・風呂・居住区は以前より快適さが増していた。


地下道完成の春まで、あと五ヶ月。

余裕は決してなかった。

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