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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十六章
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第一話 王の想い

杯の中で、琥珀こはく色の酒が静かに揺れた。

の火がぱちりとぜ、石壁に赤い影を踊らせる。


「……私の父、

イズファルがグラムディルに来ていたとは……」


ライラは杯を握ったまま、視線を落とした。

指先が、わずかに震えている。


「こんな話……私は、一度も聞かされたことがない……」


低く呟いた声には、単なる驚きだけではない。

長年、胸の奥に引っかかっていた“違和感”が、ようやく形を得たような響きがあった。


「そして……シバという転生者……」


彼女は、ゆっくりと顔を上げる。


「――真理しんりの力……」


その言葉を口にした瞬間、空気がわずかに張り詰めた。


「ショータ殿が迷いの転生者であるならば…

彼は……二つ目の鍵では、なかったということなのか……?」


その問いは、ドウエンに向けられたものではない。

まるで、過去そのものに向けられているかのようだった。


(ドワーフなら誰もが知るというライラの出生の秘密か…。イズファル…ここで何をしたと言うんだ)


俺はドウエンの話に、この国に引き寄せられた理由があると確信していた。


沈黙。


耐えきれなくなったように、ライラは身を乗り出す。


「ドウエン!

早く続きを聞かせてくれ!」


声に、焦りがにじむ。


「イズファルは……

シバは……⁈

一体、どうなったんだ!」


ドウエンは慌てる様子もなく、

卓の上に新しい酒瓶を置いた。


とくり、とくり。

深い音を立てて杯が満たされる。


「ライラさん、そう焦らないでください」


穏やかな声。

だが、その瞳には確かな重みが宿っていた。


「この先の話は……

すべてが、あなたの“出生”の秘密に関わる、大切なことなのです」


ライラの眉が、ぴくりと動く。


「ほれ、新しい酒が来ましたぞ」


ドウエンは杯を差し出し、わずかに笑った。


「さあ……続きを話しましょうか」


椅子に深く腰を下ろし、

炎に照らされた天井を一度見上げる。


「まだ、夜は長い」


静かな低音が、酒場の奥へと染み込んでいく。


「――飲みながら、ゆっくり聞いてくだされ」


杯と杯が、軽く触れ合った。

澄んだ音が鳴り、その余韻が消える頃――

物語は、さらに深い闇へと踏み込んでいく。



再び――時は四十年前へとさかのぼる。


グラムディル王国の宮殿――

《エル・ドゥラ》。


その長い回廊を、二人の足音が静かに響かせていた。


グラムディルが口を開く。


「転生者の名は、シバ。

二年前、突然空に現れ、壁の向こうの世界を――一瞬で消し去った」


「シバ……」


イズファルが小さく呟く。


グラムディルは続けた。


「彼の力は、“真理の力”。

神に匹敵する力だ」


「その力が…

ドウエンが言っていた……神の力、というわけか。

無から有を生み出し……

そして、有を無に帰す力……」


「イズファルよ。

この《エル・ドゥラ》はな……

南側の世界が消えた日から…

天に伸びた山脈を削り、創り上げた宮殿だ」


歩みを止めず、声は続く。


「南側の世界で、

わずかに生き延びた動物たちをここで育て、増やしてきた。

魔法石の力と……

シバの“生み出す力”を利用してな」


「……そうか。

シバの力……皮肉なものですね」


足音が、静かに響く。


「そうだな。

だが、シバの力は――使う者の意志次第だ」


グラムディルは足を止め、イズファルの肩を掴み、言った。


「善にも悪にもなり得る力。

だからこそ……ワシは、彼に教えたいのだ」


王の瞳は真っ直ぐだった。


「……何を、ですか?」


一瞬の間。


「――愛の力だ」


「愛の力……?」


回廊の先で、二人は立ち止まった。


「ここだ。

シバの部屋だ……」


重厚な扉を見据え、低く告げる。


「――ここに、彼がいる」

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