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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十五章
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第五話 煌めきの国

小屋の扉が、勢いよく開いた。


「待たせましたな! 異邦人いほうじんの方々!」


低く、地鳴りのようなしゃがれ声が、狭い小屋の空気を震わせる。


現れたのは、背は低いが横に分厚い――

岩塊がんかいがそのまま人の形を取ったかのようなドワーフだった。


「ドウエンと申す。

お二人は、ワシが責任を持ってグラムディルまで案内いたす」


ドウエンは一歩踏み出し、巨大な手を差し出す。


「ショータです。

よろしく頼みます、ドウエンさん」


その手を握った瞬間、思わず息を呑んだ。

岩のように硬く、分厚いてのひら

長年、斧と岩を相手にしてきた者の重みが、そこにあった。


「私はライラだ。

よろしく、ドウエンさん」


ライラも続いて手を差し出す。


「……ほう」


ドウエンは握手を交わしたまま、ライラの顔をじっと見つめた。

視線は探るように、何かを確かめるように動く。


「……あなたが……」


一瞬、言葉を切る。


「……いや、失礼しましたな。

ライラさん、あなた――

私が知っている方に、あまりに似ておられたものでな」


「さっきの関守せきもりも、意味深な反応だったが……」


俺が言うと、ドウエンは小さく喉を鳴らした。


「それは……

ご自身の目で確かめられた方がよろしいでしょうな。

まもなく、分かることです」


「うーん……」


ライラは眉間にしわを寄せる。


「なんだか、もやもやするぜ……」


「ははは。

その違和感も、無駄ではありませぬよ」


ドウエンは背を向け、隧道すいどうの奥を示した。


「さあ。

準備は、よろしいですかな?」


「もちろんだ」


「では――参りましょう!」


ドウエンの声が、岩壁に反響する。


「ドワーフの国――

鉱山都市国家グラムディルへ!」


その言葉と共に、

俺たちはまだ見ぬ世界へと、足を踏み出した。


――――


俺たちはドウエンに続き、岩のトンネルをゆっくりと進んでいた。


岩山を掘り抜いた巨大な隧道の壁面には、

淡く青白い光を放つ鉱石が点在し、

暗闇を押し返すように静かに輝いている。


まるで、岩そのものが息づいているかのようだった。


「ショータ殿……この隧道、綺麗だな」


「ああ……本当だ。

この光る石は、何の鉱石なんだろう?」


「魔法灯にも使われる、魔法石の欠片ですな」


「魔法石……?」


「魔法石は、ワシらドワーフやエルフが、

遥か昔から大切に使ってきた、

生活に欠かせぬ鉱石の一つです」


ドウエンの声は、どこか誇らしげだった。


「かつては、シルヴァリス王国との国交により、

交易品として魔法石を輸出しておりました」


「……今は、していないのか?」


「ええ」


ドウエンは歩みを止めず、淡々と続ける。


「かつて、エルフと人間の大きな戦がありましたな。

その折、グラムディル国王は、

シルヴァリスとの積極的な交易を止めたのです」


「圧力は……なかったのか?」


「武器の素材としての鉄鉱石――

それだけは、最低限の協力として供給を続けたようですな」


ドウエンの声が、わずかに低くなる。


「ですが、国王はあの戦に加担したくなかった。

だからこそ――」


一瞬の間。


「強力な魔法具まほうぐを生み出す源になりかねぬ魔法石の輸出を止めた。

“エルフの弓”という“恐ろしい兵器”を、

これ以上量産させぬために……」


その言葉に、俺は無意識に背中へ手を伸ばしていた。


月光の弓。


確かな力と、同時に背負う重さ。


「ショータさん」


ドウエンが、ちらりと俺を見る。


「あなたが背負うその弓――

それほどの力を持つ兵器であることを、

決して忘れぬことです」


「…………」


「マルダが作ったあの弓が……

シルヴァリスと、グラムディルの溝を

深めていたのか……」


俺の呟きは、

淡く光る隧道の奥へと、静かに吸い込まれていった。


「ところで、ドウエン…

もう随分歩いてきたが…

この隧道はどこまで続くんだ?

地上にはいつ出られる?」


ライラが尋ねた。


「ライラさん。

グラムディルを知らないというのは本当のようですな。」


「どう言う意味だ?」


「お二人は、もうすでにグラムディルに入っておりますからな。

この隧道、緩やかにどんどん地下に潜っているのだが…

気づかなかったかな?」


「もしかして、グラムディルは地下国家なのか⁈」


「その通り! 

ほれ! 見えますぞ!

ここが、鉱山都市国家グラムディルです!」


俺たちの目の前が突然大きく開けた。

そこには地底とは思えないきらめいた世界が広がっていた。


「これは⁈

魔法灯の灯りなのか……?

それにしては、明るすぎる!」


「魔法石の質と量が違うのでな。

グラムディルは、雷雲に囲まれた薄暗い地上より明るい地下都市なんですよ。」


「す、すごすぎる! これは、とんでもない国だぞ!」


想像を超えた地下空間を前に、

俺とライラはただ言葉を失い、

高鳴る鼓動だけが耳に残っていた。

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