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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十五章
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第四話 開かれた門

「ライラ……やはり、関所だ」


俺は密林の先に現れた光景を見据え、無意識に一度だけ息を整えた。

岩山を貫くように掘り抜かれた巨大な隧道すいどう

その入口を塞ぐように、異様な存在感を放つ関所が築かれている。


「岩山を掘り抜いた……トンネルか。

先に繋がる道は、あそこだけだな」


切り立った岩肌と、長年の風雨に削られた石の門。

自然と人工がせめぎ合うような圧迫感が、胸に重くのしかかる。


「行こう……ライラ」


「はい。

行こう、ショータ殿!」


彼女は即答だった。

その声には迷いがなく、俺の隣に立つ覚悟がはっきりとにじんでいる。



密林を抜けた途端、空気が変わった。

湿った土と苔の匂いに混じり、鉄と石の匂いが鼻を刺す。


関所は、巨大な石柱を組み上げた門と、

その脇に設けられた小さな石砦によって守られていた。


関守せきもりは……二人か」


俺たちは、警戒を解かぬまま、ゆっくりと歩を進める。


やがて、門の影から姿を現したのは――

背は低いが、岩のように鍛え上げられた男たちだった。


赤褐色せっかっしょくの肌。

太く長いひげ

手に握られた、年季の入った斧。


一目で分かる。

この者たちは――この岩山と共に生きてきた。


「そこの者――止まれえい!」


低く、腹の底から響く声が、森の静寂を震わせた。


二人の男が斧を構え、ゆっくりと間合いを詰めてくる。


「ここから先に、何の用だ?」


「グラムディルへ行きたい」


何用なにようでだ」


「国王に、謁見えっけんを願いに来た」


一瞬、男たちの視線が鋭さを増す。


「……名は」


「ショータだ。

魔王をたおした者だ」


男の眉が、わずかに動いた。


「魔王……?

復活したと言う、シルヴァリス王のことか……?」


「そうだ。

だが、世界の混沌こんとんは終わっていない」


俺は一歩、前に出る。


「この世界の“本当の敵”が現れた。

その話を、グラムディル国王に伝えに来た」


「……本当の、敵だと?」


俺はふところから、慎重に親書しんしょを取り出した。


「これを……」


男の目が、見開かれる。


「――こ、これは……

エルフィリア女王の、蝋封印ろうふういん……?」


じっと見つめ、首をかしげる。


「……いや、少し違うか……?」


「第三国家バース。

聞いたことはあるか?」


「……うむ」


男は深く頷いた。


「その新興国の名は、すでにグラムディルにも届いておる。

そうか……今のエルフィリア女王は、

その国の女王であったか」


「その親書は、

バース国女王エルフィリア様から、

グラムディル国王に宛てられたものだ」


「俺は、それを必ず届けねばならない」


二人の関守は顔を見合わせ、短く言葉を交わす。


「……うむ。

どうやら、偽りではあるまい」


「良かろう」


斧が下ろされる。


「グラムディルまでの案内人を用意する。

しばし――あの隧道の前の小屋で待っておれ」


「ありがとう。感謝する」


俺は、深く頭を下げた。



「……確認だが」


関守の一人が、ライラへと視線を向ける。


「連れの女。

お前は何者だ?」


「グラムディルは、初めてか?」


ライラは一歩前に出て、迷いなく名乗った。


「私は、あかつきイズファルが娘――戦士ライラ」


関守の目が、僅かに見開かれる。


「今は、バース国の近衛このえ隊長。

そして――」


彼女は、俺を一瞥いちべつし、静かに続けた。


「勇者ショータ殿の、護衛だ」


「グラムディルは初めてだ。

どんな国かも……恥ずかしながら、よく知らない」


一瞬の沈黙。


そして――


「……暁の環、イズファル……」


男は、噛みしめるようにその名を口にした。


「そうか……なるほどな……」


「国王も、お喜びになるであろう」


「……?」


俺は眉をひそめる。


「どういう意味だ?」


関守は、意味深に笑った。


「会えば、分かる」


「ライラとやら――

お前がここへ来たのも、運命に導かれておるのだろう」


「……一体、何だと言うんだ」


「女よ。自分の目と耳で確かめるが良い」


男は門を指差す。


「準備をしてやる。

門をくぐり、小屋で待つが良い」


重厚な門が、ゆっくりと開かれた。


その向こうにあるのは――

まだ知らぬ国と、

避けられぬ運命の続きをはらんだ道だった。

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