第二話 星牙への贈り物
果てしなく連なる超巨大山脈。
この山脈を越えた先に、謎に満ちたドワーフの国――
鉱山都市国家グラムディルがある。
『“世界を隔てる壁”か……。
まさに、その通りだな』
天に届きそうな切り立つ岩壁は、その向こうの世界を完全に遮断していた。
『ショータ……
これ以上、上昇するのは危険だ。
息が……苦しい……』
『星牙、無理をしなくていい!
この岩壁は、空から越えるものじゃない。
地上に降りながら、抜けられる場所を探そう!』
星牙は高度を落とし、岩山に沿って慎重に飛行を続ける。
『空の上では感じなかったが……
この辺り、かなり暖かいな』
ライラの言葉に、俺も頷いた。
『ああ……確かに』
『ショータ! 見て!
岩山の麓だ!』
『あれは……関所か?
星牙、念のため距離を取ろう。
あの岩山の窪みに降りてくれ!』
『了解!』
星牙は関所と思われる施設から数キロ離れた、岩山の窪地に静かに降り立った。
『星牙。
ここまで本当によく頑張ってくれたな』
俺は星牙の首元に近づく。
『実はな……
お前に、プレゼントがある』
『え? プレゼント?』
『ハクに頼んで作ってもらった。
お前専用のチョーカーだ』
それは、魔王戦の際に仲間同士で使った連絡用の魔法具を改良したものだった。
ハクは、オウル専用魔法鏡の“心の声を音声化する技術”とチョーカーの仕組みを融合させ、
星牙の思念を音声として出力できる装置を完成させてくれた。
さらに――
魔法鏡とも接続できる仕様だという。
『本当に……これで、みんなと話せるの?』
『そのはずだ。
俺は念話で星牙と繋がれるが、長時間は精神力がもたない。
念のためにな』
『ほら。
逞しい首に、よく似合ってるぞ』
『……ほんとだ。
なんだか、誇らしいな』
ライラが星牙の背から荷台を外し、優しく背を叩いた。
『しばらくここで休め。
長旅の疲れを、しっかり癒すんだ』
『ライラ、チョーカーを着けてみてくれ』
俺とライラも、それぞれ首にチョーカーを装着する。
『星牙、精神の繋がりを切る。
チョーカーで話せるか、試そう』
俺は意識を切り替え、星牙との直接の念話を断った。
指先でチョーカーに触れ、星牙を思い浮かべる。
「……星牙、聞こえるか?」
星牙の身体が、ぴくりと反応した。
『き、聞こえる……!
はっきり聞こえるよ!
僕の声は、ショータに届いてる?』
「届いてる。ばっちりだ。
ライラも話してみろ」
「星牙。私の声はどうだ?」
『聞こえる!
すごい……本当に、話せてる!』
「星牙。
しばらく一人になるが、そのチョーカーがあれば、俺たちとも仲間とも繋がれる」
『……ありがとう。
みんなと話せるなんて……夢みたいだ』
「まずはハクや、リオンに礼を言うといい。
きっと喜ぶぞ」
『うん……!
話したい人を思い浮かべればいいんだね』
星牙の声は、はっきりと弾んでいた。
「星牙。
今から俺たちはグラムディルへ向かう。
何かあったら、すぐ連絡してくれ」
『うん。
気をつけて、ショータ。
ライラさん……ショータを、よろしくね』
「任せておけ!
行ってくるぞ、星牙!」
こうして俺とライラは星牙と別れ、
鉱山都市国家グラムディルへと続く関所を目指し、歩き出した。




