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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十四章
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第九話 世界を知る旅へ

王城メサイア。

ターナの湖畔に立つその姿は、ハクとメーガンの改修によって荘厳そうごんたたずまいに変化していた。


謁見えっけんの間。

白亜はくあの柱が立ち並ぶ空間は、いつもより静かだった。

高窓から差し込む柔らかな光が、紅い絨毯じゅうたんの敷かれた床に長い影を落とし、その中心に俺は立っている。


ここを離れる――

その事実が、今になって胸の奥に重みとして沈んでいた。


「ショータ。分かりました」


玉座に座るエルフィリアが、ゆっくりと頷く。

その声音はいつくしみに満ちていて、同時に女王としての覚悟も帯びていた。


「あなたがそれを望むのなら、私は止めません。

むしろ――あなたが救おうとするこの世界を、あなた自身の目で知るための良い機会でしょう」


俺は片膝をつき、深く頭を下げた。


「ありがとうございます。エルフィリア様」


背後で衣擦きぬずれの音がする。

ノブナが一歩前に出て、重厚な声で言った。


「ショータ殿。

我らは、我らに出来ることをします。

あなたには、あなたにしか出来ぬ役目があるはずだ」


その言葉は、命令ではなく信頼だった。


「いずれ来る神との戦いまでに――

強くなって戻られるのを、我らは待っています」


胸の奥が、静かに熱を帯びる。


「ああ……ありがとう、ノブナ」


エルフィリア様は少し表情を和らげ、問いかけてきた。


「ショータ。同行はライラだけで良いのですか?

リオンもいた方が、安心ではありませんか?」


その瞬間、場の空気がわずかに揺れた。


「じ、女王陛下!」

慌てたようにリオンが声を上げる。


「ぼ……オ、オイラは行かないよ。

ばっちゃん……いや、もう、ばっちゃんじゃないな……」


言い直しながら頭をく。


「マルダに止められてるんだ。

この旅は、二人に任せろってな」


エルフィリア様は小さく目を伏せ、頷いた。


「そうですか……。

マルダがそう言うのなら、きっと未来へ繋がる何かがあるのでしょう」


そして、真っ直ぐに俺たちを見る。


「ショータ、ライラ。気をつけて行きなさい」


ノブナも腕を組み、続けた。


「シルヴァリスにも、サンサーラにも頼りになる仲間がいる。

旅に出ることは皆に伝えておく。

何かあれば、遠慮なく力を借りるといい」


「ありがとう」


短い言葉に、今の俺の精一杯を込めた。


「それで?」


ノブナが口角をわずかに上げる。


「まずは、どこを目指すのだ?」


俺は一瞬だけ目を閉じる。

マルダの言葉が、胸の奥で蘇る。


――これから先は、あなたが感じるままに進みなさい。


「マルダは、もう未来をることは出来ないそうだ。

ただ……感じるままに進めと言われた」


「感じるままに、か」

ノブナは小さく笑った。


エルフィリア様が問いを重ねる。


「では、最初の目的地は?」


俺は顔を上げ、はっきりと言った。


「鉱山都市国家――グラムディルです」


「グラムディル……!」


リオンが目を見開く。


「ドワーフの国か!」


「ああ。

俺はこの世界に来て、エルフと人間以外の種族がいることを知らなかった。

だからこそ――この世界の先住種族であるドワーフを、ちゃんと知りたい」


エルフィリア様は思案するように頷いた。


「確かに……。ドワーフを詳しく知る者は少ない。

グラムディルはシルヴァリスの同盟国ですが、国家間の交流はほとんどありません。

かつての大戦の折も、武具用の鉄鉱石の供給に留まったと聞いています」


彼女でさえ、内情は掴めていない。

それほど、閉ざされた国。


「人口は二千万人ほど。

シルヴァリス王国より遥か南に広がる険しい山岳地帯に根付く都市国家と聞く。」


ノブナが続ける。


「この世界で、最も謎に包まれた国の一つだな。

……我も、興味がある」


俺は拳を静かに握り締めた。


「神との戦いが始まれば……

グラムディルも、否応なく巻き込まれるかもしれない」


だからこそ。


「俺は、グラムディルの国王に直接会いに行く。

神の存在を、俺自身の言葉で伝えるつもりだ」


誰も知らないまま、奪われる世界にはしたくない。


エルフィリア様はしばらく黙し、やがて微笑んだ。


「グラムディルの国王はご高齢ですが、聡明なお方と聞いています。

私が親書を用意しましょう」


「それを持っていけば、謁見も叶うはずです」


「……ありがとうございます、エルフィリア様」


謁見の間に、再び静寂が満ちる。

だがその沈黙は、迷いではなく――旅立ち前の覚悟の重さだった。


俺は、もううつむかない。

この世界を知り、守るために、前へ進む。

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