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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十四章
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第三話 暇つぶしの銀河

『……宇宙……?

ここは……どこなの?』


リアナの問いは、声というよりも思念に近かった。

返事は、即座に――しかし、あまりにも静かに返ってくる。


『この闇は、お前たちが地上から眺める空の、その先に広がっている』


『空の……先……?』


言葉にした瞬間、足場のない感覚が強まる。

上下も、距離も、方向すら存在しない。


『そうだ……

私は闇に生まれ、ただ闇の中を漂っていた』


黄金の人型は、どこか懐かしむようでもあり、

同時に、何一つ執着していない声音で続ける。


『どれほどの時間が流れたのか……覚えてもいない。

時間という概念すら、当時の私には無かった』


『生まれた目的も、意味も、思考すらなく……

ただ、在るだけの存在だった』


『闇の中の“虚無きょむ”――それが、かつての私だ』


『……虚無……

そんな存在が……』


リアナの声が、わずかにかすれる。


『生命では無い』


即座に否定が落ちる。


『私は精神体。

お前たちの言葉を借りるなら、“魂”というエネルギーの集合体に近い』


『宇宙と呼ばれる闇の中に遍在するエネルギー。

その集合体……』


『つまり――

宇宙の魂が、私だ』


『宇宙の……魂……』


理解が追いつかず、思考がきしむ。


『もう……何が何だか、分からないわ……』


『当然だ』


黄金の人型は、淡々と告げる。


『理解できぬように出来ている』


そして――

ゆっくりと、その腕が闇を指し示した。


『これを、見てみろ』


次の瞬間。


漆黒だった闇の中に、

ぱっと、火花のような光が生まれた。


一つ、また一つ。

やがてそれは、無数の輝きとなって広がっていく。


『……これは……?

星……?』


『その通りだ』


『闇の中に、突如として無数の星々が生まれた』


『その時、私は――

初めて出会ったのだ』


『私と、同じエネルギー体に』


『あなたと……同じ……?』


驚愕が、思考を揺らす。


『私が見た星々を生み出した存在。

それが、私と同質のエネルギー体だった』


『私は、そこから初めて“知恵”を得た』


『そして――

この闇における、我らの存在理由を』


『存在……理由……?』


『我らは、この果てしない宇宙の闇に…

人間たちが“銀河”と呼ぶ、星の集まりを形成するために生まれた』


『――“銀河とは何か?”

今、そう考えたな』


見透かされたような言葉。


『銀河は、我らエネルギー体が管轄する領域』


『我らをこの宇宙に生み出した“何者か”のために何かを成し遂げる場所だ』


『つまり――

もし、お前たちの言う“神”が本当に存在するのだとすれば』


『それは、宇宙と、私を創り出した存在であろう』


『……あなたたちを、生み出した存在が……?』


『ふふ……、そういうことだ』


初めて、かすかな笑みが混じる。


『私より上の存在がいるということだ』


『……だが、私はそれを考えるのを…

遥か昔に止めた』


『なぜ……?』


『考えても、意味のないことがある』


『私はこの宇宙に生まれ、銀河を創造した』


『だが、それが“何のため”なのか…

今も、分からない』


『だから――

考えるのを、止めた』


『……あなた自身は、

この銀河で、何を成し遂げたいの?』


一瞬の間。


『その答えが……

“暇つぶし”だ』


あまりにも軽く、あまりにも残酷な言葉。


『私は、この“あまがわ銀河”の創造主であることは間違いない』


『お前たちが、私を“神”と呼ぶのも理解できる』


『だが……そもそも、お前たちは何なのか』


『それを、教えてやろう』


景色が、反転する。


闇が渦を巻き、

その中心で、新たな銀河が形を成し始めた。


『今から、およそ百三十億年前……』


『私は、銀河創造を開始した』


『だが、出来ることは…

ただ闇雲に、膨張させることだけ』


『本当につまらなかった』


『何のために、こんなことをしているのか……』


『虚無の中を漂っていた頃の方が、

まだ、マシだったとさえ思った』


『……だが』


『九〇億年ほど経った頃だ』


『偶然、実に面白い星が誕生した』


『お前たちが――“地球”と呼ぶ星だ』


『……地球……』


リアナの胸が、微かに痛む。


『ショータの……前世の世界……』


『この星が生まれたことで…

私の退屈は、ようやく薄れ始めた』


『生命の営みが、実に愉快だったからな』


『人間が支配する以前にも、

様々な生物が、この星の覇者となった』


『私は、生物に渦巻く本能と欲望に強く惹かれた』


『彼らは、種を残すために生き、短い一生を終える』


『それが、実に面白かった』


『だから私は生存本能を刺激し、“進化”という力を与えた』


『競争し、生き残った種はより強く、より賢くなっていった』


『だが……それは、あくまで自然の延長に過ぎなかった』


『私は、もっと刺激が欲しくなった』


『そこで――最も欲深い生き物を選び、知恵を与えた』


『それが……人間だ』


『人間は、本当に面白い』


『他種族だけでなく同族同士でも、平然と争う』


『戦争』


『もはや地球は人間の欲にまみれ、取り返しのつかぬ所まで来ている』


『それでも――人間たちは、まだ気づいていない』


『私の破壊の力と同等の兵器を…

自ら生み出しているということに』


『やがては……自分たちの手で、星ごと壊すだろう』


『だが、それでは困る』


『地球が滅びれば、

私の“暇つぶし”が無くなってしまうからな』


『だから私は――地球に似た星を創造した』


『それが……

 このエルフの星だ』


『……地球に似せて……』


『だが、失敗だった』


『エルフという種族は

 あまりにも、つまらなかった』


『平和と愛に包まれた、穏やかな世界』


『刺激の欠片もない』


『人間と同じく、知恵を与えたというのに……だ』


『だから、私は考えた』


『地球が滅びる前に

 この星を――変えてやろう、と』


『欲に塗れた人間を転生させ

 この世界に、火種を落とす』


『それこそが――

 最良の“暇つぶし”だとな』

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