第三話 雷槍に託す
ターナの市街地は、
逃げ惑う人々の悲鳴と、闘いの轟音に満ちていた。
街は炎に包まれ、建物は次々と崩れ落ちる。
人を運んだ経験のない天竜使いたちは、急遽、資材用の籠を天竜に吊るし、必死に避難を進めていた。
「マルコさん!
ランドルフ様は……大丈夫でしょうか⁈」
ハイランダーの一人が、焦りを滲ませて問いかける。
「信じるしかないよ」
マルコは歯を食いしばり、空を見上げた。
「あの場所に僕らがいても、邪魔になるだけだ。
竜硝石の攻撃なんて、通じる敵じゃない」
彼は声を張り上げる。
「とにかく!
一人でも多く、避難所に運ぶぞ!」
――――
「ランドルフーーーー!」
レキルの叫びが、戦場に響いた。
「駄目だ!
翼をやられた!」
ランドルフの天竜“イグサリオ”は、
“小さき魔王”の地上からの炎弾を翼に受け、激しく体勢を崩す。
「イグサリオ……すまない!」
天竜は呻くように鳴き、
バランスを失いながら地上へと降下していく。
「くそっ……
何も出来ぬまま、終わってたまるか!」
ランドルフは歯を食いしばった。
「せめて……一太刀!」
彼は手綱を離し、鞍の上に立つ。
「小さき魔王よ!
貴様の頭が、よく見えるわ!」
両手に構えた大槍が、雷を帯びて激しく放電する。
「喰らえ!
我が――渾身の一撃を!」
ランドルフは、イグサリオから跳躍した。
「だああああああああーーーーーーーー!」
叫びとともに、
彼はレキルと対峙していた小さき魔王の頭上へ――
大槍を、叩き込んだ。
「ギィヤアアアアアアアアアーーーー!」
小さき魔王の凄まじい咆哮。
小さき魔王は、頭上のランドルフへ炎弾を放つ。
「あとは……頼んだぞ!
レキルーーーー!」
次の瞬間、
ランドルフの身体は爆炎に包まれた。
「ランドルフーーーーー!」
「《雷蛇縛》!」
レキルの全身に雷が走り、
蛇のように小さき魔王を締め上げる。
「ギアアアアアアアアア!」
悲鳴が、大気を震わせた。
「ランドルフが脳天に突き立てた槍……
それが、私の雷蛇が降り立つ場所だーー!」
レキルの金色の瞳が、憤怒に燃える。
「《天蛇ノ雷》ッ!」
天を裂く雷。
黄金の大蛇が、大槍を一直線に貫いた。
轟音と閃光――
小さき魔王の身体は、黒く焼き焦げる。
「ギィヤアアアアアーーーーー!」
「……見つけたぞ」
レキルは、焦げゆく魔人の内側に宿る赤い玉を掴む。
「お前の――悪魔の魂核だ」
握り潰す。
「終わりだーーーー!」
――パキィン。
乾いた音とともに、
小さき魔王は、風に溶けるように消え去った。
「はぁ……はぁ……」
レキルは膝をつく。
「ランドルフ……
見事な、最後だった」
震える脚で、再び立ち上がる。
「私も……
お前のように、最後まで戦うぞ……」
レキルは、ランドルフが愛した空に誓った。




