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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十二章
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第十ニ話 最後の光

ほこらの中で、マルダは小刻みに震えていた。


「魔王とは……

悪魔との契約で蘇ったシルヴァリスでは、なかった……」


震える指先を、強く握り締める。


「まさか……

私がリオレウスに伝えた“蘇りの秘術”が……

“悪魔の魂”そのものを、この世に呼び出すものだったとは……」


唇を噛み、視線を落とす。


「私は……読み違えていた。

魔王とは……悪魔。

そして、真の元凶は……」


一瞬、言葉が詰まる。


「……やはり……

私を、ずっと監視している彼……」


静かな絶望が、祠を満たした。


「私は、はじめから……

この世界に混沌こんとんをもたらす存在……

これは、逃れられない運命……」


その声は、祈りにも似ていた。


「ごめんなさい……リアナ。

ごめんなさい……リオン。

そして……ショータ……ごめんなさい」


「あなたにとって、耐え難い未来の選択を……

させてしまうことに……」


深く息を吸い――

マルダは、顔を上げた。


「でも……

これが、私たちの“最後の光”」


「全ての元凶にあらがうための……

最後の、仕上げなの……」


「頼みます……ショータ。

この世界の未来は……

あなたに、かかっているの」



『リアナ様ーーーーーーー!』


魔法鏡越しに響いた、ツムリの絶叫。


「リアナ……!

まさか……!

やめてくれ……!」


胸の奥が、冷たくなる。


マルダの水晶で見た――

最悪の未来が、脳裏のうりをよぎった。


「ムシャカ!

あの魔蝕人ましょくじんはどこだ!

今すぐ、“メサイア”に飛ばしてくれ!」


「ショータ!

魔蝕人が隔離されている場所は、ここから少し離れている!

今すぐには、飛べない!」


「くそっ……!

リアナ! リアナ! リアナ!」


「俺は……今すぐ……

行かなきゃ、ならない!」


「ショータ!

また体が……!

白く、発光を……!」


ムシャカの声が、遠く聞こえた。



視界が、揺らいだ。


ほんのわずかな揺れ。

それが収まった時――


俺は、メサイアの謁見えっけんの間に立っていた。


「ショータ殿!

今……どこから……!」


ノブナの叫び。


『ショータが、消えたぞ!』


魔法鏡から、ムシャカの声。


目の前には――

血を吐き、倒れているリアナ。


そのかたわらで、ツムリがアオダを抱き締めている。


(……まさか、アオダ……

間に、合わなかったのか……)


さらに、その近く。


異形の存在が――

鋭い爪についた血を、舐め取っていた。


「んんん?

お前……勇者か?

今、どこから現れた?」


魔王が、俺の行手をふさぐ。


「……邪魔だ」


右手を振り払う。


「――がああ!

お、お前……!」


発光したてのひらが触れた部分だけが、

魔王の肉体から、削り取られた。


「勇者……!

お前……何だ⁈

この、力は……!」


「……ま、まさか……⁈」


何かを悟ったのか、

魔王はメサイアの天井を突き破り――

空へと逃げた。


「ま、魔王が逃げたぞ!

ショータ殿!」


ノブナの叫び。


「ノブナ!

魔王を追い、地上に出ます!

メサイアごと、地上へ!」


「ショータさん!

あなたなら、魔王を斃せます!」


エルフィリアの声が、飛ぶ。


「メーガン!

聞こえたか⁈

メサイアを地上に出す!」


『聞こえました!

破損箇所はナノマシンで応急処置を開始!

五分後、変形の振動を開始します!

地上到着は、十五分後!』


「ランドルフ!

ノブナだ! 聞こえるか⁈

ターナ上空へ、魔王が逃げた!

ショータ殿が、深傷ふかでを負わせている!

逃すな! 我らも行く!」


『ランドルフだ!

武装天竜隊ハイランダー、マルコ!

聞こえたか! 警戒しろ!

私も出る!

ターナの民を、一斉に避難させろ!

急げーーー!』


「ランマル!

行くぞ!」


「はい!」


ノブナとランマルが、魔王を追って飛び立つ。


息の無いアオダを抱くツムリが、立ち上がった。

「ヒキガ様…。私…、行きます…」


ヒキガは小さく頷いた。


「止めても無駄だろ? ツムリ…。

俺も必ず合流する」


「ショータさん……

私……リアナ様を守れず……

ごめんなさい……」


震える小さな身体。


「アオダ様も……死んでしまった……

シュテン様も……」


「私が……

あのクソッタレの魔王を……

ぶっ殺してやる!」


ツムリは、ノブナの後を追い、空へ飛んだ。


俺は、リアナの元へ膝をつく。


「リアナ……

すまない……遅くなって……」


呼吸は、薄い。

虫の息だった。


鋭い爪で、脇腹を深くえぐられている。


「……シ、ショータ……?

き……きてくれた……の……?」


「ごめんなさい……

私……」


かすれた声。


「リアナ。

もう、話さなくていい」


「リオンが……

俺にも少しは“治癒ちゆの力”があるって言ってた」


「俺が……

俺が、必ず……助けてやる」


抱き締める。


「ショータ……ありがとう……

あなたに、抱かれていると……

……暖かい……」


「だ、駄目だ……

リアナ……死なないで……」


「……わ、私……

アオダさん……助けてあげられなかった……」


「魔王の……毒が……

私の力では……」


「……魔王の毒……⁈」


「私の中にも……

毒が、回ってる……」


「でも……

こうなることは……覚悟の、上……」


リアナは――

静かに、意識を失った。


「駄目だ!

諦めるな!

絶対に、助けてやるから!」


その時。


光のドームが展開され――

ムシャカと、リオンが現れた。


「ショータ!

リアナ様は⁈」


「リオン!

ここだ!

まだ、生きている!

助けてくれ!

魔王の毒が、回っている!」


「オイラが……

いや……僕が、必ず治してみせる!」


「母さんを!」


「母さんだと⁈

お前……リアナの息子なのか⁈

長老会に処刑されたはずでは…⁈」


ムシャカの声が、震えた。


「今は、そんな話をしてる場合じゃない!」


リオンはリアナの脇腹に掌をかざす。


「《ジェードグリーンヒーリング》!」


柔らかな翠光がリアナを包み込む。


「リオン……

リアナを、頼んだ」


「俺は……

魔王を、追う」


意識を、ターナへ集中する。


「……駄目か……

さっきのように、瞬間移動は出来ない……」


「信じる力が……足りないのか……⁈」


「ムシャカ!

ターナに、瞬間移動出来るか!」


「駄目だ!

魔蝕人の記憶を探っているが……

ノブナも、ランマルも移動が早すぎて、繋げられない!」


メサイアが、変形を始める起動音。


天井の穴は、修復されつつあるが――

まだ、僅かに開いている。


「……ノブナも、ツムリも……

空を、飛んだ」


「なら……

俺も、飛べるはずだ!」


身体が発光する。


俺は、メサイアの小さな穴をすり抜け――

深い谷底から、一気に上昇した。


空へ。


そして――


目の前には、

すでに地獄のような光景が、広がっていた。

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