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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十二章
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第十話 変えられた未来

ムシャカが語った真実は、その場にいたバースの要人ようじんたちの胸に、深く刻み込まれた。

そして何より――

最も大きな感情の波に襲われたはずの女王エルフィリアが、なお毅然きぜんと立ち続けているその姿に、誰もが改めて深い敬意を抱いた。


やがて、エルフィリアが静かに口を開く。


「ムシャカ。この話は、ここまでにしましょう」


一拍置き、女王は真っ直ぐにムシャカを見据えた。


「ここからは……

あなたが見た――

勇者と、魔王の最後について、聞かせてもらえますか?」


ムシャカは、ゆっくりと顔を上げた。


「ああ……。

あたいが見た、勇者と魔王の戦いだ。

お前たちに、しっかり話してやるよ……」


その語りは、まるでその場の光景が再び立ち上がるかのように、生々しく、戦いの全貌を描き出していった。


「私たちとショータ殿の通信が切れた時……

それが、まさにムシャカが語った“ショータ殿の覚醒かくせい”の瞬間だったというわけか」


ノブナが低く呟く。


「僕が作ったチョーカーは、簡単には壊れないはずなんだけど……。

ショータさんのは、もう使えないみたいだしね。

何らかの力が働いたのか……」


ハクはあごに手を当て、ぶつぶつと独り言をこぼしていた。

原因が気になって仕方がない様子だ。


「ショータ殿は、どこまで覚えているのだ?」


ライラが、静かに問いかける。


「俺は……

ムシャカとシルヴァリスが話し始めた、その時……」


俺は言葉を選びながら、記憶を辿った。


「腕の中で、命が消えかけていくオウルを……

ただ、助けたい一心いっしんだった。

とにかく、死なせたくない……」


「その気持ちが、星牙せいがと繋がるのを感じたんだ」


「それで……

星牙は、突然戦場へ飛んだのだな」


レキルが、静かに頷く。


「俺は……

ムシャカが語った“愛”を鼻で笑い、

ただこの世界を滅ぼすためだけに、殺戮さつりくと破壊に興じる……

目の前の男が、どうしても許せなかった」


思い出すだけで、全身に嫌な熱が走る。


「魔王シルヴァリス……

この世界に、存在してはいけないモノ……」


「俺の中には、

激しい嫌悪、怒り、憎悪……

負の感情が、ぐちゃぐちゃに絡み合っていた」


「なにより……

この世界の“愛”を否定したあの魔王が、許せなかった……」


拳を、強く握り締める。


「そして――

俺の中にはっきりと芽生えた、シルヴァリスへの殺意」


「……この世界から、消してやる」


「それが……

俺が覚えている、最後の瞬間だ」


ムシャカが、静かに続きを受け取った。


「ショータの体は白く発光し、明らかに普通じゃなかった。

そこへ、天竜てんりゅうが舞い降り……

あたいと、ふくろうの青年を担ぎ上げ、

ショータは天竜の背に乗った」


「そこから先は……

さっき話した通りだ」


「かつてサンサーラ軍を滅ぼした、

魔王の奥義おうぎすらしのぐほどの巨大な力で……

魔王は、討たれた」


ムシャカは、はっきりと言い切った。


「そうだ。

シルヴァリスは、天竜が吐いた巨大な白炎に飲み込まれ……

断末魔だんまつまの叫びとともに、消えた」


「――これが、全てだ」


話を聞き終えた者たちからは、しばらく言葉が出なかった。


「一つ、いいかな?」


ライレン治療室に繋がる魔法鏡から、リオンが手を挙げた。


「どうした? リオン」

レキルが促す。


「オウルのことなんだが……」


「何があった!」


「い、いや! 大丈夫だ!

オウルは完全に治癒ちゆできた!

いずれ目を覚ます。心配しないでくれ」


安堵あんどの空気が、わずかに広がる。


「オイラが言いたいのは……

戦場で、オウルを死なせなかった“治癒の力”についてだよ……」


「治癒の力だと?」

議場が、ざわめく。


「ここに運び込まれた時、ムシャカが言ったんだ。

よく分からないが、わずかに治癒の力を感じる、って」


「あたいは専門じゃねえ。

だから、感覚でしか言えなかった。

だが……戦場で見た青年の傷は深く、

どう見ても助かる状態じゃなかった」


「オイラはすぐに治療を始めたが……

ムシャカの言う通りだった」


「オウルには、微かな治癒の力が流れていた。

それは……

オイラの力とも、リアナ様の力とも違う、初めて感じる力だった」


「リオン! それって、もしかして⁈」


メサイアの魔法鏡から、リアナが声を上げる。


「おそらく……

いや、確実に、ショータの力だ」


「ショータ!

あなた……治癒の力が⁈」


「お、俺に……治癒の力が⁈」


「でも、不思議じゃないわ」


リアナは、静かに続けた。


「あなたの選択の力は、“信じる力”。

ショータがオウルを助けたいと願い続けた想いが、

治癒の力を生んだとしても……何の違和感もない」


「ショータ。お前は、本当にすごい奴だ。

そのうち、オイラやリアナ様の力も超えちまうんじゃねえか?」


「ショータ……

あなたは一体、どこまで……」


リアナが、呟く。


「ムシャカ。

戦いの全貌、よく分かりました」


エルフィリアが、議場を見渡す。


「この度の戦――

我らバースの勝利で、間違いありません」


そして、女王は宣言した。


「皆の者。

今、シルヴァリスは頭を失った!」


「この戦の勝利をもって――

バース国女王エルフィリアが、

シルヴァリス王国を統一する!」


議場は、沸き立った。

エルフィリアの一言が、この戦の幕を、確かに下ろしたのだ。


「……本当に、やり遂げたのか……」


「俺は……

あのまわしい未来を、変えられたのか……!」


勝利の実感が、今になってようやく、胸の奥から湧き上がってくるのを感じていた。

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