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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十二章
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第五話 策士の妙手

霧の湿原では、“どろの手”に捕らえられたシルヴァリス軍が、自由を奪われ、阿鼻叫喚あびきょうかんの地獄絵図と化していた。


「なかなか、面白い能力者がいるではないか…。

我が軍十万の兵たちの三分の二が、悲鳴を上げる間もなく…。

かなりやられてしまったのう…。」


シルヴァリスは“泥の手”に足を取られた地竜ちりゅうを捨て、地に降り立った。


「ふむう…。これは、なかなか。

湿地に足を取られ思うように前に進めぬか…。

なるほど、我らを足止めし一網打尽いちもうだじんにするための好立地。

我らをずっと…ここで、待っておったという訳だ。」


シルヴァリスは冷静に戦況を分析する。


その時、光のドームがシルヴァリス軍の中に現れ、ムシャカと魔蝕人ましょくじんが現れた。


「ムシャカ。 バースは攻め落としたのか?」

シルヴァリスが問う。


「シルヴァリス。

バース侵略は…失敗だよ。」


「何? 失敗だと?」


ムシャカはファルネウスの遺体を持つ蝕人を前に出す。


「ファルネウスがやられた。

バースには、白光の力を持つ天竜てんりゅうが控えていた。

最初の急襲の際も、天竜に魔蝕人を消されたが、その破壊力たるや、どんな魔蝕人でもかなわねえ。」


「百体も居ながら太刀打たちうち出来んのか?」


「金縛りの魔蝕人を最初にやられたのは、痛かったな。こっちにも白光の力を盾で跳ね返す魔蝕人はいるが…」


その時、ショータが放った《月光》がシルヴァリス軍を襲った。


シルヴァリス軍の前方に巨大な“白い光の盾”が現れた。


「あれが盾だ。」

ムシャカが指差す方に一体の魔蝕人が両手を広げている。その両手の前に出現した巨大な“白光の盾”は月光の矢を受け止め、辺りは純白の光に包まれた。


「ほう。なるほど。

あれを使えるのは、あの魔蝕人だけか?」


「そうだ。

あんな貴重な奴をバースで使うのは勿体もったいねえ。

あいつの力にも限りがある。

隙を突かれりゃ、天竜にいつかは消されてしまう。」


「それで、バースを諦めてわれの方に逃げ帰ってきたと言う訳だな…ムシャカ。」


「逃げ帰ったは心外しんがいだ。

戦略的撤退と言うやつさ。

ファルネウスを失った今、戦力を分散する意味もねえ。

シルヴァリス、あんたと一緒に戦った方があたいもやり甲斐がいが出るってもんさ。」


「ふん。好きにしろ。 その魔蝕人ども、使えるのであろうな?」


「当たり前だ。

あんたの大事な“弓の勇者”も邪魔だ。

後ろに下げて黙ってみときな、雑魚ざこどもはあたいが全部片付けてやるよ。」


ムシャカは前線へと動いた。


ーーーー


「俺の《月光》が…。き消された⁈

シルヴァリスか⁈」


わか! 湿地帯に新手の兵が――百人ほど!

突如出現!

こ、これは、魔蝕人か⁈」


「魔蝕人! さっきの光の盾は…、ムシャカが言っていた魔蝕人の能力か⁈ 」


「ムシャカ、大丈夫だよな…。

俺は…お前を信じるぞ。」


『ショータ、聞こえるか? ムシャカだ。』


「ムシャカ! 聞こえる!」


『シルヴァリスを信じさせるために、お前の白光の力をあと数回、盾で止める!

今すぐ、連続で矢を放て! 急げ!」


「《月光》ーー!!」

俺はシルヴァリス軍に向け、渾身の矢を立て続けに放った。


その先。

また、あの巨大な白い光の盾が出現する。

そして、真っ白な世界に包まれた。


「ショータ殿!

ムシャカのさく通りであれば、ここからは我らの出番!

一旦、ショータ殿はお下がりください!」


シュテンが叫び、アオダとともに前にでる。


「ミラ・ガンロの兵どもよ! 種子島たねがしま! 魔法弓まほうきゅう

全弾照射ーーーーー!」


霧と光で真っ白な世界の中、種子島の轟音が鳴り響き、激しい炎の点滅が繰り返す。

無数の雷矢の風切の音が天を裂き、稲妻をまといシルヴァリス軍へと飛翔していく。


その時、ミラ・ガンロ兵の中心に小さな光のドームが現れていた。


次の瞬間。

真っ白な世界を切り裂くように、この世の終わりのような咆哮が轟く。

土石龍、炎龍、水龍、雷龍が真空刃の竜巻を纏い現れた。


「な、何という迫力か…!」

「これが、魔蝕人の力…!」

シュテンとアオダは圧倒されていた。


四体の巨大龍が竜巻とともに天に昇り、再びバース軍めがけて堕ちてくる。


「ムシャカ! 信じていますよ!」

「ええい! 覚悟は決まった! 好きにせい!」


地面が深くえぐられる轟音と激しい揺れ。

真っ白な世界は、巻き上げられた土埃により、光を失い闇となった。


『勇者ショータ。

今だ。

あんたの仲間は大丈夫だ。

闇の中、感覚を研ぎ澄ませ。

“エルフの弓”は見えなくとも矢をれる。

ぶちかませ、今なら全てを吹き飛ばせる!』


「うぅおおおーーーーーーーーー!」

「《月光》ーーーーーーーーーーー!」


俺が放った月光は、今までと比較にならない巨大な三条の白光となり、一直線に闇を貫いた。


そして、

音も光も無い辺り一面の闇は、時が経つと少しずつ明るさを取り戻した。


俺は、戦場の霧の隙間に目を凝らした。

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