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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十二章
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第三話 雷光が明かす真実

雷の山城“ライレン”。

雲を突き抜けるほど高くそびえる山のいただきには暗雲が立ち込め、落雷の轟音が鳴り響いていた。

——まるで、この山そのものが戦を待ち構えているかのようだった。


オウルの報告によると、明朝、シルヴァリス軍が俺たちの主戦場“霧の湿原”に踏み入れるとのこと。

決戦を明日に控え、俺たちはライレンの本陣に集合していた。


「ショータ殿、バースのエルフィリア様は本当に大丈夫なのでしょうか?」

シュテンが心配そうに言った。


「メサイアはバースで待機中だ。

万が一の時は、メサイアごとターナの滝から上陸する算段さんだんだ。」

俺は答えた。


「メサイアには、ノブナとランマル、ヒキガとツムリが残ってくれている。

あの四人なら、蝕人しょくじん兵に負けはしない。

それに、あの四人でなければならない理由もある」

ライラが言った。


「しかし、この作戦を立てたムシャカという女は、本当に信じて良いのか?」

アオダが聞く。


「ムシャカは……

俺たちと同じ目的のもと、行動している。

“魔王を殺す”という目的だ。

俺は、心に忠誠を誓ったムシャカを――信じている。」


「ムシャカが言っていた。

蝕人兵によるバース急襲第二弾。

明日、必ずそれが来ると。

地上のシルヴァリス王との決戦と、合わせて来ると……」

ライラが言う。


「本来ならば、魔蝕人ましょくじんたおせる俺か星牙せいがが、バースに残るつもりだったが……

ムシャカは、その必要はないと言った」


「そこなんです。心配なのは……

ショータ殿も星牙もライレンに来てくれました。非常に心強い。

ですが、もしバースで魔蝕人が暴れたら、誰も斃せない……」


「ムシャカの作戦は、皆にも伝えた通りだ。

奴は、シルヴァリスの内側から戦略をかき乱すと言っていた。信じるしかない。

それに、奴の考えたこの作戦しか……

魔人と魔蝕人を、一網打尽いちもうだじんに出来る方法はないだろう」


「そうだな。

私も、この作戦を信じるしか策はないと思う。

何せ、上手くいけば……

蝕人を、全て人間に戻せる可能性があるのだからな」

レキルは言った。



ライレンの夜空に、星は見えない。

代わりに見えるのは、遥か上空を疾る稲妻だけだ。


「ショータ……、ついに明日だな……」


「ああ、リオン。

思えば、お前はいつも俺のそばにいてくれるな。

頼もしいよ」


「ショータ……。

オイラ……、今回ばかりは怖いんだよ……

ずっと……震えが、止まらないんだ……」


「弓の師匠の泣き言なんて、初めて聞いたな……

でも、そうだな。俺も怖くないなんて嘘だ。

……めちゃくちゃ怖いよ……」


「ショータ……」


「俺は、この世界に来た時、

前世で出来なかった“憧れの人生”を送りたい。

ただ、それだけを考えてた」


「森でリアナと暮らした幸せな時間は、

俺の心にぽっかりと開いた大穴を、少しずつ埋めてくれたんだ」


「オイラは、ばっちゃんに頼まれて、

リアナ様のことをずっと森から見守っていた。

リアナ様は、大切な旦那さんと息子を一度に亡くして、あの小屋で独りで暮らしてた。

あの頃のリアナ様は……、見ているのも辛かった」


「リオン……」


「でも、ショータと一緒に暮らし始めてからのリアナ様は、本当に幸せそうで……

オイラの心も、あったかくなったよ。ありがとうな、ショータ……

あれ……? なんでだろ……?

涙が止まらない……」


「……リオン。

一つ、聞いていいか……?

お前は、マルダの使い魔になる前、

どこにいたか覚えているか?」


「……」


「……悪い。何でもない。気にしないでくれ」


「……ショータ……

オイラ、バースでリアナ様と一緒に薬を作っていた時から、

何だか、おかしな夢ばかり見るんだ……」


「おかしな夢……?」


「リアナ様が、オイラのことを見て、

息子さんのことを思い出すって言うから……

あんな夢を見るようになったんだと思う……

オイラが、リアナ様の子供だった頃の夢……」


「……リオン!」


「へへへっ! 笑っちゃうよな!

オイラ、孤児だったから、お母さんってのを知らないはずなのに……

あの森じゃない、どこかの森の奥で、

リアナ様と、人間の父さんと、オイラ……

三人で暮らしている夢だ。

毎晩……毎晩……」


(エルフィリア様が言っていた。

マルダから頼まれて助け出したリオンは、恐怖のあまり記憶が曖昧だったかもしれないと。

……もし、ふたをされていた記憶が、今まさに戻り始めているのだとしたら。)


「だんだん、はっきりとした夢になってる。

オイラ……、どうかしちゃったのかな……」


リオンは胸に手をあて、苦しそうな表情を見せる。


「そんなこと…。あるはずがないのに…。

今では、リアナ様を見ると、

心臓がキュウってなるから、オイラ……

リアナ様を、避けてしまってる」


「…リオン。

エルフィリア様が俺に言ったことがある。

『再び混沌こんとんが訪れ、すべての元凶にあらがう者たちが現れる。正しい道を選べば、光は残る』と。

これは、過去、マルダがエルフィリア様に伝えた言葉らしい。」


「ばっちゃんが? エルフィリア様に?」


「そうだ。その“抗う者たち”とは誰だ?

エルフィリア様、俺、リアナ。

ノブナやランマル、ライラ。朧のみんなや、バルドラン。

シュテンさんを始めとする拠点都市の頭領たち。

ターナのマルコも。メサイアのメーガンも。

セリウスや、お前のことをいつも気にかけてくれるリーネだって。

…戦い、死んでしまった仲間たちも。

みんな、マルダが未来に見た抗う者だ。

そして、もちろん、リオン。

お前もその一人だ。」


「オイラが抗う者…?」


「そうだ。この混沌の全ての元凶に抗う者たちは、俺も含め、定められた宿命にも抗うんだ。

未来を変えるためにな…。

リオン…。

俺は今のお前には、真実を伝えなければならない気がする。

受け入れる勇気はあるか……リオン。」


「うん。ショータ…。

オイラは…

どんな真実も受け入れ、どんな宿命にも抗ってみせるよ。」


「リオン…。

お前は、リアナの息子だ。」


リオンの瞳が青く輝く。


「お前は、六年前の処刑の日。

マルダがエルフィリア様に頼み、

当時十二歳でお前と同い年だったセレスティアに助け出されたんだ。」


リオンは頭を抱え、悶絶もんぜつし始める。


「……う、うう…。

あ、頭が、い、痛い! 

ろ、牢屋ろうや…、セ、セレスティア…。

ぼ、僕は…。

……リオン!」


「リオン! 大丈夫か⁈」


「か、母さん…。う、うう…。

リアナ母さん…、

ぼ、僕は生きている…。」


「リオン…!」

俺は震えるリオンを抱きしめていた。

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