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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十二章
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第一話 魔王を殺す者

メサイアの寝室。

キングサイズのベッドに豪華な調度品ちょうどひん

とても元が移動型要塞とは思えない内装だ。


今やこのメサイアが第三国家バースの王城。

ここを襲われれば、バースの中枢は一気についえる。

だが同時に、メサイアの魔法結界は、この国で最も強固だ。


ここには、俺の大切な仲間がいる。

そして、俺が一番守りたい人、リアナがいる。


あと十日ほどで、シルヴァリス王との決戦が始まる。俺は、本当に魔王シルヴァリスを斃せるのだろうか。

弓の勇者や、角の蝕人しょくじん…。

奴らをたおせるのは、俺の白光の力だけ。


そんなことを考えていると、俺は夜も眠れない日々が続いていた。


「ショータ…。また、眠れないの?」

リアナの優しい声。


「リアナ…。起きていたのか?」


「うん。 ショータ、バースが襲われた日からもう二日…。一睡もしてないわ…。」


「ああ。 寝不足はマルダと会ってからずっとだ。あの日、この世界での使命を知らされてから…。あまり眠れなくなってしまった…。」


「ショータ…。 こっちへおいで…。」

リアナはベッドの上で腕を広げた。


俺は、吸い込まれるようにリアナの腕に引き寄せられた。


「…リアナ…。」


「ショータ。私があなたにしてあげられるのは、こんなことぐらい。」


「……十分だ。これでいいんだ……」

俺は身体中に暖かいものが流れるのを感じた。


「ずっと気を張っていたのね…。

あのスケベで頼りなかったショータが、今は勇者様よ。

……信じられないわ。」


なんだか恥ずかしくなった俺は、リアナの胸に顔を埋めた。


「うふふ。こうしてると、森の生活を思い出すわね。」


「リアナ…。俺…、リアナと…あの暮らしに戻りたい…。」

俺は突然、涙が溢れてきた。


「私もよ…、ショータ。 あの静かで穏やかな森の日々、私も忘れられない。

あなたとずっと一緒にいたい…。」


リアナは俺に優しく口付けた。


「愛しているわ。ショータ。私は永遠にあなたを…。」


「リアナ…。ずっと一緒にいよう。

こんな戦争、俺が必ず終わらせる。だから…、絶対に俺のそばからいなくならないで…。俺が必ず守るから…。」


俺は、抱きしめるリアナの細い身体がなんだか今にも消えてしまいそうで怖かった。


「ほら。マルダから買ったこの魔法の指輪。この指輪の蛇は“不滅の愛”を表すって言ってたわ。だから…きっと大丈夫。私とショータは運命で結ばれているの。」


「リアナ…。俺は、リアナを愛している。」


俺はリアナを抱き寄せ、口付けをした。

そして、時を忘れ、俺たちは疲れ果てるまで抱き合った。


ーーーー


翌朝。


メサイアに緊急警報が鳴り響いた。


「なんだ⁈ 一体、何が?」

俺はベッドから飛び起きた。


「ショータ…。もしかして、また蝕人達が…?」

リアナも不安そうな顔で目を覚ました。


「俺は様子を見に行ってくる。」

急いで服を着て、“月光の弓”を背負う。


「ショータ…。待って…。」

リアナは俺を抱きしめキスをした。


「勇者が強くなる“おまじない”よ…。」


「ああ。行ってくる。」


ーーーー


謁見えっけんの間には、エルフィリアをはじめ、ノブナ、ヒキガ、ライラ、ツムリがすでにいた。


「何があった?」

俺は尋ねた。


「ショータ殿。奴が現れた。ムシャカだ。」

ノブナが答える。


「ムシャカ! やはり来たか!」


「しかし、様子がおかしいのだ…。

角の蝕人一体と、ムシャカ…。それ以外には誰もいない。それに、何か叫んでいる。」


「何だと? 一体何を考えているんだ?」


「ノブナ様。

ムシャカと繋ぐ魔法鏡の準備が出来ました!」

メーガンの声。


「よし。繋げ。」


バース入口前に現れたムシャカに、メサイアから触手が伸び、その先の魔法鏡が語りかける。


「何しにここへ来た。ムシャカ。

お前とたった一体の蝕人で何を考えている?」

ノブナが魔法鏡を通して語りかける。


「おお! なんだ⁈この鏡は? これで会話が出来るのか⁈ おもしろいな!」


「さっさと用件を言え。さもなくば、お前の頭上にはすでに天竜てんりゅうが狙いを定めているぞ。」


俺は星牙せいがとまだ繋がっていなかったが、流石ノブナだ。敵を前にしても、常に二手三手先を読む。


「まあ、そう慌てるな! あたいは、また遊びに来るって言ったろ? だから、遊びに来てやったんだ!」


「遊びにだと?」


「ああ! そうだ! さっきからずっと叫んでたんだが聞こえなかったか?

エルフィリア女王に会わせろ! 話したいことがある!」


「女王陛下に会わせろだと⁈

会わせる訳がなかろう!

お前は女王派に反旗をひるがえした長老会派の幹部だ!

寝言は寝てから言うんだな。」


「んん? 第三国バースはエルフィリア女王の国だよなぁ? どんな人種もどんな派閥も受け入れてくれるんじゃあないのかーー⁈

こっちは丸腰。完全な無抵抗者だぞーー!」


「ノブナ…。代わりなさい。私が…。」


「しかし…、エルフィリアさ…」

ノブナの言葉をさえぎり、エルフィリアは話し始める。


「ムシャカ。

私はあなたを良く知りません。

しかし、かつてシルヴァリスを救った英雄“弓の勇者”の一人。

それも、最強の勇者であったと聞きました。

だけど、あなたは長老会派の幹部でもある。あなたに戦闘の意思がないことをどのように信じれば良いのでしょう?」


「ああん? そんなもの…、直感で感じろよ。

まあ、あんまり面倒くせーーこと言うならよ、あたいも別にいいんだけどよ。

ただ、あたいのやるべきことと、あんたたちがやろうとしてることが重なってんのさ。」


「どう言うことですか?」


「だーかーらー。それを話してやるためにわざわざ来てやったんだっつーーの! さっさとしろよ、面倒くせーーなっ!」


「ムシャカ。 二分待て。」

ノブナは言い、魔法鏡を切った。


「エルフィリア様! あんな奴の言うことを信じる訳はありますまいな⁈」

ノブナはエルフィリアを見て言った。


「ノブナ。ムシャカをここへ。」


「な! あんな得体の知れない女をメサイアの中に入れるのですか⁈」


「はい。ショータ殿。もしもの時は、躊躇ちゅうちょなくお願いしますね。」


「ああ…。任せてください。」


「あの蝕人も金縛りの術を使うかもしれん。

それに、もしかしたら、メサイアの中に蝕人を一斉に呼び込む罠かもしれぬ…。

…念のため、ショータ殿は目の触れない所に隠れて見守ってくれ。」

ノブナは言い、続ける。


「我は全く信用しておりません。

女王陛下、くれぐれもお気をつけてください。

ヒキガ、お前は透明化し、悟られぬよう女王陛下の護りについてくれ。」


「うむ。分かった…。」


ノブナは再び魔法鏡をムシャカに繋いだ。


「ムシャカ…。エルフィリア女王に会わせる。迎えを出す、そこで待て。」


「ツムリ、聞いていたか? 奴らをこの謁見の間に連れてきてくれ。」


「はい。連れてきます。」


ーーーー


謁見の間にひりついた空気が漂う。

その筈だ。

今、バースの中枢と言える場所に敵の幹部が入り込んだのだから。それも、角の蝕人を連れて。


「あたいは、とにかく面倒くさいのが嫌いだ。

簡潔に言うぞ。」


ムシャカはその冷たい空気を切り裂くように口を開いた。


「あたいのやるべきこと。

それは―――」


「魔王シルヴァリスを殺すことだ」


空気がさらにひりついた。

一体、何が起こっているか、その場にいた皆、分からなかった。

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