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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十一章
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第九話 守護の臨界点

蝕人しょくじん兵を止め続けるランマルの気力は、すでに限界を超えていた。


「兵長…。あ、あと…どれくらいだ…。」


「ランマル様! あと十分! もう少しです!」


(くっ……僕は、まだやれる!

ここで諦めたら……

この蝕人たちを助けるために、《黒球こっきゅう》を使わなかった意味がなくなる……)


「…こ、これ以上…。罪のない、人間を殺したくない!」

ランマルの瞳がさらに蒼く輝き、揺らぎの波動が再び疾る。


ーーーー


「よしよし。マルヴァリウスよ、それで良い。そうだ。その位置だ…。」


ファルネウスが見下ろす先。

バース入口を真っ直ぐに狙える位置へ、

長砲を縦に二本備えた車輪付きの砲台が姿を現した。


「衛兵、狙いはあの入口だ。

通路に詰まった蝕人ごと吹き飛ばして良い。

拾い物だが、丘一つ吹き飛ばす威力がある。

景気良く頼むぞ。」

マルヴァリウスが命じると、二人の衛兵が狙いを定める。


衛兵が覗く照準が入口に定まった瞬間…。

高速の物体が横切る。


「なんだ! 今のは⁈」

マルヴァリウスが叫ぶ。


数百メートル先、その物体は緩やかに速度を落とす。突如、その物体の屋根が吹き飛び三つの影が飛び出した。


「マルヴァリウス! さっさと砲を撃たぬかーーーー!」

高台からファルネウスの低く鋭い声が響く。


「衛兵! 撃てーーーー!!」


二本の長砲が火を噴き、轟音と爆風が谷底に吹き荒れた。

凄まじい土煙が魔法灯の光を遮り、谷底を闇に帰す。


「やったか…?」


ファルネウスは徐々に収まる土埃の隙間に目を凝らした。


「…あ、あいつは…。

…ノ、ノブナ!」

ファルネウスは小さく震え、拳を握りしめた。


「よお! ファルネウス。

デカい声で居場所を知らせてくれてありがとうよ。 すぐにそっちへ行くから大人しく待ってろ!」

ノブナは、ファルネウスを睨みつけ大きな声を放った。


「な、な、何が起こった! マルヴァリウス!

衛兵! 砲を撃てーーー!」

ファルネウスが叫ぶ。


「無駄だ。

砲撃は我の念波ねんぱで、消し飛ばした。それに……」


ノブナの手には、血も冷めきらぬマルヴァリウスの首があった。


そして衛兵の二人も、すでにノブナの剣に切り裂かれ、息絶えていた。


「マ、マルヴァリウスが…!

衛兵ども! ノブナだ! 奴を殺せ!

しょ、蝕人兵よ! 一斉にかかれーーー!」

ファルネウスの低い声が恐怖で裏返る。


「ふんっ…!この大砲…。

何かと思えば…、“我とコウシュ”の置き土産の“種子島”ではないか。」


ノブナは砲台から種子島を二丁、引き剥がす。


「おお! この感触!

今の小型種子島には無い重量感! 懐かしいわ!」


重く長い種子島を両手に持ち、肩に担いだ。


「入口は我が引き受けた!

ヒキガ、ツムリ! 中は頼んだぞ!」


ーーーー


ヒキガはみどりに揺らめく魂還薬こんかんやくを瓶から吸い出し針に変える。


「《氷針ひょうしん穿せん》!!」


極細の氷針が生まれ、空間に舞う。


「《疾風・波動円舞はどうえんぶ》!」


疾風の波動が氷針を捉え、蝕人の心臓を正確に貫いていく。神速の世界を走り回るツムリには、一瞬で狙いを付けることなど造作もなかった。


蝕人兵は次々と人間に戻っていく。


「ツムリ! この蝕人達! 皆、眠っているぞ! これはランマルの力だ! 術が解ける前に、急ぐぞ!」


「はい!」

ツムリは疾風となり速度を増した。


ーーーー


「こ、この感覚…術の負荷が軽くなっていく…! 間に合ってくれた…!」


ランマルは、ヒキガ達が蝕人を人間に戻していることを術の負荷から感じとった。


「兵長! 間も無くだ! 人間たちを回収する準備は出来ているか⁈」


「はい! こちらはいつでも!」


「ランマル! 大丈夫かーー⁈」

前方からヒキガの声が聞こえてくる。


「ヒキガさん! もう、限界が近い…!

い、急いで…ください!」


「《疾風・波動円舞はどうえんぶ》!」


ツムリの声が響く。


ランマルの目の前。

蝕人の身体が激しく跳ね、牙をむき、喉を裂くように息を吐く――が、声にはならない。

やがて、また、そのまま動かなくなった。


「ランマルさん! もう、大丈夫! ここにいる全ての蝕人に魂還薬を打ち込んだよ!」


「ツムリさん……ヒキガさん……。

……ありがとうございます……」


ランマルは意識を失った。


「ランマル様!」

兵長が駆け寄る。


「お前たちの長は、立派だな。」

ヒキガが兵長の肩を叩く。


「はい! 素晴らしい方です!ランマル様は!」

兵長は答えた。


数名の兵たちが担架たんかにランマルを乗せ、バースの奥へと消えた。


目の前の蝕人の爪や歯がボロボロと崩れ落ちる。


「再生が始まった。

ここから人間に戻るまで、あと数分は掛かる。

しかし、入口付近の蝕人はすでに人間に戻っているだろう。」

ヒキガが言った。


「直ちに、救出に向かいます!

それが、ランマル様の願いでしたから!」


兵長はヒキガとツムリに敬礼し、兵を引き連れ入口に向かった。


「さて、ツムリ。

俺たちはノブナの所へ戻るぞ!

ファルネウスの声が聞こえたからな。ノブナはここで奴を仕留めるつもりだろう。

援護に行くぞ。」


ツムリは無言で頷き、

二人は再び、決着の迫るバースの入口へと戻って行った。

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