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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十一章
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第七話 数の恐怖

「……まさか、本当に存在していたとはな」


ファルネウスは低く呟いた。


深い谷底――

その岩壁を内側からえぐり抜いたかのように、巨大な都市が口を開けている。


「シルヴァリス王。あなたの読みは、やはり正しかったようです…。

奴らはこの深い谷底から這い上がってきたようですぞ。」


眼前に広がるのは、地底に築かれた異様なまでの規模を誇る都市――バース。


「ファルネウス様。この中に、エルフィリアが?」


マルヴァリウスは地底都市の威圧に少し気圧されていた。


「さあな。……入ってみれば分かるだろう」


ファルネウスは薄く笑う。


「だが、この谷底から王都シルヴァリスまで繋がる道を築く国だ。 油断は禁物だぞ」


マルヴァリウスが頷く。


「恐らく、あの入口にも魔法結界が張られております。

いかがなさいますか、ファルネウス様」


「決まっている」


ファルネウスの視線が、背後にうごめく影の群れへと向けられた。


蝕人しょくじん兵だ。

“数”という力を、存分に思い知らせてやれ」


「承知しました」


低い号令が放たれる。


「第三国家バース。

貴様らの国など――数日のうちに滅び去る」


ファルネウスは腕を振り下ろした。


「行け! 我が蝕人兵どもよ!」


道を埋め尽くす蝕人兵が、うねりとなって一斉に突進する。


「ふはははは!

この者どもの爪は、固い岩盤すら掘り砕く!

もろい結界など、時間の問題よ!」


やがて――

結界は、無惨にも砕け散った。



バース内部に、警報が鳴り響く。


ランマルは広場へ続く通路で砲兵隊を指揮していた。


「構えろ! 距離を保て!」


バース砲兵隊は、“対蝕人用の種子島たねがしま”で応戦する。

弾丸には、蝕人専用の魂還薬こんかんやくが仕込まれている。


しかし――


「速い……!」


蝕人兵の動きは異様なほど俊敏で、弾は思うように心臓を捉えられない。


「くそっ!

やはり、心臓以外では人間に戻らんか!

狙いを定めろ! 焦るな!」


砲兵長の怒号がとぶ。


「ランマル様!

仮に人間へ戻しても……救出する前に、次の蝕人兵に踏み潰されています!」


目の前で繰り返される惨状に、ランマルの胸は締め付けられた。


――かつて、自分も、母も。

この姿だった。


だが、彼は侯爵マーキスだ。

バースを預かる者だ。


ランマルは、ゆっくりと手を挙げた。


「……砲兵。撃ち方、止め」


ざわめきが走る。


「このままでは、魂還薬の無駄撃ちだ。

今は――人を救えない」


唇を噛み、叫ぶ。


「優先すべきは、バースの民だ!

兵よ! 蝕人兵を――全力でたおせ!」


砲兵たちは即座に判断し、種子島を殺傷用へと切り替える。


「全員、伏せろ――――!」


轟音。


通路を埋める蝕人兵の上半身が吹き飛ぶ。


連続する爆炎が、亡骸ごと敵を粉砕していく。


「恐怖もなく、ただ前へ進むだけ……」


ランマルは歯を食いしばった。


「僕も……母さんも……

こんな獣になっていたのか……!」


怒りが声になる。


「なんておぞましく、哀れな存在だ!

シルヴァリス……絶対に許さない!」


「ランマル様!

倒しても倒しても、終わりが見えません!

種子島の連続使用にも限界が……!」


その時、通信兵の声が通路に響いた。


『ランマル様!

メサイアから応援です!

到着まで――五十分!

ヒキガ卿、ツムリ卿、そしてノブナ公の三名!』


「……来てくれるのか」


ランマルの瞳に、光が宿る。


「兵長!

種子島は、あとどれほど持つ!?」


「高熱で使用不能になった物を交換しつつ……

それでも、持って――半刻はんとき!」


「充分だ」


ランマルは前を見据えた。


「なんとしても、あと半刻耐えろ!

その後は――」


彼は、静かに拳を握る。


「僕が止める」



一方――


「ファルネウス様。

蝕人兵が、なかなか突破できておりません」


マルヴァリウスが報告する。


「狭い通路ゆえ、すでに二千体以上が討たれております」


「構わん」


ファルネウスは興味なさげに言い放つ。


「蝕人兵は五十万を超える。

ここで二万、三万壊されたところで――痛くもかゆくもない」


わらいが漏れる。


「さて……

いつまで耐えられるかな」


その視線は、遥か谷底の都市を見下ろしていた。


「恐れを知らぬ獣の“数”という恐怖に……な」

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