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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十一章
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第六話 もう一つの道

地底都市バース。

侯爵マーキス・ランマルは、突如襲いかかった脅威に冷静さを失っていた。


「ランマル卿! バースの入口が完全に破壊されました!」


「馬鹿な……!

ここの結界は薄いとはいえ、ハク様が造った魔法結界だ!

それを、いとも容易たやすく破るとは……!」


ランマルは歯を食いしばり、叫ぶ。


「僕が止める!

バースの中には入らせないぞ――“蝕人しょくじん兵”ども!」



メサイアに戻って二日目の朝。

俺は新兵器開発のため、訓練場にいた。


簡易的に設置された研究ブース。

ハクの指示を受けながら、完全復活したライラと共に、実戦形式の実験を行っていた。


その時だった。


研究ブースに設置された魔法鏡が、けたたましい警告音を鳴らす。


「ショータさん!

実験は一時中止! すぐブースに来てください!」


ハクの声に、胸の奥がざわつく。

――嫌な予感しかしない。



「メサイア! 応答願います!

“王都バース”より緊急連絡!

直ちに魔法鏡を接続してください!」


軍議の準備を進めていた謁見えっけんの間にも、同時に緊急通信が割り込んだ。


「こちらメサイア、ノブナだ!

バース、何が起きた!?」


「しょ……蝕人が!

蝕人兵の大群が侵入しています!」


「蝕人だと!?

どこからだ!」


「女王陛下奪還時、シルヴァリスへと繋がっていた地下道です!

奴ら……あの道から、バースへ雪崩なだれ込んできました!」


「あり得ん……!」


ノブナの声が強張こわばる。


「あの地下施設はすべて埋め戻し、証拠も完全に破壊した!

仮に痕跡が見つかったとしても、

あの地下深くへ通じる竪穴たてあなを――シルヴァリスの技術力で掘り抜くなど、不可能だ!」


「ノブナ公!

しかし事実です!

奴らはすでに結界を破り、侵入を開始しています!

ランマル様と兵が、広場へ通じる通路で必死に食い止めていますが……長くは持ちません!

至急、増援を!」


一瞬の沈黙。


「……メーガン。

メサイアを、直ちに王都バースへ向かわせろ!」


操縦室の魔法鏡が繋がる。


「すでに起動中です!

現在地はライレンとの境界付近。

バース到着までは、早くとも三時間!」


「間に合わん……!」


ノブナは即断した。


「“ラビット”で私が出る!」


「私も行く!」

「俺もだ!」


訓練場から、俺とライラが声を上げる。


「駄目だ!」


ノブナが即座に制した。


「ショータ殿は新兵器開発を優先せよ!

もはや何が起こるか分からん!

ライラはエルフィリア様の側に残れ!」


その時、食堂に繋がる魔法鏡が光る。


「ノブナ様!

わ、私とヒキガさんが行きます!」


ツムリの必死な声。

隣でヒキガも、強く頷いている。


「蝕人なら……!

私たちなら、人間に戻せます!」


「ラビットは即時出撃可能!

魂還薬こんかんやくも積み込み済みです!

不足分はバースの備蓄を使用できます!」


「ツムリ! ヒキガ!

任せた! 行くぞ!」



メサイアのハッチが開き、三人が搭乗したラビットのキャノピーが閉じる。


「最大出力で射出しゃしゅつします!

ラビットなら、バースまで一時間もかかりません!」


「やれ、メーガン!」


「発射――!」


射出の瞬間、ラビットは最大速力へと跳ね上がる。

時速三百キロを超える加速。


「うぉおおおおお――――!!」


凄まじい圧が、三人を座席へ叩きつけた。


「待ってろ、ランマル!

必ず行くぞ!」


ノブナの叫びが、機内に響き渡る。



一方――

シルヴァリス軍は、ジュラでの略奪を終え、ガンロへと進軍していた。


シルヴァリス王と“弓の勇者”は地竜ちりゅうまたがり、歩兵の進軍速度に合わせ、岩山を進む。


「……妙だな。」


シルヴァリス王が低く呟く。


「ジュラの兵ども。

ガンロへ敗走したかと思ったが……足跡一つ残っておらぬ。」


王は振り返り、弓の勇者たちに問いかける。


「お前たちも、そう思わぬか?」


――返事はない。


「……つまらぬ。」


吐き捨てるように言う。


「話し相手にもならぬ。

これでは情も湧かぬな。

……どうせ使い捨てよ。」


王はわらった。


「さて……。

ジュラ兵が完全に消えたとなれば――

ファルネウスらに行かせた“もう一つの道”。

当たりだったかもしれんな。」


「ふ……ふははははははは!」


岩山に、哄笑こうしょうが反響する。


「エルフィリア……!

貴様の驚く顔が、目に浮かぶわ!」



「……シルヴァリス王。」


エルフィリアは、遠く離れた敵の動きを感じ取り、わずかに眉を寄せた。


「あなたの先見せんけんは……おとろえるどころか、ますます冴え渡っているようですね。」


一瞬の焦り。

だが、それを覆い尽くす確信があった。


「けれど……バースの精鋭を、甘く見ないことです。」


彼女は静かに、しかし確かに言い切る。


「彼らは必ず、戦いの中で活路かつろを見出す。

――必ず。」

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