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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十一章
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第五話 再起の王城メサイア

二度目の大改修を終えたメサイアは、

今や巨大な “移動型王城” として生まれ変わっていた。


女王エルフィリアとセレスティアも新たな城へ居を移し、文字どおり 王国の心臓部そのものが、ゆるやかに戦場へ向けて進み続けていた。



メサイア・謁見えっけんの間。


「勇者様。……よくご無事で戻られました。」


エルフィリアの声は落ち着いていて、けれど深い安堵あんどを含んでいる。

俺はその視線を正面から受け、静かに頭を下げた。


「女王陛下……緒戦しょせんは俺たちの完敗でした。

ライラとツムリの援護があっても……シルヴァリス王には全く届かなかった。」


「ショータ、そんなに肩を落とす必要はありません。」


エルフィリアはやわらかく微笑んだ。


「戦は、まだ始まったばかり。

ジュラ兵に多くの犠牲が出たのは胸が痛みますが……悲しいことに、戦争とはそういうものなのです。」


ツムリの代わりに前へ出ていたジュラ兵長は、静かに目を伏せた。


「それに今回の戦いで得られた情報は、必ず次へと繋がる。

それを活かせる者たちが――この国には揃っています。」


振り返ったエルフィリアに、ノブナをはじめ全員が力強く頷いた。


「あなたは決して一人ではありません。

バースという“国”が、あなたを守り、共に戦っているのです。」


ノブナが前に出る。


「ショータ殿。我らは次の戦を勝たねばならん。落ち込んでいる暇はないぞ。」


その時――

謁見の間の扉が勢いよく開いた。


「お待たせしましたーー!!」


小柄な影が転がるように走り込む。ツムリだ。


「ツムリ! もう動けるのか!?」

ヒキガが目を丸くする。


「はい! リオンさんに完璧に治していただきました!」


「……そうか。ライラは?」


「ライラさんはリアナ様が治癒ちゆを引き継いでいます。

リオンさんの治癒だけでは傷痕が残るかもしれない、と……。

リオンさん、ライラさんの身体に傷が残るのがどうしても耐えられなかったみたいで。」


ノブナが目を細める。


「……リオン。なんと優しい男よ。」


エルフィリアが小さく息をついた。


「ライラも快方に向かっているようですね。ひとまず安心です。

さて、ノブナ。これからの作戦は?」


「まずは、ジュラの現状から。オウル、頼む。」


魔法鏡まほうきょうの向こうで、オウルが淡々と報告した。


「ジュラ兵の撤退完了直後、シルヴァリス軍が結界を破り侵入。……間一髪でした。

現在、敵は地竜ちりゅう兵糧ひょうろう、そして……種子島たねがしまの回収を進めています。」


「……種子島は痛いな。」

ノブナが低く唸る。


ジュラ兵長が前に出た。


「戦場に残された分を合わせ、およそ二千丁が敵の手に。

ですが備蓄分は全てバースへ。

兵糧は倉庫ごと焼き払い……残った分はごくわずかかと。」


「よくやってくれた。兵糧が大量に渡らなかっただけでも十分だ。」


オウルが続ける。


「バースへの昇降室しょうこうしつも、最後の兵が完全に隠して撤退したのを確認済みです。」


「ならば――シルヴァリス軍は消えたジュラ兵を追い、ガンロを目指す。

地竜でも三日。歩兵なら六日はかかる。」


「六日……まだ足りぬな……」


ノブナが思案したその時、

魔法鏡からシュテンの声が響く。


「ノブナ殿。あなたが命じた……時間を稼ぎ、地の利を活かす策、出来ています。」


「説明してくれ、シュテン卿。」


地図が映し出され、シュテンの指が示す。


「ライレンか!」


「はい。雷の山の拠点“ライレン”こそ、次の戦場です。

本陣は城塞都市ライレン。

主戦場は、その前に広がる―― 霧の湿原。

視界と足場を奪い、敵を徹底的に消耗させます。」


ノブナが深く頷く。


アオダが補足した。


「ミラからライレンに至る湿原は、人の歩みすら許さぬ地。

天竜の物資輸送が無ければ、兵糧はすぐ尽きる。

――敵にとっては地獄の行軍となろう。」


シュテンが続ける。


「ガンロとミラには魔法結界のみを残し、軍勢と物資は全てライレンへ移します。」


そこへレキルの声。


「そして最後に辿り着くのがライレン。

雷の山は私の庭……ここなら誰にも負けん。」


レキルは魔法鏡の向こうでおごそかに頭を下げた。


「とは言え、ショータ殿。

ライラとツムリでも仕留められなかった“弓の勇者”。

我らだけでは止められぬ。……どうか力を貸してほしい。」


迷う理由は無い。


「もちろんだ、レキル。

シルヴァリス王がいる限り……俺は戦う。

次こそは、必ず倒す。」


ノブナがすぐさま問う。


「シュテン卿。シルヴァリス軍との衝突は何日後と見る?」


「ガンロまで六日。ガンロからミラも六日。

ミラから霧の湿原まで二日。――合計十四日。

およそ二週間後です。」


ノブナは強く拳を握った。


「十分だ。……ハク!」


別の魔法鏡にハクが映る。


「呼んだかい、ノブナ?」


「造って欲しい物がある。猶予は二週間だ。」


「何を?」


「ショータ殿の“白光の矢”を解析し、種子島に実装 してほしい。」


「……! ノブナ、ホント君は……!

科学者魂を揺さぶってくれる!! やるよ、絶対やる!」


「時間を稼ぐ理由はそれか、ノブナ……!」


俺は思わず息を呑んだ。


ノブナは断言する。


「今のままでは、“蘇る弓の勇者”に対抗できるのはショータ殿だけ。

このままでは、ショータ殿の力がシルヴァリス王に届かぬ。

ならば! 次の戦までに、我ら全員の力を底上げせねばならん。

ハク、期待しているぞ!」


「任せて! ショータさん、すぐ研究室へ!

時間が無い、急ごう!」


「ああ……本当に頼もしい仲間たちだ。

ハク、俺は何でも協力する。

新兵器を、必ず完成させよう。」


これより、二週間。

仲間たちがひねり出した、尊い時間。


そのすべてを武器に変え、

俺たちは次の戦へ挑む――。

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