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暁光の勇者と運命の指輪  作者: 茶太郎
第十一章
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第四話 大いなる撤退

緒戦しょせん、ジュラの門はヒキガの氷塊とジュラの精鋭兵に守られていた。

俺たちが“弓の勇者”との死闘に集中している間に、脇道をすり抜けてきた重装歩兵や弓兵が、想定以上の数で進軍していた。


ヒキガはジュラ兵とともに、必死でこの侵攻を食い止めていたのだ。


しかし、ライラとツムリが傷つき、俺たちは一時撤退を余儀なくされた。


俺は仲間の力を持ってしても、シルヴァリス軍に押され続けた自分を責めながら、ジュラ城塞内部へと戻っていた。



「防壁外にいたジュラ兵は……」

ヒキガが静かに告げる。


「残念ながら、飛び越える脚力がある者以外は、門が閉ざされたため戻れず……討ち死にです。」


「くそっ……! 俺の力、全く奴らに届いてなかった……!」


拳を握りしめた俺に、ヒキガは首を振った。


「いや、ショータ殿の力で“弓の勇者”を倒せたのです。

足りなかったのはむしろ……俺たちだ。ライラも、ツムリでさえも、とどめをさせなかった……。

奴らが強すぎるのです。」


項垂うなだれるヒキガ。


その横で、ライラの治癒ちゆにあたるリオンが顔を上げた。


「二人とも、戦いはまだ始まったばかりだ。ライラが命を張ってお前を守ったんだ。ショータ、泣き言は早いぜ。」


「リオン……すまない。ライラを……必ず救ってくれ。頼む。」


血の気を失ったライラの手を握りしめ、俺は絞り出すように言った。


リオンは小さくうなずく。


「ショータ。あと少し遅れていたら、オイラにも治癒は出来なかった。しかし、微かに脈が残ってた。

だから必ず治す。安心しな。」


「……本当にありがとう、リオン。お前がいてくれて良かった。」


ヒキガが苦い声で言う。


「しかし……シルヴァリス軍の強さは想定を遥かに越えています。

このままでは、張り直した魔法結界も、すぐに破られるでしょう。

ライラは復活に時間が必要……ツムリもあと一刻は動けません。」


その時――魔法鏡まほうきょうが揺らめいた。


「ショータ様、オウルです! お伝えしたいことが!」


「どうした!」


「弓の勇者が……復活しました!」


「……なんだと!? 奴らは俺が完全に消し飛ばしたはずだ!」


「どうやって復活したのか……現場は確認できませんでした。

ただ、攻撃が一瞬止んだ隙に上空へ接近したところ……

シルヴァリス王の前に“弓の勇者”が立っていたのです。」


「そんな……奴らがもう一度!?」


ヒキガの顔に焦りが走る。


オウルが続ける。


「ショータさん。確認した“弓の勇者”は……先ほどの三人とは明らかに別人でした。

装備も、歩兵のもので……。」


「歩兵……? まさか……」


ヒキガが息を呑む。


「歩兵から“弓の勇者”を作り出した……というのか?

それが可能なら……いくら倒してもキリがない!」


魔法鏡が切り替わり、シュテンの姿が映る。


「話は聞いていました!

ショータ殿! ライラ、ツムリが動けないのなら――ジュラは放棄するしかない!」


「魔法結界はあとどれくらい持つ!」


「持って一時間と半刻!」

ヒキガが答える。


「その間にジュラから撤退を!

そのための昇降室だ!

生き残った兵も、あなた方も、いったんバースに逃げてください!」


今度はノブナの声が響く。


「ショータ殿! 敵戦力の分析は非常に貴重だ。

それに! 魔法結界を破られたら、今は姿を見せていない蝕人しょくじん兵が雪崩なだれ込む可能性もある!

そうなると今のジュラでは到底防ぎきれん!

すでに“メサイア”をジュラ近くへ移動している。

今すぐ撤退を開始せよ! 作戦を練り直す!」


「分かった!

リオン、ライラの治療は続けろ。俺とヒキガでベッドごと運ぶ。

ツムリは……ジュラ兵、お前たちに頼む!」


「任せてください!」


俺は迅速に指示を出し、撤退準備を開始した。


魔法鏡の向こうでは、ノブナがさらに指示を飛ばす。


「シュテンきょう

シルヴァリス軍との“次の戦い”まで時間を稼ぎたい!

ガンロ、ミラ、ライレンの兵を集め、総力で敵を足止めしつつ――

地の利を最大限に活かせる場所へ陣を引け。

そこが我らの“逆転の戦場”となる!」


「それなら良い場所がある!

レキル!聞こえたか?」

シュテンが頷き、背後に声が響く。


「レキルだ。私は問題ない。だが、ガンロとミラは大丈夫なのか?」


「アオダだ。

レキルよ、あの場所ならば勝機がある。何の問題があろうか?」


「よし!頼むぞ。

我はショータ殿から情報を得る。次の戦までに作戦を練るぞ! 逆転の戦は、お前たちの手腕にかかっている。」


ノブナの声は、揺るぎなかった。



城壁の外では、シルヴァリス軍の結界破壊攻撃が激しさを増していた。

轟音と振動がジュラ全体を揺らす。


その中で――


俺たちは、“大いなる撤退”を開始した。

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