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第八話 暁光の勇者

エルフィリア女王を最高君主として迎え、これまで黒梟くろふくろうあかつきが共同で運営していた組織は、ついに “ひとつの国家” として形を成した。


その節目の日。

エルフィリアの提案により――

新国家バースを動かす要職の割り当てが始まる。


まず、今回のエルフィリア奪還作戦で決定的な働きを見せたノブナとヒキガには、公爵デュークの爵位が授与された。


続いて、辺境を守護する八つの要地――それぞれを任される侯爵マーキスたちの名が読み上げられる。


・“バース” ランマル

・“ジュラ” ツムリ

・“ガンロ” シュテン

・“ミラ” アオダ

・“ライレン” レキル

・“ターナ” ランドルフ

・“シオラ” エース

・“ルーサ” ラシード


それぞれの名が告げられるたび、周囲には期待と緊張が入り混じったざわめきが広がっていた。


宮廷と官僚を統べる政治中枢では、女王の側近として政治全般を補佐する“宰相さいしょう”にバルドラン、“書記官兼秘書”にオウルが選任される。

王室護衛隊を束ねる“近衛隊長”にはライラ――誰もが納得の任命だった。


さらに、“治癒の能力”を持つリアナには“大賢者”の称号が、リオンには“賢者”の称号が与えられる。

そしてリーネとセリウスには、王国の医療を支える“宮廷医師”という重要な役職が委ねられた。


エルフィリアは、五百年前からシルヴァリス王復活後に至るまで、防衛都市バースを築き続けてきたハクの功績に深い敬意を抱いていた。

だが、本人は政治より研究を望んでいたため――


彼が積み上げてきた魔法と科学を融合した学問体系を“魔科学まかがく”として正式に定義し、新たな研究機関“魔科学省”の創設を宣言。

その“初代大臣”にはハク、“副大臣”にはメーガンが任命される。


もっとも、この二人が“実務より現場”を好むタイプなのは――誰もが知るところだったが。


――そして、俺の番が来る。


今、俺はエルフィリア女王の執務室に呼ばれ、二人きりで向かい合っていた。

扉が閉ざされると、周囲は静まり返り、ただ女王の瞳だけが深い光を宿している。


暁の環の予言者――マルダ。

その予言について、詳しく聞きたい。

それが女王の用件だった。


「ショータ。どうやらあなたは……とても特別な存在のようですね。


あの魔法使いマルダが暁の環の創始者であり、予言者。そして――この世界に転生してきた、“はじめのにんげん”だったなんて……」


「俺は……マルダの予言によれば、魔王――つまりシルヴァリス王をたおす者らしいのです。」


エルフィリアは静かに頷き、遠い記憶を手繰るように言葉を紡ぐ。


「ショータ。実は私も数年前、マルダから頼まれたことがあります。その話を……お伝えしなければなりません。」


女王が語ったのは、六年半前の出来事だった。


処刑されるはずだったリアナの息子――“リオン”を、マルダの依頼でセレスティアとともに助け出したという事実。


「……な、なんだって。リアナの息子が生きてる……? リオンって……まさか!」


「私はリオンを見た瞬間に気付きました。あの青い瞳、銀の髪……あれは間違いなくリアナさんの血を引く者です。


当時、セレスティアは十二歳。リオンも同い年でした。

今は成長しすぎて、お互い気付いていないのでしょう。それに……リオンはあの時、恐怖で混乱して記憶が曖昧だったのかもしれません。」


「じゃあ……なぜマルダはリアナに隠していたんだ……?」


エルフィリアは一度目を閉じ、マルダの言葉を思い返すように静かに言った。


「マルダは私にこう言いました。


『再び混沌が訪れ、すべての元凶にあらがう者たちが現れる。正しい道を選べば、光は残る』と。


その“抗う者”の一人がリオンであることは確かです。


だから私は、リオンを守るためにリアナから引き離しておく必要がある――そう理解していました。」


「理解していた“だけ”…ってことですか?」


女王はゆっくりと首を横に振る。


「おそらく、すべてはショータ――

あなたを未来へ導くためだったのでしょう。」


「俺を……? 俺のせいで……リアナは……リオンと暮らせなかったっていうのか……」


「ショータ。自分を責めてはいけません。」


エルフィリアはまっすぐに俺を見つめた。

その瞳には揺らぎも迷いもない。


「あなたは“魔王を斃す者”として運命の渦に巻き込まれた。

けれど、その渦の中にいるのは、あなた一人ではありません。


リアナも、リオンも……そして私も。

この新たな国バースのすべての民が、マルダの言う“抗う者たち”なのです。


だからこそ、私たちはそれぞれが自分の未来を選ばなければならない。


私はあなたに真実を伝えた。

これも――マルダが見た未来の一部かもしれません。

でも、私は“自分の意思”であなたに告げました。


この真実をどう活かすのか。

どの道を選ぶのか。


それは、ショータ……

あなた自身が決めることなのです。」


「俺自身が……決める……?」


「そうです。あなたに与える称号があります。」


エルフィリアは静かに告げた。


「それは――“勇者”。」


「ゆ、勇者……⁈」


「はい、ショータ。


あなたは魔王を斃し、この世界の崩壊を止められる唯一の希望。

この混沌の世界に現れた“勇者”なのです。


あなたの選択が未来を変える。


それを胸に刻み――前へ進んでください。」


「俺が……みんなを導く……。」


エルフィリアは優しく、しかし揺るぎない声で言った。


「ショータ。


あなたは、この世界のあかつきに差し込む一筋の光。


暁光ぎょうこうの勇者”となるのです。」

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