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第七話 建国の戴冠

メサイアが無事に帰還し、バースは祝祭のような熱気に包まれていた。


中央広場。

各施設へと繋がるバースの中心であるこの場所は、すでに身動きが取れないほどの群衆で埋め尽くされている。


「オウル。エルフィリア様とセレスティア様が落ち着かれたら、新設した謁見えっけんの間にご案内しろ。それと、女王陛下の側近そっきんとなる者達にも集まるよう伝えてくれ。」


「はい、ノブナ様。メサイアの帰還と同時に、皆すでに会議場へ集まっております。」


「よし。各拠点にも連絡を回し、“魔法鏡まほうきょう”を繋ぐ準備をしておけ。」


「はい。こちらもすでに整っております。あかつきの拠点にも伝達済みです。」


「うむ……間もなく始まる。我らが目指す理想郷への第一歩が。」


ノブナは自室の窓から、歓声が波のようにうねる中央広場を見下ろした。


――――


謁見の間は、エルフィリアを迎えるために新設された部屋だった。

この数ヶ月でハクの設計により多くの施設が生まれたが、とりわけこの謁見の間には最新技術“魔法鏡”が取り入れられている。


魔法鏡は離れた場所同士を映像で繋ぎ、声を届けることもできる。

谷底の拠点、暁の環の拠点への設置は難航したが――どうにか建国の日である今日に間に合った。


曲面の壁に並ぶ魔法鏡には、シュテンやレキルをはじめ暁の環の頭領たち、そして元黒梟の谷底の拠点長たちが映し出されていた。


さらに、バース中央広場や各拠点の広場にも魔法鏡が設置され、民と兵たちは建国の瞬間を見守る準備を整えていた。


そして――ついに。


エルフィリアが姿を現し、赤い絨毯じゅうたんを静かに歩み、謁見の間の中央で立ち止まった。


「あの人が……エルフィリア様か。」


その高貴なたたずまいに、俺は息を呑んだ。


エルフィリアは人間で言えば三十歳前後の若々しい容姿のエルフだった。


「そうよ。あのお方が、シルヴァリス王国の元女王エルフィリア様。お歳は五百十五歳だったかしら。そして……あちらにおられるのがご息女セレスティア様。確か十八歳よ。」


リアナが小さく囁く。


見目みめからは母娘とは思えないが、長命種のことわりはこういうものなのだと改めて思い知らされる。


ノブナがエルフィリアの前に歩み出て、静寂を破った。


「本日、このバースにエルフィリア様とご息女セレスティア様を正式にお迎えする。

そしてここに、エルフィリア様を女王とし、新国家――第三国家バースを樹立する!」


ノブナは王冠を高く掲げ、その光景が魔法鏡越しに各地へと広がる。

そして王冠は、エルフィリアへと手渡された。


エルフィリアはそれを胸の前に抱え、ゆっくりと語り始める。


わたくし、エルフィリアは……エルフの国の女王として、人間との共生を目指してまいりました。しかし、シルヴァリス王が蘇り、かの国は再び“エルフ至上”の姿へと歪められてしまいました。

私を筆頭とする女王派は捕らえられ、この春には処刑される運命でした……。」


「ですが――そんな私たちを救ってくれたのは、このバースの民!

そして暁の環!

過去の因縁を越え、今は同じ理想を掲げ進む者たちよ!

私はあなた方に救われた命を、新国家バースの未来へ捧げます!」


エルフィリアは抱いていた王冠を頭上へ掲げ、静かに戴冠たいかんした。


「私は、女王エルフィリア。

あらゆる種族の共生を目指す新国家バースを統べる者!

エルフ至上のシルヴァリス、人間至上のサンサーラ――その争いを止めるため、

ここに第三国家バースを起動する!」


その言葉が放たれた瞬間、

観衆の歓声が爆発し、大地が震えるほどの熱気が渦巻いた。


新たな国の夜明けが、ここに誕生した。

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