表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緋の迷宮  作者: 津本美弥
14/14

作品の後に

《天郷》は、世界の西端に位置する一地方である。その地形は、四方を自然の障壁が囲む、限られた地域であった。完全に外界とは閉ざされ、ーーつまり《天郷》に住まう人々にとって、世界とは他ならぬ《ここ》を指した。このような閉ざされた地域であったためか、文化様式(または価値観)は、世界から逸脱するものがあった。

 もともとこの世界には、人を一種族とすると(実際には多数の少数民族に分派しているが)、それに相対すら種族ーー《妖魅》と呼ばれるそれがあった。双方は一般に相入れない存在であり、常に関係は敵対するものがあった。とはいえその存在は明らかに違うものであり、人を物質と見れば、彼らは一種の霊的物質の具象物であった。故に大きなその隔たりから、双方共に互いを干渉しあうことは少なかった。(しかし、一度干渉が始まれば、それは先にも述べた通り、敵対に他ならない)

 しかし《天郷》においては、その関係は大幅に違った。つまり常に互いに干渉し合っていたのである。この閉ざされた土地にいる限り、互いに生存をかけて争わねばならなかった。双方が共存できるほど、《天郷》は広くはなかったのである。

 そうなった場合、物質に依存する《人》は、劣勢を強いられることになった。それを打破したのが《守護者》と呼ばれる人であった。《守護者》とは、人の形をとりながら、その存在は妖魅に近いと言っても過言ではなかった。彼らの出現理由は、《天郷》そのものの存在にある。《天郷》自体にとって、最も好ましい状態だったのが、人と妖魅が均衡を保って同時に存在していることだった。つまり物質と霊的存在が一律にあることが最も望ましかったのである。故に人の劣勢は《天郷》にとっては、不都合だったのであり、それが《守護者》を生むこととなったのである。

 故に《守護者》の力は、土地に基づいており、土地が力を与えるといってもよかった。それは同時に《天郷》と《守護者》が同じ存在であることをあらわした。《守護者》が傷付けば《天郷》も傷付き、またその逆もしかりだった。そしてその均衡はかなり長い間続いた。

 しかしここに《天郷》は、俗に言う争乱期を迎えることとなったのである。

 当時《天郷》は四国分割時代になっており、晶、緋、碧、緑の大国に別れていた。それが約三百年ほど続いた。しかしそれはあまりにも長すぎ、四国共に国内は飽和状態に陥ってしまった。ついには四国共倒れの状態にまで追い込まれ、争乱が勃発した。そしてこれに乗じたのが、他ならぬ妖魅であった。まさに漁夫の利であった。

 《天郷》は人の争乱に加え、妖魅の横行の危機にさらされたのである。そして《守護者》のでるところとなった。とは言え、争乱は《天郷》を大きく傷付けてしまい、この状態で《守護者》に分があろうはずがなかった。

 この時の《守護者》は4人で、四国それぞれに分散する形であった。晶の翔豈。緋の亜以良。緑の陸野。碧の土岐。と記録されている。(ただし記録できたのは、この時までである)最終的に妖魅の猛攻を鎮火させることはできたが、それにあたって、守護者を一人失う結果となったのである。

 この約八年間の争乱で四国は分裂をきたし、多邦時代を迎えることになった。すなわち小国分立時代の幕開けとなったのである。

 文化の衰退はさほどなかったものの、やはり多少の変革は余儀なくされた。この間にも、小さな争乱は持続し、邦の数も増減を繰り返した。ちなみに最も邦が多かった時でその数は三百あまりになった。そしてこの多邦時代は五百年程続き、現在も持続している。

 なお《天郷》の在り方も、時代の変革と共に変わりつつある。まず《守護者》の存在の伝説化が、その際たるものであろう。第一期争乱時代のあと妖魅の横行は、同時に比べ影を潜めつつあった。また《祓士》なる、妖魅を狩る専門職の誕生も《守護者》を伝説化させる要因の一つに数え上げられる。つまりこの時代に入って人は、土地と切り離されつつあったのである。しかし《天郷》そのものは何ら変わるところが無く、それ故次第に人にとってこの土地は住みにくいものとなっていったのである。ーーそして《天郷》はゆっくりと衰退の道をたどっていく。事実さらに百余年ののち、ここは無人の地と化してしまうのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ