1-9(ウィル視点)
貴族街で雑貨屋へ向かう。
フェリシア様がそう言った物を好むので、
女性は皆そう言った物が好きだと思い込んでいた。
実際スティナ嬢は、興味深そうに、
いろんな小物を見ていたが、
まったく買おうとしない事に不安になった。
喜んでもらえると思っていたのは、
自分の思い込みだったのだろうか。
「気に入った物はありませんか?」
その言葉に、
「可愛い物ばかりで、迷ってしまいます」
と返ってきて、
ほっとすると同時に困惑した。
フェリシア様は、アレ、コレ、ああソレも。
と言うように、次々に指さして購入し、
欲しい物は全部手に入れるという風だったからだ。
姿は同じだけど、フェリシア様とは違う?
そんな困惑を見透かされたのか、
どうしたのか?
と言う表情でみられたので、
何とか笑顔で誤魔化した。
当然、違う人間だ、
いくら外見が似てたって性格は違う。
当たり前の事を再認識して、
フェリシア様の身代わりのはずが、
スティナ嬢と出かけていると考え始め、
その変化が自分にとって嬉しい事に、
自分で気づいていた。
欲しい物を言えば、いくらでも買ってあげるのに・・・
さんざん迷って、結局買わなかった小物を、
今日の記念にと買って彼女に渡し。
この日が、彼女にとっても幸せで、
特別な日である事を願った。