3-7
フェリシア様が結界に向かって歩き始める。
そして、杖に手を伸ばそうとした時、
その手が震えている事に気が付いた。
とっさに叫ぶ。
「待って!」
大聖堂中の視線が集まる。
私は立ち上がり、フェリシア様の元に向かう。
「いけません、フェリシア様とは今度、
新作のケーキを食べる約束をしました。
王太子妃たる者、約束を破ってはなりません」
呆然としているフェリシア様に、
あえて軽い感じで話しかける。
他の人達も、どうしていいのか分からず、
戸惑った空気が流れていた。
その空気を破ったのは、デリア師匠だった。
「その方は、女神クラスティーナの加護を受けた方だ」
フェリシア様の目が大きく見開かれ、
その場で崩れ落ち、泣き出す。
王太子がフェリシア様に近づき、フェリシア様を抱き上げる。
「お任せしてよろしいのですね」
「はい」
返事をした私に王太子がうなずき、礼をする。
一国の王太子が礼を取った事に、周りは納得する。
私はフェリシア様から離れ、結界を強化する杖に手を伸ばす。
6歳の時、体中から力が溢れてきたのをまた感じる。
杖に手を伸ばした瞬間、結界が光り、
周りからざわめきが起こる、
また、あの時のように、孤独に陥るかもしれない。
それでも、ウィルを、フェリシア様を、この国を守りたい。
12の公爵と結界に力を注ぐ、
公爵の1人が詠唱を唱える。
『クラスティーナの加護の元、
結界の強化を行う、
この地に繁栄と栄光を
永遠なる忠誠と信仰と共に』
結界は一段と大きく光、大きな膜となり、
上空へと広がっていく。
結界の張り直しは成功し、
教会は歓喜に包まれた。




