2-6(ウィル視点)
「すまない」
王太子であるアルフレッドが頭を下げる。
王太子が頭を下げているいれば、
普通、高位者がそうそう頭を下げるものではないと、
気にしないで下さいと言うのが普通だが、
すぐには言葉にならなかった。
スティナがフェリシア様の替え玉になっていた?
王宮から教会までのパレードで襲撃があったのは、
当然知っている。
しかし、転移魔法でフェリシア様が現れた事で、
騒ぎは最小限に収まり、
教会の警備に当たっていた私も、
騎士達が襲撃者を追うだろうぐらいしか考えていなかった。
「頭を上げてください」
そうやくそう言って、
どさっとソファーに座る。
王太子も心配そうな顔で、向かいのソファーに座った。
「内容は先ほど説明した通りだ、
襲撃予告があって、念のため、
スティナ嬢に身代わりを頼んでいた。
残念ながら、本当に襲撃が起こり、
それを防ぎきれなかった、
申し訳ないが、スティナ嬢は・・・」
苦しそうな顔して、顔を歪めるアルフレッドを見る。
警護が4人もいたのだ、
守り切れないのは想定外の事だったのだろう。
しかし、そうなると・・・
考えたくはないか、答えは1つしかない。
彼女はもうこの世にはいないと。
アルフレッドを責めようとして、言葉にならず、
それ以上に自分のせいか?という思いが沸き上がる。
自分が、アルフレッドに、
スティナがフェリシア様に似ていると言った為に・・・
彼女がいないと言う事実は、
まだ信じられないでいた。
「それで、事の顛末をスティナ嬢のご両親に報告する必要がある」
「私が行きます!」
叫ぶように声が出た。
「そうか」
アルフレッドはそれ以上は言わなかった。
王太子の部屋に沈黙が下りる。
それでは、とはどちらも言い出せないでいた。
テーブルに用意された紅茶を口に含む。
もうぬるくなった紅茶は、
荒れる心を宥めてはくれなさそうだ。
あの時こうしていれば、
もっと傍にいれれば、
秘密にしないといけないのは分かっているが、
何とか聞き出せていたら、
せめて自分が警護できていれば。
思いが頭をぐるぐると周る。
侍従が王太子を呼びに来て。
アルフレッドは頷き。
「私はこれで失礼する」
そう言って部屋から去っていった。
それを立ち上がる事もなく見守り、
扉が閉まるのを見る。
バタンと。
自分の中の一部が閉まるような感じがした。