2-5
転移魔法でたどり着いたのは実家。
しかも自分の部屋だ。
攻撃を受け、思っていた以上に緊張していたのだろう、
自分の部屋である事にほっとして、肩の力を抜く。
しばらくぼーとして、
ふと鏡を見て、フェリシア様の姿が目に入った。
あれ?と思って、
フェリシア様の姿になっている事を忘れる程、
緊張していた事を自覚する。
大きく息を吐き、鬘を取る。
私がいなくても、掃除はされていたらしく、
家を出る前の状態のまま、綺麗に保たれている。
ベッドに腰掛け考える。
本物のフェリシア様は、目的である教会にもう着いている、
転移魔法を使って教会に行った事になっていて、
襲撃のパニックは少し残るものの、
そのまま結婚式が行われるはずだ・・・
夕方になって、部屋を出る。
いきなり現れた私に、
メイド達は戸惑い、混乱しているようだったが、
私の能力を知っている、古参の執事が、
上手くとりなしてくれて、
料理の準備やベッドメイクなど、
次から次へと普通に指示を出す事で、
さも普通の事であるかのように対応してくれている。
「ただいま」
居間には両親がいて、執事と現れた私に驚いていた。
「スティナ?本物か?幽霊か!」
叫ぶ父親に、ドレスの裾を少し上げ足を見せる。
「足があるので、幽霊ではないわね」
「驚いた、まあ、お帰りなさい」
驚いた顔をしつつも、何とか冷静さを保った母親が、
席を勧めてくれる。
私はそこに座って、事の顛末を話した。
「では、王都ではスティナは死んだ事になっているの?」
「おそらくね」
「王都への連絡は?」
「私が身代わりをしている事自体極秘で、
ほとんどの人が知らないから、
限られた人に連絡を取るのは、少し大変かも・・・」
一番いいのは王太子に連絡を取る事だが、
そうそう簡単に連絡を取れる相手ではない。
「とにかく大変だったわね、ゆっくり休みなさい」
「そうね、そうさせてもらうわ」
最初は少し混乱したものの、
普通に話を受け入れてくれる両親に感謝しながら、
自分の部屋に戻り、眠りにつく事にした。