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結婚式当日、ひっそりと王宮に入り、
フェリシア様の部屋に入り、着替える。
王宮から結婚式が行われる教会まで、
馬車によるパレードが行われ、
私はその間のみ替え玉となる。
私が替え玉になる事を知っているのは、
この国でも10人程、
もちろんウィルにも言えない。
不安な心を抱えていると、
1人の老人が部屋を訪ねてきた。
「デリア師匠!」
「ひさしぶりですね」
かつて公爵の身分であり、
今は指導者である、デリア師匠。
本来、貴族であっても、
そうそう接点がない人物だが、
過去、彼に助けられた経験がある。
前会った時より白髪が増え、
年老いた感じもあるが、
柔和な笑顔は相変わらずだった。
彼は一つのバングルを差し出してくる。
「このバングルの魔法の石は、
転移魔法が入っています」
貴重な転移魔法が入ったバングルを差し出され、
びっくりしたが、ありがたく受け取る。
「本来の魔法なら思い描いた所に転移しますが、
このバングルだとどこに転移するか分かりません、
リスクはありますが、
身を護る為、あった方がいいでしょう」
しかし、デリア師匠が、
私にバングルを渡してくれたのは、
私ならバングルを使わなくても、
自分の魔法で転移して、
望む所に行けると知っているから。
両親や、ほんの一部の人しか知らない事だが、
私の魔力は公爵をも凌ぐ。
デリア師匠は、その事を知る一部の人なのだ。
そして、その事は、私の希望で、
一般には知られていない。
「いざと言う時は転移魔法で逃げて下さい、
そのバングルがあれば、誤魔化せるでしょう」
彼の心使いをありがたく思い、
腕にバングルを付ける。
そう、私がこの国でトップレベルの魔法を使える事は、
絶対に秘密・・・
「女神クラスティーナの加護があらん事を」
そう言い残し、
デリア師匠は部屋を去っていった。