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そんなラブラブな日々を過ごしていると、
ある日職場でマスターに呼ばれた。
「特別室に行って欲しい」
このサロンには2階があり、特別室となっている。
しかし、ここは大臣の裏の取引や、
他国からの密輸入など、
この国の必要悪に利用されている。
もちろん、国王も知っていて、
”知っているが、知らない事になっている”
それ程特別な場所なのだ。
もちろん、今まで近づいた事もなく、
そこに行くとなると、嫌な予感しかしない。
心臓をどきどきさせながら、特別室へ向かう。
もちろん、私が呼び出される理由など、
何一つ思い浮かばない。
「失礼致します」
重厚な扉を開け、部屋へ入る。
そこには若い男性が、ソファーに腰かけていた。
そして、その男性を見た瞬間膝を折り、
一番丁寧な礼を取る。
どうしてと思うが、こちらから、
話しかけるなど、無作法はできない、
頭を下げ、声がかかるのを待つ。
「許す、表をあげよ」
ああ、間違いない、王太子殿下だ。
「さっそく要件に入らせてもらう」
王太子殿下が話始める。
「君にフェリシアの身代わりを頼みたい」
「身代わりですか?」
「ああ、結婚式のパレードで、馬車で街を周るのだが、
その間、フェリシアが狙われていると情報が入った、
もちろん、警備、公爵も魔法で対応しているので、
対処できると思うが万が一と言う事もある。
ウィルがフェリシアとデートをしていたと言う情報を掴み、
調べたら、君の変装だと言う事が分かった、
これなら国民も騙せるだろう。
もちろん、礼は十分にする、お願いできないだろうか」
お願いと言うスタンスを取られているが、
貴族として王族の命令を断れるはずがない。
神妙な表情で「はい」と言って、
大変な事になったと、重い心を抱えていた。