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デートをしていて、胸がどきどきする、
ああ・・・私ウィル様に恋している・・・
お姫様扱いして、優しくエスコートして、
何も困らないよう、気を使ってくれて・・・・
しかも、顔良し、身分良し!
これで惹かれない女性はいないでしょう。
でも、私は身代わり。
好きなのはフェリシア様であって、私ではない。
今日は、最高の日だったと思う、
最高に楽しく、幸せな日。
でも同時に、恋した瞬間失恋する、
そんな切ない日。
あ~あ、恋するなんて14年ぶりの、
奇跡的な出来事だったのに。
そんな事を思っていたせいで、
ウィル様の言葉につい、返事が遅れてしまった。
「幸せですか?」
フェリシア様の身代わりとしては、
幸せだと答えるべきだと思う。
しかし、言葉が声にならなかったせいで、
変な間ができてしまい、気まずくなる。
ウィル様はそんな私をじっと見て、
でもはっきりといった。
「僕に、幸せにさせてもらいませんか、
スティナさんを」
その言葉に、え?となる。
スティナさん?私は身代わりよね。
ウィル様は教会で片膝をついて、語りだす。
「他の女性が好きで、身代わりを頼んでいたのに、
急にこんな事を言われて戸惑うのは分かります、
確かに私はフェリシア様が好きでした、
しかし、その気持ちゆえ、
まともに話しかける事もできず、
固い表情を常に意識し、
ただ、胸が苦しい恋でした。
しかし、今日貴方といて、
普通に話せる幸せ、一緒にいるだけで満たされる
気持ちを知った。
こんな恋もあるのだと。
それに、姿が似ているだけで、
中身はフェリシア様とは全然違う、
あくまで惹かれたのはスティナ貴方なのです。
今日で終わりにしたくない、
また一緒に、いやこれから先、永遠に一緒にいたい、
私の事を考えてはくれませんか?」
真剣に言われ、目がじんとなる。
頭で答えるより、心が答えを出していた。
そのまま頷く私に。
ウィル様は立ち上がり、私を抱きしめる。
うわ~、夢じゃないよね?
何か自分に都合良すぎで怖い!
心臓がどきどき言っているのを感じる。
失恋だと思っていたのに、奇跡の両想い。
さっきの質問に今なら断言できる。
『私は幸せです』
そう思って、ウィル様を見つめていると、
ゆっくりと顔が近づいてくるのを感じた。
私の肩にウィル様の手が乗せらせ、
胸がどきんと跳ねる。
私はとっさに、ぎゅっと目を瞑って、
そんな私に、微笑む気配を感じた。
その後、本当に軽く、唇を当てるだけのキスをされる。
「必ず幸せにします」
「はい」
ようやくそれだけ答えて、この幸運に酔いしれた。