1-11(ウィル視点)
茶葉の専門店や香水の店を巡る。
どちらもフェリシア様が好きだった店だ。
フェリシア様はフレイバーティに凝っていて、
いろんな味のお茶を購入しては、
お茶会の計画を立てるのが趣味だった。
スティナ嬢はあまり香りの変わった物には
興味がないらしく。
定番の普通の紅茶を購入していた。
フェリシア様なら、
店員にあれこれ聞いて、
産地や特徴など、お茶会のネタを仕入れようとする。
しかし、スティナ嬢は、
目当てのお茶の葉1種類買えたら、
もう他の紅茶には興味がないらしく、
店員にいろいろ聞いたりもしなかった。
「この紅茶だけでいいのですか?」
私が聞くと。
「我が家では、ずっとこの紅茶なんです、
食事にも、お菓子にも合うし、
濃いめに入れるとミルクティーにも合う、
万能の葉なんです」
そう言いながら続ける。
「でも!さすが貴族街ですね、
同じ種類の葉でも等級があって、
ここで購入できるのは一番いい等級なんです!
我が家では真ん中ぐらいの等級の葉なんで、
どう違うが楽しみです!」
そう笑顔で言われて嬉しく思う。
紅茶に興味がないかと心配になったが、
そうでもなかったらしい。
次に香水の店に向かう。
すると、真剣に悩みだして、
「私も嗅がせてもらっても?」
そう言って、瓶に鼻を近づけると、
ミントのさっぱりした匂いがした。
確かにいい匂いだが、スティナ嬢のイメージではない、
少し言うか迷ったが、
「スティナなら、もっと甘いものか、
柑橘系の香りの方が・・・」
「あ、これウィルの香水です」
その言葉にえ?となる。
そんな事を考えているとは、想像もしていなかった。
「私の?」
当たり前と言った風にスティナ嬢が頷く。
嬉しい!
心が跳ねてどきどきする。
その後ランチに向かった。
遅くなってしまってどきどきしたが、
あまり気にしていない様子にほっとする。
フェリシア様なら、絶対ご機嫌を損ねている。
何も考えないで、フェリシア様が好きだった、
生の貝を注文してしまった。
後で分かった事だが、生の貝は駄目らしい。
フェリシア様なら、かなり怒っている所だ。
しかし実際はまったく怒った所がなく、
ほんわかとしたスティナ嬢に、
好感度は一気に上がる。
外見が好みだけでなく、内面も理想なのでは?
食事は和やかに進み、
スティナ嬢といる事を自然に感じている事に気づいた。
一緒に生活しているだけで、幸せに感じるだろう。
今日出かける時、感じていた心の雲が、
全て晴れたようだった。
嬉しい!楽しい!
幸せが溢れてくる。
同時に、スティナ嬢も幸せにしたいと本心から思った。
迷いは全て晴れ、
心の中に、光が差したようだった。