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第十五話 魔法.

俺は過去イチで集中していた。


ローザの森から戻った後、俺はクリス兄さんと騎士達と一緒に父様への報告を済ませると、すぐに自室へと戻ってきた。


もちろん、"体内の魔力を感じ取る"を達成するためだ。足踏みなんてしてられない。ただ全力で、出来ることをしていくまでだ。


俺の隣ではいつもの様にサラが座って同じことをしている。森での事を聞きたい様子だったが、それは許さなかった。



部屋に戻るや否やすぐに床に座り込み、魔力を探し始めた。開始してから既に一時間ほどが経っただろう。


"やっとこの退屈な時間ともお別れできるのかー"


いつも見守ってくださりありがとうございます。ロキ様。ちょっと静かにして下さい。


あと少しなんだよな…、たぶん。

いや………間違いない。これだろ?これに決まってる。これじゃなきゃなんだって言うんだ…。


きた?きた?きたっ!



俺はすぐにステータスウィンドウを開いた。

するとスキルの欄に確かに【魔力操作Lv1】の表示があった。


今度は【スキルクエスト】のウィンドウを開く。

魔法関連の項目を開くと、その一番上には、"魔力を練る。0/1000回"と表示が変わっており、クエストが次の段階に進んだ事を表していた。


そして念願だった、魔法関連のクエストが色々と解放されている。まだ解放されていないものも多いが、今進めていける物だけ拾っていく。


"魔力を使い切る。0/15回"

"火の魔法理論書を読む。0/10回"

"水の魔法理論書を読む。0/10回"

"地の魔法理論書を読む。0/10回"

"風の魔法理論書を読む。0/10回"

"光の魔法理論書を読む。0/10回"

"闇の魔法理論書を読む。0/10回"

"魔力切れを起こした状態から、最大効率で魔力を全快させる。0/10回"

"最大魔力から一度の魔法で魔力切れを起こす。0/20回"

"魔法を発動する。0/1000回"

"魔法陣を書き取りで覚える。0/200回"



おーおー。またたくさん出てきたな。

【魔力操作Lv2】に向けてのクエストは今まで通り継続するとして…。優先度が高いのはどれかな?


とりあえず、"魔法理論書を読む"。かな。もうだいたいの本は読めるし。

それと、"魔力を使い切り"つつ、そこから"最大効率で魔力を全快"出来たら二つのスキルクエストを同時に進めることが出来る。


スキルクエストのウィンドウを閉じると、横にいるサラに聞いてみた。


「ねぇサラ。ちょっとごめんね。うちに魔法理論書ってあるの?」


サラの集中を邪魔してしまって悪いなと思ったが、彼女は実は仕事中なので仕方ない。

そしてサラも嫌な顔一つせずに答えてくれる。


「確か、闇魔法以外の一通りの魔法理論書であればあると思いますよ。御当主様が閲覧を許可してくださるかは分かりませんが」


「そうだなぁ。でも最近はなんだかんだと優しいから許可してくれるんじゃないかな?」


そうなれば、善は急げ。思い立ったが吉日だ。

俺はサラを連れて父様の書斎に走った。



「火の魔法理論書以外であれば構わん。闇の魔法理論書はここにはない」


ほら!やっぱり父様はそこら辺の堅物親父とは違うね!


「やった………!ただ、火の魔法理論書が許可されない理由を聞いてもよろしいですか?」


「火魔法は攻撃性が高く、まだお前には早い。クリスと同じくらいになるまで待ちなさい」


やっぱりか。攻撃力が高いとか、それならなおさら火魔法が良かったんだけど。一番かっこいいし。駄々をこねてみるか?リスクを冒すか?今後に絶対あった方がいいものか?

………いや、でも火魔法以外は自由に勉強してもいいみたいだし、欲張っちゃだめだな。


「分かりました。ありがとうございます」


感謝を告げて、俺は書斎を後にした。

向かうは書物が保管してある書庫だ。



「おぉ…」


思わず、そんな声が漏れた。

魔法理論書が保管してあると言う事で、書庫に入るためには父様の許可が要る。入ったのはこれが初めてだった。


さすがに子爵家というべきか。思ったよりも多い。

二十畳くらいの部屋に棚が並んでおり、びっしりと本が並べてある。どれもこれも背表紙は黒ずんでおり、開かずとも相当な年季物であることは分かる。


魔法理論書がどこにあるとか目印的なものはない。つまり、この本の山から探さないといけない訳だが、身長が低いため少し大変だ。


「シュウ様。抱っこいたしましょうか?」


「抱っこ!?そ、そうだね。お願いしようかな」


前世で言う高校生の女の子に対面で抱きかかえられながら、本の棚の間を移動していく。そんな状況に全然集中出来ない。でも仕方ない。身長が足らないせいなんだ。仕方ない。俺の股間がサラの身体に押し付けられているのだって、俺は何にも悪くない。


"サラちゃんはほんとに君の事が好きだよねぇ"


彼女は仕事なんですよロキ様。

と返事をしつつ、仕事でこんな事させて申し訳ない気持ちと共に背徳感も湧き上がってしまうどうしようもない俺。


あ、魔法理論書あったわ。残念もう終わりか。

サラに降ろしてもらって、本を一通り取ってもらう。他の本と同様に、革でできた背表紙は焦茶色に変色していい味を出している。太さは図鑑程もあるが、一枚一枚の紙がかなり分厚いので、ページ数的にはそんなにない。


「かなり古い本ですね」


「そうだね。火の魔法理論書はここにないね。父様が保管してるのかな。あ、それかクリス兄さんが使ってるのかな?」


とりあえず俺は床に座り込み、光の魔法理論書を開いてみる。


「あ、シュウ様、汚れてしまいますよ。そんな所で」


「大丈夫だ……よ…、え?」


「どうかされましたか!?」


「いや、何でもないよ。何でも。思ってたのと違ったからさ」


一ページ目と二ページ目は文字だけ。

三ページ目から魔法陣のような物が出てくるが、その魔法陣の模様、というか魔法陣を作っている文字に酷く違和感を覚えた。


「あぁ、魔法陣って私も見たことはありますが、なんでも大昔にいた勇者様のスキルが起源らしいですよ。何が書いてあるのか全然読めない(・・・・)ですよね」


「そ、そうだね…」



曖昧な返事をしてしまった。サラに少し怪訝な顔をされるがそれどころではない。

………読める(・・・)のだ。それは他でもない。日本語で書かれているのだから。


慌てて他のページをパラパラとめくっていくが、記載されている魔法陣は全て日本語が使われていた。平仮名と漢字だ。


大昔にいた勇者様のスキルが起源。

サラはそう言っていたが、その勇者様と言うのは間違いなく俺と同じ異世界人。もっと言えば日本人だ。


つまり、異世界召喚は俺達が初めてではない。過去に何人かの地球人がこの地を訪れた事になる。


そして、魔法はその勇者様のスキルが起源だと言うなら、その勇者様がこの世界に来るまでは魔法と言う概念が無かったって事か?魔力とか魔力の元になる物自体が無かったのかも知れないし。


ロキ様何か知りませんか?


"また今度、他の女神に聞いといてあげるよー"


うん。これは迷宮入り決定だ。

ちょっと気になる程度だから、無理にとは言わないけど。


パラパラと最後までめくり終わってから、スキルクエストを思い出す。

確かこれ十回も読み込まないといけないんだっけ?

結構書いてある事難しそうだし、なかなか時間かかるよな…。


スキルクエストのウィンドウを開いて、光魔法の魔法理論書の項目を探し出す。


"光の魔法理論書を読む。1/10回"


「ふぁっ!?」


「ひぇっ!?」


俺の驚きの声に、隣のサラが嬌声(きょうせい)を上げる。


「シュウ様…?」


「いや、なんでもないよ。ごめん」


一回。進行してる。

他の魔法理論書の項目は全てゼロだ。光魔法の項目だけ…。まだ一回も読んでないのに。


ぱらぱらーっと流し読みしただけ(・・・・・・・・)なのに。


………。


俺はもう一度光の魔法理論書を取り上げて、冒頭から最後までをぱらぱらとめくる。五十ページ程度を一分くらいで読破した。………そしてウィンドウを開くと。


"光の魔法理論書を読む。2/10回"


「ファック!!!!!」


「ひぇっ!?」


すみません、無駄に大きい声出しました。サラのその声が聞きたかっただけです。


「ごめんね。サラのそのリアクションが見たくて、つい」


恥ずかしそうにこちらをジトっと見る目も最高です。もっといじめたくなります。いや、これ以上はパワハラだな気を付けよう。


それにしても………。

流し読みでカウントされるとは、少々雑すぎませんかねぇ?いざ本当に魔法を使うとなったらちゃんと内容を理解しないとダメなんだろうけど、多分スキルのレベルで威力とかは変わってくるよね?


よーし。そうと決まれば。


「サラ。少し長くなりそうだから、何か飲み物を取ってきてくれないかな?飲み物は、そうだな。アッサムとアールグレイとダージリンを一対一対二でブレンドして、砂糖を小さじ一杯とミルクを十五ミリリットル入れてくれるかな?お湯はちゃんと熱湯で、浸出時間は三分の煎出回数は三回で頼むよ。最近濃い味が好きなんだよね。あとお菓子にクッキーを数枚お願い」


俺の注文に、サラは口元をヒクつかせた。


「分かりました…。ここから出ないようにお願いしますね?イタズラもだめですよ?」


「わかってるよ。いい子にしてるから」


と答えるとある程度は納得したようで、その注文を口で繰り返しながら部屋を出て行った。別に凝ったお茶が飲みたかったわけではない。今からの奇行を、サラに見せないためだ。


「ふぅ。ロキ様。いい加減、サラにはいいんじゃないですか?」


"うーん。やっぱりまだやめといて〜。アイツにバレたらマジ面倒だからさー。信じられる?アイツってば私の信者に勝手に「全員丸坊主にするように」って神託与えたりした事あんだよ!?そのせいで丸刈り教とか呼ばれた時代もあったんたから!"


ロキ様の言うアイツとは、誰あろう俺を転移に巻き込んだ運命の女神の事である。


"私も仕返しでアイツの信者に「全員去勢する様に」って神託与えたけど、アイツの信者はほとんど従わなかったわ。信仰心が薄いのよ"


俺がロキ様に助けられてこの世界に転生したことをあの運命の女神はまだ知らない。ましてやあいつが異世界転移させた高校生達に敵対しようとしている事も。いや、まだ敵対すると決まったわけではないけどさ。穏便に片付けばそれが一番だもんね?日本人ってそういうもんでしょ?


とにかく、あの運命の女神に俺の存在がバレれば、ロキ様は何かしらの仕返しを受け、俺は最悪の場合消されてしまうらしい。だから、スキルを取得しまくるのは構わないが、それで強大な軍隊を作ったりして高校生達に対抗しようとするのはまずいらしい。

まだ今の段階では…。


「よし。サラが帰ってこないうちに稼ぐだけ稼ぐとするか」


気合いを入れ直すと、俺は魔法理論書を手に取り、到底読めない速度で本のページをめくる。


一冊めくり終わってはをチェック。

読んだ(・・・)と判定されるのはどの辺か…。


"光の魔法理論書を読む。2/10回"。


だめか。

今度は少しだけ、そのページに一通り目を通すくらいで。それでも一、二秒だけど。


"光の魔法理論書を読む。3/10回"。


お、いけた。

さぁ。こっからはサラが戻ってくるまでにどれだけページをめくれるかの勝負だ。楽しくなってきたー!

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