学院編 きっかけは唐突に
修正これからもいれますがおきになさらず。
『なんで黙っていたんだい!!』
とある昼下がり、特に何にも悪いことをしていないのに俺はライラおばさんに詰められていた。
母さんのを仕事終わりを待っている間、木陰で本を読んでいたら急にである。
『えと…ライラおばさんごめんなさい?』
『はぁ、別にあんたを怒ってるんじゃないんだよ。なんで字が読めることを黙ってたのかってのをきいてるのさね』
あぁそーゆーことか。
この世界に転生してこの国の言語は日本語だったので迂闊だった。
俺が今まで見てきた書物は全て日本語のひらがなとカタカナを使用していた。
だから読めるものは無意識のうちに読んでいた。
母さんが仕事の間に家の手伝いを終え暇な時間に読んでいたこともあり、今まで自分から本を読めることを話していなかった。
そしてライラおばさんに見つかってしまった。
『で、いつからだい?』
『ぇっと、物心ついた時から?』
『どこでそんな言葉覚えたんだい!』
ライラおばさんは驚いた表情で聞いてきたので、俺はおずおずと「本です」と答えていた。
『ぷっ、はっはっはっそりゃぁそうさね!こりゃぁ一本を取られた!』
どうやら俺の返答はライラおばさんのツボに入ったらしく、おばさんはお腹を抱えて笑っていた。
『フゥー…久々に笑ったよ。で、誰に字の読み書きを習ったのかきいてもいいかい?』
真剣なまなざしで俺の瞳をみている。
まるで瞳の奥をのぞき込んで嘘を見抜こうとしているようだ。
これはライラおばさんの癖である。
ライラおばさんには悪いけどほんとのことを話すわけにもいかないし、うーーん。
『母さんが、本を読んでくれてたからその時に習ったんだよ。でもわからない字はジョッシュにぃや町の人に聞いたりして覚えた』
ライラおばさんを騙すことはしたくなかったが正直に話すと頭がおかしくなったと思われるのも嫌だし、それらしい言い訳ができたんじゃないだろうか。子供ながら無難な回答かもしれないけども。
『…なるほどねぇ。つまりあんたは読むだけじゃなく書くこともできるんだね』
『う、うん』
『文字の書き方も本で習ったってことでいいんだね?』
『うん』
長い、長い沈黙の後、ライラおばさんは俺の瞳を覗くのをやめ鼻で笑っていた。
そしてしゃがみ込み顔を近づけ口を開いた。
『キット…危ないことはしてないんだね?』
『うん』
そうだ、なにも危ないことはしていない。
『あんたの母さんに誓えるね?』
俺は黙って頷き、真剣なまなざしでライラおばさんに答えた。
『家族に誓って危ないことはしていないよ』
『…分かった。あんたの話をあたしは信じるよ』
顔を近づけるのをやめ、ライラおばさんはいつもの感じに戻った。
『文字書きが出来るならそれを生かさない手はないねぇ…早速それを踏まえてジェリーに話をしないと…』
ライラおばさんはなにやら独りごとを言っている。
ときおりニヤニヤとしていて怖いが、どうやら尋問は終わったみたいだ。
尋問は終わったしもういいよね。
俺は続きが気になってしょうがないのでライラおばさんを置いて元の定置に戻り本を読むことにした。
因みに本のタイトルは【たべれるやくそうのみわけかた】だ。
※※※※※
『えぇ!!キットを学院にですか?』
『読み書きが出来るんならこんな田舎暮らしするより学院で勉強して立派になってもらったほうがあんたも嬉しいだろ?王国のお偉いさんはあたしも好かないけど、あの子が偉くなれるんならこの町は今より数倍ましになるかもしれないよ?』
『で、で、で、でも…』
家に帰り、ライラおばさんは母さんを連れて隣の部屋に入っていった。
内緒話のつもりかもしれないが実は俺には聞こえている。
スキルを持っているおかげなのか、耳を澄まし集中すると割と聞こえるのだ。
俺は前世の知識があってたまたま読み書きがこの世界にマッチしただけに過ぎない。
そんな俺をライラおばさんは学院とやらに通わせたい、と。
うーーーん。確かにこの世界の事を知りたいと思うけど、それは本があれば大体理解出来そうだしなぁ。
でも…母さんやライラおばさんやジョッシュ、この町の人が幸せになれるんならそれが俺の使命なんじゃないか?
うん、きっとそうだ。
時神様が言っていた「10歳になってから」という言葉を思い出す。
学院がいくつになってから入学できるかはわからないが、仮に10歳の頃に学院に俺がいれば俺はまた教会で手に入れた【憤怒】に似たスキルを授かるのだろうか。
【憤怒】の力を上手く使えるようになるまで約一年かかった。
この一年で分かったことを敢えておさらいしよう。
【憤怒】は怒りを炎に変換するスキルだ。
怒りの感情で【憤怒】のスキルが発動しそうになるので慣れるまで大変だった。
なんせちょっとしたことでイラっとしてしまうと身体が熱くなり、動悸が激しくなり呼吸がしにくくなる。
そのたびに呼吸が苦しいことが辛くなり、泣くことにより怒りの感情を哀しみに変換することで相殺されることを理解した。
俺って天才じゃね?そう思った。
ただ当時の俺は自分の涙が熱を引かせたのではないか?と考えており、自身の涙にはそんな成分があるのではないかと考えていたものだ。
それでひと商売を…と馬鹿なことを考えていた時期が僕にもありました(遠い目)
なぜ間違いに気づいたかとゆうと
その日の夢の中で紳士が現れ「貴殿の涙には価値は無いよ」と告げて消えて行った。
話は脱線してしまったが、俺にスキルの知識があれば教会で起きたことのように派手なことをしないですむかもしれない。
何にも予備知識もないまま新たなスキルを授かって暴走してしまって町の皆に被害を出すわけにいかないから。
うん。きっとこれは時神様からの導きに違いない。
なので俺が出す答えは決まった。
※※※※※
その日の夜、ジェリー母さんから学院の話が話題に出た。
『いけるかもしれないってだけで絶対にいけるわけじゃないんだけど...キッドは学院に行ってみたい?』
『...うん。俺もたくさん勉強して母さんを楽させたいって思ってて、本を読んでるだけじゃだめだって思ってたから...。母さんが許してくれるなら学院に通って少しでも偉くなって親孝行をしたい!』
『き、キッドオォオオーーーー』
母さんは号泣しながら抱きついてきた。
少し芝居臭かったかもしれないが、どうやら上手くいったっぽぃ。
母さんが落ち着いた後、入学する為の条件を確認した。
1つ、読み書きができる者。
2つ、8歳になる年に入学できる者。
3つ、推薦状を貰うこと(推薦できるのは一人につき一人まで)
条件の内、1つ目はクリアしている。
残り2つの内1つは8歳になれれば問題無し。
だが、残りの1つが問題らしい。
『推薦状を出せる人間がこの町に居ないのよ』
ん??じゃあオイラはどうすればいんだー??
詳しいことはライラおばさんに確認しないとらしいので、今夜は大人しく寝よう。
おやすみなさい。
学生に戻りたいなぁ