プロローグ2
『ちなみにね、2つの選択のデメリットとメリット?の説明をさせてもらうね?じゃないと公人くんも選択しづらいでしょ?』
子供神様は見えない空間からホワイトボードを取り出し、具体的な説明を始めた。
『まず先に赤ちゃんルートの説明をするね?異世界転生ってやつだから元の世界とは違って文明は退化してる。でもその代わり魔法ってのが使える世界。で、公人くんが元気な時に読んだことあるような本のお貴族様転生っ、じゃなくて普通の平民の家に産まれる。ごめんね。その代わり異世界の神の加護と僕からのお餞別みたいな物をあげちゃうよ』
子供神様は早口で説明をしながら大まかな異世界の説明、その世界で生きるコツの説明、色々と説明してくれた。説明の内容は早くてわからない…はずだが何故か頭にすっと情報が入ってきた。
『うん、うん。理解が早くてうれしいなぁ。あ、デメリットは平民に産まれるってことで、メリットは私たち神様の特典?が貰えてラッキーてところかな。それで髭ちょびんの加護は【健康な肉体】だったはず。で、僕の特典は内緒。でも公人くん的には将来役立つ特典をあげるからそこは期待してほしい』
つまり転生するまで内緒ってことか。
健康な肉体ってのは皮肉なもんだ。まるで事故に遭った俺を憐れに思い付けてくれた加護みたいに思える。
『次はもとの世界に戻ったときのメリットを先に教えてあげるね?さっきもいった通り公人くんは下半身不随で足が動かなくなります。これは死ぬまで治らないやつだね。でもね、その代わり君の幼なじみが公人くんが死ぬまで看病してくれる』
『え?麻帆が死ぬまで看病してくれる??でもそれは...』
『それはきっと麻帆ちゃんが公人くんを振ってしまったから。公人くんが自殺未遂をしたんじゃないかと気にやんで、公人くんの側に居てくれるんだよ。これがメリットだね』
自分が麻帆のせいで自殺を計ったんじゃないかと疑われ、俺は自分の不注意でこうなったと言っても事情を知っている麻帆は気にするんだろうな。
振られた理由は分からないが麻帆は凄く根は良いやつだから。
『それは、メリットではなく呪いみたいじゃないですか!!』
『怒らないで?でも結果的に公人くんは好きな人と同じ時間が共有できるんだからWinWinじゃないかな』
こいつ何言ってんだ?
迷惑をかけてまで
あまつさえ俺の事故のせいで罪悪感に押しつぶされる麻帆の姿を死ぬまで見てろと?
それでWinWinだと?
こいつはそれでも神か?そもそもこの子供は神なのか?
これは夢の中で俺は悪魔か何かに変なことを吹き込まれてるだけじゃないのか?
『公人くん、頭の中たくさん考えすぎだよ。信じてもらえないかもだけど僕は神様だよ?ただ君のところでいうところの感情?ってのがあんまりよくわからないから。公人くんを傷つけたのなら謝るよ』
気付けば俺は睨みつけていた。だが子供神様は表情ひとつ変えることはなく俺を落ち着けと言わんばかりに紅茶を飲んでいる。駄目だ、冷静になろう。
『仮に、仮にあなたが神様であなたの言う事が正しかったとしたても、俺は直ぐに選ぶことが出来ない』
これは俺の本音だ。
子供神様が言っていることが全てほんとで、元の世界に戻らず異世界に転生なんてしたら。
俺は…情けないかもしれないけど麻帆に振られた理由を聞くまでは死ねない。
『神様俺は…『公人くん、君は本当に振られた理由を知りたいのかい?本当に真実が知りたいかい?知りたいなら紅茶のお替りを飲んでからになるけどねいいかな?』
俺のカップにはなみなみの紅茶が注がれた。
飲み干した後、目の前のモニターの画面が切り替わる。
※※
『まほー!早くかえろー!!』
『うん!でも公人に呼ばれてるから校門前で待ってて』
『えぇ、、また公人くんとですか…おあついことですね!』
『冗談はやめて!』
えっ?
『公人の父親がパパの得意先のお偉いさんじゃなかったら絶対一緒にいないから』
う、嘘だろ?
『ごめんてっ、でも麻帆も損な役回りだね。嫌いな男にいい顔するなんて私には真似できないよ』
『多分、今から私告白されるかもしれない。どうやって切り抜けるか考えてるところなの…』
『麻帆…確かお父さんから高校卒業までは仲良くしろって言われてるんだよね…』
は?
『うん。私、もう死にたいよ。なんで好きでもない男と高校卒業まで仲良くしなきゃならないの?!私だって好きな人だっていたのになんでっ…うぅ』
麻帆…そんな…
『ごめん恵梨香、公人のところ行ってきて要件済ませてくる…愚痴こぼしてごめん』
『ううん、麻帆はよく頑張ってるよ。どんな結果になっても私は麻帆の味方だから!後で甘いものでも食べに行こう!』
『うん』
プツンっ
※※
プツンっ
『公人くん?』
俺はモニターに映っていた事に耐え切れず電源を落としてしまった。
どのボタンで消したか覚えていない。
もう、俺は知りたくなかった。
この映像が真実だとしたら
佐藤公人は一人の少女のの人生をつぶして生きていたくそ野郎だと
『あの、、これはうそじゃないんですよね?』
『この私、時を司る神【時神】は この部屋に訪れたものに対し最初に嘘を吐くことはできない』
そういう縛りなんだと、今までへらへらしてた顔ではなく真剣な顔で話す子供神様。
映像は鮮明すぎて、これが現実だと認めたくない自分。
だがこれが嘘だとしたらなんて残酷な映像を俺に見せるのかわからない。
だからこれが現実かぁ
『ハハハハハッ!!結局、結局俺は死んで当然だったわけだ!!!くそぉっ!くそぉ!くそぉ…』
泣きたいくらい気持ちと顔がぐちゃぐちゃで、みっともない姿をさらしてると思う。
でもあの紅茶のおかげか声に出すと先程までの嫌な感情は少なくなった。
気持ち的にスッキリできている。
『公人くん…君も麻帆ちゃんも汚い大人に利用された被害者なんだよ。だから僕はこの世界が嫌になってるってところもある。君の手術が終わる前に何とか決断をしないとだからこの映像をみせたけど、ごめんね。本当は見せたく無かったんだ』
『俺が知りたくてお願いしたんですから。大丈夫です。むしろありがとうございました』
そうなのだ。もう子供神様というのは辞めよう。この方は神様。
俺が何も知らなければ傷つくこともないと思って気を使ってくれたんだ。
『公人くん。この映像を見せた後だからじゃないけど、君は異世界で人生をやり直すべきだ。この世界の神様の僕が言うセリフじゃないかもしれないんだけどもね』
『はい。俺が知りたかった振られた理由をしることができましたので。神様のおかげです』
俺は心の中でこの世に未練は無いと。
この世界に戻ってはいけないと。
麻帆がいない世界へと行きたいと。
『決心がついたみたいで良かった。公人くん、これで君と僕とは会うことはないだろう』
身体が白い粒子の粒のように消えかかっている。
『公人くんの次の人生が、さちがあらんことを』
そうして佐藤公人はこの空間から消えた。
※※※
『ふぅ、次から次へと。忙しいな神様ってのは』
時神は先程使っていたティーポッドを片付けながら新たな来訪者を出迎える準備をする。
やぁ。おきたかい?
次回から本編です。