【番外編】勇者様はこじらせているらしい(sideケイ)
クロウは変なやつだ。
容姿、体格、剣技。全てにおいて恵まれているくせに微妙に女性不信だし、面倒くさがりだし、愛想もない。
おまけに父であるレオさんのような爽やかさも、カリスマ性もない。
何より感情を表に現すのが下手すぎる。
でも俺は、そのマイナス面が気に入っている。
あれは俺がまだ十五の頃。
今年からレオさんの息子が厄介な魔物どもを狩ってくれるということで、新しいもの大好きな町の人間は今か今かとお披露目を待っていた。
もちろん俺もそのうちの一人だ。
レオさんが町長と話していると聞きつけ、町長の家の近くまで走って行ったのがクロウとの出会いになる。
その時俺が見たのは、まだ幼さが残る少年だった。
玄関前の階段に座りぼんやりと空を眺めている少年は、大人の話に飽きて外に出て来たんだろう。
成長途中な彼の体には少し大きいだろうと思われる二本の剣がやたらと目を引いた。
何となく声を掛けづらくて、しばらく見ていた俺を一瞥したクロウは階段上から口を開いた。
「何?」
思わぬタイミングの訪れに勝手知ったる俺は石造りの階段を駆け上がって、少年の隣に座る。
「いや、レオさんの……息子?」
「そうだけど」
さすがあのレオさんのご子息。整った顔立ちをしてやがる。でも、
「子どもだな」
率直な感想がもれる。
「お前だって同じくらいだろ」
抑揚のない口調で睨んでくるけども、俺より目線が下なのであまり迫力もない。
「俺、ケイって言うんだ。よろしくな勇者様」
「僕は勇者じゃない」
「この町の人間からしたら魔物を狩ってくれる勇者様なんだから、気にするなって。ほら、よろしく!」
何か言いたげなクロウの手を無理やり握って、ぶんぶん上下に振る。
少し嫌そうな目をしつつもクロウは拒否する事もなかったので、その日から俺たちは友人になった。
あれから三年。レオさんが同行したのは初めの一年だけで、それ以降クロウは単独でやって来るようになった。
そして毎年会うたびに身長が伸びていく奴は、今や俺より目線が上になってしまった。
「何? 気持ち悪いんだけど」
他の奴に相槌を打ちながらゆっくり果実酒を飲んでいたクロウは、横でじっと眺めていた俺を見る。
この国では十八から成人とみなされ、酒も解禁となる。
去年初めてクロウに果実酒を勧めてみたが、面白いほど弱くて、すぐに眠ってしまった。
どこかぼんやりしているクロウは、この分だと今年もすぐに寝てしまうだろう。
そしてグラスと反対の手には肉。こいつよく食うんだよな。
「別にー、俺らの勇者様は今日もイケメンですなあと。……嫌な目で見るなよ。口で言え、口で」
びよっと片方の頬を引っ張ってやると、肘で軽く殴られた。
クロウは俺にはわりと容赦がない。
「そうだよなぁ、クロウは言葉が足りない。あんま喋んないと、誤解もされるだろ?」
話していたうちの一人が援護を出してくれるが、当のクロウは少し据わった目で首を傾げる。
「別に……どう思われようと、あんまり気にならない」
「はいはい、イケメンは得だよなあ」
「そういうのじゃないけど」
「ただしイケメンに限るという言葉をお前は知らんのか! あーあ、せっかくの祭りなのにさあ、女の子は大抵お前の事気にしてるだろ? ほら、あそこの可愛い子だって、さっきからチラチラと見てる」
ふわふわした金髪の少女が少し離れた場所から、さり気なくクロウを観察している。
あれは可愛いと評判のミーアちゃんだ。決してうらやましくなんかない。
彼女が見えるように、強引にクロウの顔を動かしてやる。
「痛い……」
「めっちゃ可愛くね?」
だけどクロウは酒の効果で赤みを帯びた目を閉じて、うーんと考えてから、
「キアラの方が可愛い」
そう一言発して、そのままズルズルと俺の肩にもたれかかるように倒れ込んで来た。
「寝てるな……。相変わらずめちゃくちゃ酒弱いよな」
重いし可愛くないし、とりあえず酔っ払いは転がしておく。
「そのうち起きるだろ。それよりさ……」
「ああ……」
その場で話していたクロウを除く三人で目を合わせ頷く。
「キアラって誰だ?」
それから数時間。そろそろ夜も明けようかという時間帯に、やっとクロウは目を覚ました。気づいた俺らはやつをすぐに囲み、
「キアラって誰?」
と問いかけたところ、感情を表すのが下手なクロウにしては珍しく驚いたような表情をした。
「え……? 妹だけど、なんで知ってるんだ」
妹……。そういや妹がいるとか前に言ってたな。
その時は軽い話だったし、そのうち父さんが連れて来るんじゃないか? と名前も聞かなかったけど。
しばらく沈黙する俺たちをクロウが訝しげな顔で見ている。
「シスコンだ……」
「シスコンだな……」
「シスコン……」
全員同じ考えだった俺たちは、つい三人同時に呟いてしまった。
「意味がわからない……」
まったく覚えがないらしい。
首を傾げるクロウを見て、またもや三人ほぼ同時に爆笑した。
その日から俺たちのクロウへ対する好感度(興味とも言う)は更に上がり、勇者様は拗らせたシスコンだと噂が拡まっていったのであった。
あれから一年ほど。今年は例の妹ちゃんが一緒に来てくれるらしい。
おそらく、俺らの勇者様は多数の町人から生温かい目で見守られる年になるだろう。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます(❁ᴗ͈ˬᴗ͈)
こちらで完結となります。
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まぞまがは初めてちゃんと書いたお話ということもあり、とても思い入れある作品です。
三章まであるのでいつかまたこちらでも投稿できたらな〜と思います(*^^*)




