【番外編】勇者な兄とお付き合いしました③
(クロウとケイさん、本当に仲良しなんだね。友情っていいなぁ)
しかし勢いよく飲み込んだクロウは口元を雑に拭って、ケイに訝しげな視線を向ける。どこか苛立つような目にキアラはきょとんと首を傾げた。
「これ……、酒だろ。なにか企んでいるな」
「飲みやすいだろ? これ。めでたい席には酒だよな」
にっと笑うケイは自分の持つ瓶を「これ」と指す。
彼が飲んでいるのはクロウに渡したものと同じなのだろう。
額を押さえるクロウの顔は心なしか赤くなっていて、「やられた」と呟く声が小さく聞こえた。
「どうしたの? クロウ大丈夫?」
「ああ……。なんともない」
しかしキアラの持っていた水を飲んだクロウは机に突っ伏し、ほどなくして眠ってしまった。
「寝ちゃった……。どうしよう、大丈夫かな」
「いつものことだから大丈夫だって。弱いのに嫌いじゃないみたいだし、毎年自爆してる」
あっけらかんと笑うケイはカゴの中からもう一本瓶を取り出し、キアラに手渡す。
さっきとは違って薄黄色の液体からは甘い匂いが漂っている。
「正真正銘のジュースだよ。果汁しか入ってないから」
たしかにこれはラメールに来てからよく口にしているものだ。
ひとくち飲み込めば爽やかな風味が喉を潤してくれた。
「いろいろ聞いてたけど、二人が付き合って俺も嬉しくてさ。何か困ってることがあったら相談に乗るよ。こいつ意外と馬鹿だろ?」
「えっと、ありがとう。昨日の今日だし、特に……」
この町には一か月以上滞在したが、もともとあまり異性と会話をする習慣がないキアラは、ほぼ女性と過ごしていた。
なかなかゆっくり話す機会もなく、挨拶と軽い世間話をする程度のケイに全てをさらけ出すには少し抵抗がある。
キアラが軽く目を逸らして答えると、ケイはうんうんと頷いた。
「そうだよな、俺たちそこまで親しくないし。キアラちゃんが警戒するのは当たり前だよなぁ」
「あ! そういうわけじゃないの。ごめんなさい」
なんとなく気まずさを感じたキアラは慌てて訂正するする。
だけどケイは特に気にする様子もなかった。
「いいって。でもさ、親友の彼女であるキアラちゃんとは仲良くなりたくて。俺で良かったらキアラちゃんが知らないクロウの話するけど、どう?」
(クロウに親友が! そして私がクロウの彼女! しかも知らない話とか、そんなの聞きたいに決まってるよ!)
キアラはよくも悪くも人を疑うことを知らない単純な娘である。
それにケイの笑顔はつい気を許してしまう不思議な魅力を持っていて、瞳を輝かせるキアラは素直に頷いた。
「聞きたい!」
「そうこなくっちゃ!」
クロウとの出会いからはじまったエピソードはキアラの知らないことばかり。
しかもケイは話し上手で、キアラの心をがっちりと掴んでいく。
もっともっと聞きたいと思うほど、ほんの短時間ですっかり心を開いてしまった。
「うう、色んな話を聞けて嬉しすぎるぅ。はぁ、クロウが尊い。好き過ぎてしんどい」
「そんなに? まぁ、喜んでもらえて良かったよ」
うっかり本音が漏れてしまった。
ケイがやや引いているのを感じ取ったキアラはこほんと表情を取りつくろう。
ここはしっかりした彼女をアピールしておきたい。
「えっと、私が言うのも変だけど……。クロウとお友達になってくれて、ありがとうケイさん」
「そう来る?」
「うん。こんなにクロウを大事に思ってくれてる人がいてくれて、すっごく嬉しい」
これもまた本音だが。少し照れてしまった。
キアラが笑うとケイも嬉しそうな笑みになった。
「こんなに真っ直ぐな子が、よくあの面倒なクロウを……。キアラちゃん本当に良い子だなぁ。何か俺に力になれる事があったら何でも言って。全力で協力するから」
ケイの瞳は信頼に満ち溢れていて、本当にキアラを思っていてくれることが伝わってくる。
実は、クロウについて気になることがあるのだ。




