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【全年齢版】魔族で魔眼な妹は勇者な兄とおつき合いしたい!  作者: ドゴイエちまき


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魔力と聖剣

「父さんが……そんな目に遭ってたなんて……。無事でよかったぁ……」

 

 レオの話に青褪め、ショックを隠しきれないキアラが身を乗り出し、机の上で固く握られた養父の拳をぎゅっと包み込む。

 

「本当に……。無事でいてくれて良かった」

 

 クロウも珍しく呆然とした表情で、心からレオの身を案じている様子が伝わってくる。

 

「うっ……、うちの子たちがいい子でつらい……」

「レオ! しっかり!」

 

 真っ直ぐな二人の視線を受け止めることが出来ず泣きそうに助けを求めるレオに、サアレが頑張れと元気づける。

 たしかにこのまま離さず終わることはできない。

 

 レオは観念したように中断していた話をボソボソとまた話し出した。

 

「記憶は今回みたいに何かきっかけがあると思い出したりする事もあって……。それで、ここからが本題なんだけどね……」

 

 固唾を呑んで見守る子供たちを前に、レオの声から更に覇気がなくなっていく。

 

「あの、クロウの、魔力のことなんだけど……」

「魔力? 僕は魔力持ちじゃないけど」

「えっと、実は……」

 

 何のことかと首を傾げるクロウの反応は当然のことだ。

 レオはことの顛末をサアレに話した通りに伝えた。

 口調はかなりしどろもどろになってしまったけれど。

 

「……という訳で、本当はあるんだよね。魔力」

 

 呆然としていたクロウが段々と状況を理解していくと共に、ゆらりと怒気が視覚化して見える気がした。


 レオは椅子ごと後ろに下がり、サアレは落ち着けと両手を前に出してクロウを宥める。

 

「そんな……。父さん母さん揃って記憶が曖昧とか、そんな都合の良い話が……」

「あったんだから仕方ないじゃないか!」

 

 そう、仕方ない。故意に忘れていたわけじゃないので、それしか言えない。

 

「僕がどれだけ……」

 

 ゆらりと立ち上がるクロウにキアラがあたふた取り繕うとするが、彼がどれほど聖剣に憧れていたかを知っている彼女としては、どう声を掛けたら良いのかわからないのだろう。

 

「ごめん! 本当に! 許してもらえるとは思わないけど、すぐに解くから!」

「クロウ落ち着け! 私からも出来る事はする!」

 

 レオもサアレもこれはまずいと必死で説得しようと身を乗り出したその時、不意にクロウの怒気が緩んだ。

 唐突な変化に夫婦揃ってぱちくりと大きく瞬きして息子を見つめる。

 

「解いてもらえれば、僕にもこの剣が使えるのか……?」

 

 クロウが独り言のように呟いて聖剣に視線を移し、柄を握る。

 レオは肯定を示すよう、激しく首を上下に振った。

 

「多分! それしか原因が思いつかないから……、確約は、出来ないけど」

 

 ごにょごにょと歯切れの悪いレオの言葉を聞くクロウはじっと、腰にある剣を見る。

 そんなクロウを励ますよう腕に触れたキアラに頷き、一度息を大きく吐いた彼は真っすぐレオに向き合った。

 

「父さん。封印を……、解いて欲しい」

「もちろんだよ!」

 

 息子が荒れなかったことが不思議だったが、そうと決まればやるべきことは一つ。

 椅子に座るクロウの前に立ち、呼吸を整えたレオは先程と同じように集中してクロウにかけてある魔法の式を探る。

 どうやって掛けたのかも思い出せない。

 しかも長年気付かなかっただけあり、かなり集中しないと当のレオでも解析は困難だった。

 

 長い時間、深く深く集中して、レオはとうとう見つけた解除の合言葉を唱える。

 同時にパキリと何か割れるような音が辺りに響く。

 今のは押さえ込んでいた魔力の枷が外れた音だろう。

 頭を押さえるクロウの顔は呆然としていて、キアラが慌てて寄り添った。

 

「クロウ! 大丈夫? わ……、魔力だ」

 

 心配そうに覗き込み、クロウの体に触れたキアラは驚いた顔をしている。

 

「どう? 大丈夫?」

 

 じっと両手を見るクロウは、手を開いては閉じを繰り返す。

 覗き込んだレオが背中に手を当てると、覚えのある魔力がじんわり手のひらに染み渡った。

 

「よかった! 僕と同じ魔力だ! クロウ、本当に、本当にごめん……。何て謝ればいいのか……」

 

 少し遅れてサアレもクロウの肩に恐る恐る手を置き、「本当だ……」と驚愕している。

 

「変な感じだ……。体の奥によくわからない感覚がある」

 

 当のクロウは心ここにあらずといった顔で、呆然と呟く。

 そして全員の視線が集中する中、おそるおそる腰に帯びた聖剣の柄を握る。

 一呼吸置いたクロウが鞘からゆっくり引き抜くとなんの抵抗もなく、陽の光を反射して薄青く光る刀身が現れた。

 そうして引き抜いた美しい刃を食い入るように眺め、のろのろとした動作でテーブルから離れていく。

 それから一呼吸してゆっくりと剣を構え、いつもの型で刃を舞わせたあと静かに納刀した。

 クロウは何も言わなくて、特に感激している様子もない。

 たまらず一通り見守っていたキアラが泣きながら勢いよく飛びついていった。

 

「お、おめでとうクロウ! 私も嬉しい!」

 

 すぐにレオとサアレも泣きながら駆け寄っていき、キアラごとクロウに抱きついた。

 今や小さかった息子は家族の中で一番大きくなってしまった。

 わんわん泣く父母とキアラ。当のクロウは三人に飛びつかれたことに驚いているようだ。

 だけど状況を把握した彼は、気が抜けたような困った顔で微笑んだ。

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