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【全年齢版】魔族で魔眼な妹は勇者な兄とおつき合いしたい!  作者: ドゴイエちまき


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魔眼の封印

 まさに足腰が立たなくなる寸前までサアレの指導を受けたクロウは木にもたれ、息も絶え絶えに肩を弾ませている。

 荒い息を整えようと何度も呼吸を繰り返して、肺に新鮮な空気を取り込む。

 

「クロウ!」

 

 そんなクロウの元へ駆け寄ったキアラは、あわあわと忙しなく腕に触れる。

 特に怪我はないようだが、二人が手にしているのは触れれば切れてしまう恐ろしい武器だ。キアラとしては全力でぶつけ合う行為自体が恐ろしい。

 手のひらから即座に回復魔法を発動したおかげで、クロウの呼吸はすぐに整いはじめた。

 

「クロウ! 大きな怪我はないみたいだけど、大丈夫?」

「ああ、なんとか。ありがとう」

 

 よかったぁと抱きついて安堵の息を吐くキアラの背に、クロウの腕が回る。

 安心したキアラがホッと息を吐くとレオに回復を施されたサアレが面白くなさそうな目をしているのが見えた。

 

「まずまずだな」

 

 同じく近くの木にもたれるサアレの息も上がっているけど、まだ涼しい顔をして汗を拭っている。

 

「はいはい、二人ともお疲れ。キアラのことで話があるんだけど」

 

 空気を変えるようにパンと手を叩いて「いいかな?」とにっこり笑うレオに促され、木陰にある四人掛けの木製テーブルへと移動する。

 日差しは強くともちょうど木陰になっているので幾分涼しく、冬以外はなかなか重宝しているテーブルである。

 全員が腰掛けたのを確認してから、レオが話を切り出した。

 

「キアラの魔眼を封印しようと思うんだ」

 

 その為に急いで帰ってきたのだが、クロウはよほど驚いているらしい。

 目を瞬き、信じられないといった顔でレオを見つめている。

 提案したものの本当に実現するかどうかはクロウ自身、半信半疑だったのだろう。

 

「本当に?! 可能なのか? 父さん……」

「うん。可能だと思う」

「待て、何のことだ?」

 

 珍しく大きな声で驚いたクロウはキアラの手を取り、頬を紅潮させている。

 こんなにも喜んでくれることが嬉しく、キアラもまた微笑みながらうなずいた。

 だけどサアレは眉をしかめて現状を把握していない。

 何の前置きもなしに始まった会話なのだから当然である。

 

「あのね、私の魔眼を封印してもらいたくって、父さんに聞いてみたの」

「どうして……。魔眼はキアラの身を守る為に必要なものでは?」

「母さん、何かあっても必ず僕が守る。それにキアラは魔法でも身を守れる」

 

 嬉しそうに話すキアラにサアレは驚きのあまり目を丸くして眉間に皺を寄せたが、クロウが助け舟を出した。

 

「嬉しい……。私の魔法、認めてくれてるんだね」

「当たり前だろ」

 

 感激の声を出したキアラは再びクロウを見上げる。

 守ると宣言されてことももちろんだけど、努力を認めてもらえたことが嬉しかった。

 見ていないようで、クロウはいつもそういう細かなところを見てくれている。

 要所を抑える彼は本当に抜け目がない。しかも無意識にやっているであろうところがズルい。

 でもそういうところもたまらなく好きなのだ。

 もう何度目かの告白を心の中で叫んだキアラの細い手を、クロウはしっかりと握り込む。

 

「母さんに心配かけないくらい、これからもっと魔法の勉強するよ。それに魔眼の力は好きじゃないの。人の心を操るなんて怖いよ……。もうあんな思いは味わいたくない」

 

 一瞬とはいえクロウに魔眼を使ってしまったあの感覚を思い出す。

 あんな恐ろしいことはもう二度とごめんだ。心を操ったところでなにも得るものなんかない。

 身震いした肩は抱き寄せられ、見上げると静かな瞳をしたクロウがいた。

 

「大丈夫だから」

 

 励ますような声に頷けば、サアレが「そうか……」と呟いた。

 

「そういえば魔眼は一度も使っていなかったな……。でもそんなことができるのか? 視力に問題はないのか?」

「うん、出来るはずなんだ」

 

 そこで話を切り、ちらりとクロウを見て複雑な顔をしたレオだったが、

「ちょっと……、サアレと二人で話がしたいんだけど」

 そう言ってサアレを連れて家に入ってしまった。

 

 残されたクロウとキアラは、そわそわとはやる気持ちが落ち着かない。

 感情の起伏が乏しいクロウですら、キアラと同じように目を輝かせている。

 

「本当に出来るんだな……。よかった」

「うん、うん! 嬉しい。まさかこんなに簡単にこの目から解放されるなんて……。ありがとう、クロウが結界石から気づいてくれたおかげだよ」

 

 嬉しい涙でまたもや瞳が潤んでいく。

 ここのところ色んな感情で泣いてばかりだ。

 しかも甘やかしてくれるクロウの手がさらに涙を誘って、キアラは愛しい彼に強くしがみついた。

 すぐに抱きしめたクロウが、溢れだす雫をくちびるで掬い取る。

 二人っきりとはいえ少し恥ずかしく、「くすぐったい」と笑えば、つられたようにクロウも目元をゆるませる。

 それから落とされたキスはとてつもなく優しくて、キアラの心はじんわりと温かく満たされていくのだった。

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