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【全年齢版】魔族で魔眼な妹は勇者な兄とおつき合いしたい!  作者: ドゴイエちまき


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クロウ

「それともお前の強さは、聖剣がもたらしてくれたものなのか?」

 

 もちろん剣技には自信がある。それは小さな頃から毎日鍛錬を積み上げて来た賜物で、そこに聖剣の補佐は一切ない。

 何となく聖剣を持てば更に強くなれるような気がしていたが、クロウの愛剣だってかなりの名刀だ。

 なんなら聖剣の使い手ではないが、師匠である母はクロウよりもっと強い。

 もともと意地で固執していた部分が大きかったこともあり、聖剣への執着がわずかに崩れていく気がした。

 

「そういう言いかたをされると、どうでもよくなってきた気がする……」

「だろ? そんなクソしょうもない理由でキアラちゃんに壁を作ってたのなら、態度改めろよ」

 

 ケイの物言いは、更に情けなさを倍増させた。

 この友人と話していると、意固地になっている自分に、恥ずかしさすら覚えてしまう。

 しかしキアラへの態度を変えるといってもどうすればよいのだろう。

 あまりにも虫がよすぎる気がする。

 

「今さら、どう顔を合わせたらいいのか……。できない……」

「できるできないじゃない。やれ」

 

 お前はやればできる子だ! と陽気に笑うケイはそろそろ酔いが回って来ているのかもしれない。

 なのに酒に弱いクロウがまったく酔わない。

 不思議に思っていると、「お前に酒を飲ませたら話すどころじゃねーからな」と笑われた。

 たしかに飲めと言われただけで、それが酒とは言われていない。

 まんまと策に乗せられたのが少し悔しくもあるが、驚くほど心はすっきりしている。

 口には出さないけれど、クロウは珍しく素直に感謝する。

 

 どうなるかはわからないが、キアラとも少し話をしてみようと思った。

 せめて追い詰めたことを謝ろう。

 許してもらえるかどうか、それはキアラが決めることだ。

 そんなことを考えながらその夜は珍しく、クロウが酔っ払いの面倒を見ることになった。



 


 ケイを自室へ帰したあと、ベッドに入ってもなかなか寝つくことはできなかった。

 静かな部屋でひとりになると、泣いて許しを請うキアラの姿が頭に浮かぶ。

 冷たくあしらっては泣かせることなど、今まで何度も経験してきた。

 そのたび自己嫌悪におちいるのだが、適切な距離のとりかたがわからなかった。

 

 いつだってキアラはクロウを見つけて、いつもそっと寄っては嬉しそうな笑顔を見せる。

 だけど素直な気持ちをぶつけてくるキアラと違って、上手く言葉を伝えられないクロウは、いつも悲しい顔をさせてしまうのだ。

 キアラは可愛い。感情がそのまま出る大きな瞳も、サラサラ流れる桜色の明るくて長い髪も、クロウを呼ぶ甘くて柔らかな声も。

 何より裏表なく、いつでも真っ直ぐにクロウを求める健気さは時々たまらなくなる。

 

 気持ちに応えない身勝手な義兄のことなんか見ないで、他に目を向ければいい。

 そう思っていたのに。あの日、森でつい魔が差してしまった。

 寂しそうなキアラを見てつい手を差し伸べてしまったのは過ちだった。

 小さな体は予想より軽くて、まさか抱き止めることになるとは思わなかった。

 しかも壊れそうに頼りなくて、柔らかくて、おまけにいい匂いもして、理性より先に抱きしめてしまった。

 一瞬でもキアラを求めてしまったことにクロウ自身が驚いたほどだ。

 腕におさまる華奢な感触を思い出して、つい手のひらを眺める。

 

「小さかったな……」

 

 出会った頃からキアラは小柄で、いつもにこにこしていた。

 しばらくは警戒心を剥き出しに邪険に扱ったが、健気に慕ってくるキアラをなぜか放っておけなかった。

 母を思い出しては泣きじゃくる小さな頭を撫でてやったり、何度か抱きしめてなぐさめたこともある。

 でもそれも最初の半年だけだった。

 年々距離を取るようになったここ数年、スキンシップは一切しないようになった。キアラから寄ってくるのは置いといて。

 

(つい抱きしめてしまったけど、これはもう健全な男子だから仕方ない、多分。妹だけど血の繋がりはないからセーフ……。いや、むしろアウトか)

 

 たまに自制より先に動いてしまうことがあるのは、キアラがあまりにも無防備だからだろうか。

 キアラは妹だ。いくら可愛くても、それ以上になるつもりはない。

 剣の師でもある母のことは尊敬しているし、感謝もしている。

 でも自分の中に流れる魔族の血は好ましく思えなかった。

 

 なるべく考えないようにしていることだが、クロウは生まれた時から魔力を持っていない。

 父が身に宿す光の魔力は人間のみに授かるものだ。どういうわけか魔族には宿らない希少な力だったりする。

 魔力は突然変異をのぞき、血筋で受け継がれるものだが、混血であるこの身には宿らなかった。

 もしそれが原因だとしたら、どうあがいても聖剣を使うことはできない。

 そう思うとさっさと諦めるべきだったけど、なんせ物心ついたときから固執しているので、もう半分意地になってしまっていた。

 

 自分でも馬鹿みたいだと他人事のように思う。

 ケイの言うとおり聖剣を扱えなくてもクロウには変わりない。

 むしろ今まで積み上げてきた努力を認めるほうが健全だ。

 こうやって気持ちの整理をつけていると自分の稚拙さが情けなく、ブランケットを引き上げたクロウは苦い溜息をついた。

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