log-062 災害と厄災
…竜種、それは厄災種ともまた異なる、災害のような存在。
あちらがまだ理性ある愛に呪われたものではあるが、こちらは純粋に滅ぼし尽くすことを目的としたもの。
どうしてそのようなものが出てくるのかはわからず、わかっていることと言えばひとたび現れれば相当な被害が出てくることだろうか。
幸いなのは、こちらのほうはまだ人の手でどうにかできる可能性があることだが…それでも、圧倒的な力を前にして、抗うのは容易いことではない。
【【【ギャォォォォォォォス!!】】】
激しく燃え盛る炎のブレスを吐き出しながら、地上を焼き尽くすフレイムワイバーン。
先ほどまで残っていた命の痕跡へめがけ、滅ぼすために掃射を行う。
その行為は、生きている者を完全に根絶やしにするためなのか…いや、違う。
このフレイムワイバーンの群れは確かに竜種ではあるが、災害と言うには悪辣なほどの悪意が込められており、その性格は一言で終わっていると言い表せるだろう。
自分たちにかなうものはどこにもいない。
思うが儘、好き勝手に焼き尽くし、滅ぼし尽くし、それを楽しんでいるのだ。
竜種と言う札を掲げ、その力を存分に振るい…今もまさに、残された希望の光を焼き尽くした…はずだった。
だが、その思いは脆くも崩れ去るだろう。
キラッ
【ギャォ?】
ごうごうと立ち上るブレスを照射した場所の火柱。
その場にとどまり切れなかった炎が上に向かって登っている様子だったが…その炎から、妙な輝きを感じ取ったワイバーンがいたが、そこで動けていれば思い知らされることはなかったのかもしれない。
ドォォォンッ!!
【【【ギャオッス!?】】】
突然、火柱の一部が爆発し、何かが飛び出してきた。
そのままワイバーンたちへ迫り、空中でばっと別れ…
【宿り木乱れ撃ち!!】
【ねばねばネット爆散玉!!】
【氷炎斬!!】
振るわれたのは、様々な攻撃。
何事かとワイバーンたちが理解するよりも早く、その攻撃の手は彼らの身体に届く。
【ギャォォォォス!?】
あるワイバーンの身体には、鱗の隙間から肉体へ根っこを突き刺して前進へ張り巡らせ、物凄い勢いで養分を吸いつくされ、干からびて落下した。
【ギャゴォォォォウ!?】
あるワイバーンの肉体には、凄まじい量の粘着性のある糸が取り付けられ、呼吸を奪われて喉を塞がれ、ねばつくことで羽ばたけずに落下していく。
【ギャゲェェ!?】
そしてあるワイバーンは、飛翔してきた青い焔の斬撃を受け、受けた身から切り裂かれ、凍っていき、バラバラにひび割れながら地上へ向けて砕けて落ちていく。
何が起きたのか、まだ無事だったワイバーンたちは、その正体を見た。
そこにいたのは、自分たちとは種族の異なる、モンスターの姿。
火柱が消え失せたことで、彼らがいた場所には立派な大木が立っていることに気が付き、これをよじ登ってやってきたのだと理解させられる。
それと同時に、その身に纏うものから…竜種ではないはずだが…その身に宿す力を、強者であったはずの彼らは瞬時に理解させられた。
―――これは、手を出してはいけない存在だったと。
―――このままでは、確実に滅ぼされてしまう。
では、どうすれば良いのか。
飛ぶすべを持たないのか、彼女たちは地上へ降下したようだが、隙が見えず、再びやってくる様子がうかがえる。
今のものと同じものを喰らえば、同じ犠牲が増えるのが目に見えている。
何を、焦っているのか。
自分たちは災害そのものともいえる竜種であり、圧倒的な強者のはず。
それが、たった三匹の獲物に…本能で理解していても認めたくはない、厄災に蹂躙される覚えはない。
【【【ギャォォォォォォォッォオォ!!】】】
あるフレイムワイバーンはそう自身に言い聞かせるようにして、雄たけびを上げて戦いを挑む。
しかし、一方で初めての恐怖というものを理解させられた一部のワイバーンたちは、この場から逃げることを選び出す。
前者も後者も、彼らが選んだ道ではあったが…悲しいかな、厄災は等しく訪れるもの。
対空手段に乏しかったとしても…それを補う方法が、協力によって、彼女たちに知恵が授けられ、補うことができればどうなのか。
その結果は…災害として、等しく生きとし生ける者たちを滅ぼしてきた彼らが、身をもって今度はその立場をもたらされることで表されるのであった…
…何が起きたのか、ワイバーンたちの理解は及んでいたのだろうか
最後まで生き延びていれば、わかっていたのだろう
そして、その理由は次回に…続く!!
…対空手段が乏しくとも、やりようはあったらしい




