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log-035 触れる理は少しだけで

 学園での生活が始まって、2週間が経過した。

 慣れた人も多くなり、学生生活としては順調に進んでいるところではある。

 時折、教師の手伝いをハクロ達が行ったりもしつつ、本日は…


「…ようやく、魔法に関しての授業か。こればっかりはすぐに受けられるものじゃないんだね」


 そわそわとしている生徒たちが多いが、無理もない。

 本日はようやく魔法に関しての授業が開かれる日であり、興味あるものは多いだろう。


 この授業を経て、魔法使いを目指したりする人もいたりするようだが、どのようなものなのか楽しみである。


「何かこう、魔法を使う時に詠唱が必要になったりするのかな‥?」


 魔法、それはこの世界において存在しているもの。

 魔道具等で出来ることも多いからこそ日常的に見る機会はほぼ無いが、それでもやってみたくなるのは人の好奇心があるからだろうか。

 

 単純なイメージだとファイヤボールだとか、電撃、盾、反射…様々な範囲に広がって使用されている気がする。



 だからこそ、本日の魔法の授業は非常に楽しみであり、その気持ちは他の生徒たちも変わらない。


「うぉぉぉぉ!!興奮で手が震えてきたぁぁ!!」

「魔法がどういうものなのか、絵物語等で聞くことはあるけれども、実際にやってみたい!!」

「才能があれば、宮廷魔術師などの道も開けるからこそ、やらなければ損だぁぁ!!」


 気合が入っている同級生たちが多く、日常の授業も面白いものが多いが、こういうちょっと変わった授業というのは刺激として非常に良いものである。

 魔法と言うのは案外、どこの世界でも心をくすぐるのだろう。



 なお、ハクロとカトレアは、本日の授業には参加していない。


 魔法は気になっていたようだが…残念なことに、この場にはいない。


 登録されている従魔の健康状態のチェックが一回は確実に受ける義務があるらしく、先日のカトレアの登録作業ついでに予約を入れていた。

 しかし、その時にはまだこの魔法の授業の日程を知らなかったため、本日に入れてしまったのだ。


 一応、キャンセルができないこともないのだが、健康診断が従魔の健康確認のために必要だという目的を理解しているからこそ、彼女たちは断った。


【健康は確かに大事ですからね…モンスターにとって、病は最も恐ろしい敵なので、受けておきますよ】

【根腐れ、葉枯れ、カビ…普段手入れしていても、油断できないのが怖いのなの】


 今は人の環境下に入っているのだが、野生下では弱った個体ほど淘汰されやすくもあり、それゆえに健康に気を遣う心はあるようだ。

 人外の存在とはいえ、人外だろうとなかろうと関係なく襲う病と言うのは、恐ろしい脅威になるようで、防げるもしくは早期に見つけて治せるものならば、さっさと解決したい。


 そのため、彼女たちは自ら授業に欠席する道を選んだのだ。

 彼女たちだけでギルドに向かわせて良かったのかという話にもなりそうだが、今のところ王都内に休みの日に出たりしているので最初こそ驚く人もいたが…慣れた人も増えたので、問題は起こらないと思いたい。


 それに、今日は欠席するだけであって、次回の授業日程が分かればすぐに参加する気もあるようなので、今日はこの授業の話を彼女たちに持ち帰ることに意識を向ければいい。


 そう思っている間に、本日の魔法の授業に関しての教師が入ってきた。


「ほらほら、皆さん席について、魔法の授業を行いますよ。各自、これから魔法の授業を行いますが、そのために必要な道具を渡しますね」


 魔法の授業を担当する教師、クジャーラ先生。

 腰の曲がった優しげなお婆さん…見た目がまさに森の奥で鍋をかき回していそうな魔女っぽいが、雰囲気的には優しい人のような気がする。


 そんな教師が生徒たちに配ったのは…何やらキラキラとした宝石が先端に付いた、大きな杖だった。


「先生、これは何でしょうか?」

「これは、特殊加工が施された、初心者用の杖よ。人は、この杖を使って魔法を使うの」


 どのようなものなのか、まずは説明から始まった。



 魔法、それは火をおこしたり水を出したりと、様々な事象を引き起こせるもの。

 その事象を引き起こすには、人の体内にある魔力と呼ばれる力を消費して発生させるらしいが、人だけではできない。

 その魔力をどうにかして外に排出して、ある程度の方向性を持たせて…ようやく、魔法が発現し、必要な事象を引き起こせるのである。


 その手段として使われるのが、魔法の杖。

 正確に言えば、モンスターの魔石を埋め込んだ特殊な魔道具の一種で、この杖を媒体にして魔力を引き出し、魔法を使えるようにするようだ。


「魔石か…先生、この魔石は何が使用されてますか?」

「今回の教材に使用している杖には、ゴブリンの魔石が使われているのよ。何でも先日、大量に入ってきたのがようやく加工が済んで、回ってきたらしいそうよ」


 使用する魔石自体はどのようなモンスターでも良いようだが、使用する魔法の種類や扱う人によって相性が存在し、魔法に影響が出るらしい。

 ただ、元から魔法が使えるモンスターが含まれる種族の魔石であればそれなりの人が使いこなしやすく、ゴブリンの場合はソーサラー、メイジ、キャスター等の魔法を扱える種類が存在しているため、幅広く対応しやすく初心者に扱いやすいものとして例の中に入っているらしい。


 名称が似ているが、細かい違いはあるらしいが…そこはまぁ、今は気にしないでおこう。


「ある程度加工して、この杖の形に収めて使用することになるわ。これを媒体にして、人は魔法を扱えるようになるのよ。けれども、回数制限があるから注意して頂戴。魔法を使えば使うほど、魔石は色を失って、最終的には砕けるわ」


 魔法を使えるモンスターもいるが、あれらは自身の体内にある魔石を媒体にして魔法を発生させており、加工させたものとは異なり、生きたまま使うからこそ自然に回復し、生きている限りは何度も使用できるが、杖にしたものは制限があるらしい。


 人間では有限の回数になってしまうのが困りものだが、授業で使うようなものは手に入りやすい種類のモンスターの魔石になるため、そこまで問題ではない。

 本格的な宮廷魔術師などは、物凄い魔石を使った杖を持つらしいが…相性の問題で宝の持ち腐れになる場合もあるため、それはそれで注意が必要だという。





 それはそれとして、今は魔法の授業に意識を向ける。

 杖があれば後は魔法を扱うのは簡単で、どういうものを扱いたいのかというのをイメージすれば、自然とその形で魔法を出せるようだ。


「けれども、先ほど言った相性や想像力などが影響するから、ド派手なものはやらないほうが良いわよ。最初は単純に、物凄く小さなものとして…水の球を、作ってみるといいわ」


 ファイヤボール等がこういう魔法の授業で定番の様な思いもあるが、流石に火を扱うのは危険だということで、使ったこともない初心者は水球を使うことが進められているらしい。

 

 安全性から言えばこれが一番高いようで、イメージもつかみやすく…



ポンッ!


…あったけれども、実際にやるには難しいようであった。


「先生、すみません。はじけました」

「あらあら、力の入れ過ぎね。いったん肩の力を抜いて、深く深呼吸したほうが良いわ」

 

 ううむ、魔法ってこう楽に出せそうなイメージもなかったわけではないが、世の中そんなに甘くはなかったか…

 

魔法、奥が深そうだけど難しそう

取得できたら便利そうだけど、それ以外のものもやれたほうが良いだろうか

そう思いつつ、ハクロとカトレアに話す内容も考え…

次回に続く!!


…最初からうまくいくことは、そんなにない。

経験を積み重ねることで、次第に見えてくることもある…

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