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log-002 アラクネの少女

…さて、どうにかこうにか服を着てもらったところで、この状況をどうするかが問題である。

 

 周囲には、哀れな獲物を狩るはずが、逆に命を失う結果になってしまったゴブリンたちの死骸。


 そしてもう一つは…



しゅるしゅるるるぅ…ぽふん

【良し、これで問題ないよね?】

「問題ないし、結構似合うよ」


 糸で器用に作り上げ、即席のワンピースを着こなして問いかけてくる彼女…上半身は少女だけれども、下半身は蜘蛛の体があるモンスターに対して、そう答える。


 流石に素っ裸のままでは見づらかったが、こうやって衣服を着てくれたことで多少は色々なものが収まってくれただろう。




 ひとまず落ち着いたようだし、どうやらゴブリンたちとは異なって、彼女のほうは敵意も無いどころか助けてくれたので、ある程度の意思疎通が可能そうなので話しかけることにした。



「えっと…まずは、助けてくれてありがとう。ゴブリンたちに、もう少しでやられるところだったよ」

【危ないところだったもんね。首がある相手だったからよかったけど、流石に実体のないモンスターとかだったら助けられなかったもの】


 本当に、良かったと思う。

 実体のない相手、ゴーストのような類に襲われたくもないが、今回は実体がある相手だったからこそ、彼女の救いの手が間に合ってくれたたようだ。


「それで、助けてくれてなんだけども…君は、誰なの?」

【私?えっと、どういえばいいのか…うーん、朝露大好き、運命の(つがい)を探すために、お母さんのもとから旅立って、相当時間をかけた、人間でいえばモンスターだよ!!】

「モンスターなのはわかっているって」


 ツッコミどころがある話なのはさておき、どうやら彼女の種族的なものとかはわからない模様。

 モンスターであるという自覚はしっかりと持っているようだが、個としてのものはどういうものなのか理解していないらしい。


 要は名前のないただの一般モンスター…ゴブリンたちを瞬殺した実力を見るとそう言って良いのかはわからないが、とりあえず分かった情報から察するに、その番とやら探すために旅をしていたモンスターのようだ。


「運命の番って?」

【人間にもあると聞くけど、運命の出会いって言うんだっけ?そういう相手が、この世界のどこかにいるって感覚が、何故かあって…その相手を探すために、旅をしていたの。そして今、見つけたの!!】


 そう言いながら彼女は駆け寄り、抱きしめてきた。


ぎゅう!!

【私、何となくわかった!!あなたから、運命の糸を感じるもの!!私の運命の番、ここにいたんだ!!】

「えっ!?」


 モンスター同士で相手を見つけるものかと思っていたが…どうやらそうでもなかったらしい。

 いやいや、自分は人間でまだ幼いし、そんなことを言われても戸惑うしかないだろう。



【山を貫き、谷を埋めて、川を干上がらせて、ようやく出会えた!!わーい!!】

「ちょっと待って待って、いや、その他に何か色々しでかしている気がするんだけど!?」


 喜ぶ声を上げる彼女に対して、そうツッコミを入れざるを得ない。

 さらっとやばいことを自白しているのだが…この世界ならではの比喩的なものだと思いたい。





 とにもかくにも再度落ち着いてもらう。

 抱きしめられたままだと、衣服越しでもわかる双丘の感触にドキドキしてこちらが落ち着かないのもあるため、降ろしてもらった。


【ふふふ、運命の相手、ついに見つけた!!私の旅、これで完了!!お母さんに良い報告が、報告が…あ】

「…どうしたの?」

【…えっと、私のお母さんの場所、どこだっけ】

「そんなこと、出会ったばかりの自分が知るわけもないってば!!」


 目的を果たしたのは良いのだが、その後を考えていなかったのだろうか、この天然蜘蛛モンスターな彼女は。

 ゴブリンを倒した実力は持っていても、どこか抜けているようであった。



「この様子だと、お母さんとやらも同じような…下手すると、旅立ったこともわかっていなかったりして」

【そんなこと、無い…と、言い切れないかも。お母さん、たまにうっかりで私たち食べるからね】

「うっかりで子供を捕食する親って大丈夫なの!?」

【大丈夫大丈夫、もう兄弟姉妹慣れちゃって、お母さんに喰われても出られるように、専用の出入り口作ったからね】


…本当にこの子のお母さんはどういう人、いや、モンスターなんだろうか。

 見た目こそアラクネというモンスターだからと言って、親も同じ姿とは限らないが…怖いなぁ。


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