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log-023 魔の者

…悪魔。それはこの世界において、モンスターとは異なる存在とされている、別次元の生き物。

 様々な宗教が存在しているらしいが、そのどれもにおいても存在してはいけないものだということになっており、国によっては呼び出しただけでも一族郎党処刑とされているところもある。


 そんな危険極まりなさすぎるものが、なぜこのボボン村に出現してきたというのだろうか。



 考え込んでいる間にも、悪魔はその姿を現す。

 ヤギのような頭をした異形の怪物と言うべきような姿だ。


『--ンメェェ…何故だ、何故だ、今宵時が来たというのに…何故、おらぬ』


 と、何やらきょろきょろと周囲を見渡し、声とも違うようなものが直接心に響いてくる。


『そこに獣が3つ、人が2つ…だが、どれもこの村の者ではない。贄になる者たちがなぜここにおらぬのだ!!』


 僕らの姿は視認できたようだが、何か目的があるようだ。

 話の中身を見る限り、ボボン村の村人たちを狙っていたのだろうか。



【…ヤツ、センセンダイトノケイヤクデ、コノムラビトネラウ。ハナレサセタガ…】

『おらぬおらぬおらぬ…いや、おるな、ここから離れた場所に、感じ取れるぞ!!そこに、贄共を隠したつもりか!!』

【ヤハリ、ゴマカシキレヌカ】


 歓喜の声を上げる悪魔に対して、はぁっと深い溜息を吐くトレント。

 村人失踪の原因はこのモンスターなのだろうが、あの悪魔から隠すために何かしていたのだろうか。


 そもそも、あの悪魔は一体何が原因で現れたのか、聞きたいことは色々とある。


 だがしかし、どうやら聞き出す時間はなさそうだ。



【イカセヌヨ、ワガトモトノヤクソクニオイテ、キサマハゼッタイニイカセヌ!!】


 村人のいる方角をかぎつけ、移動しようとした悪魔に向かってトレントが動き出す。

 巨体を揺らしたかと思えば、その根っこから大量の蔓が飛び出し、悪魔に向かって巻き付く。


『むっ!!』


 ぎしぃっと一気に巻き付け、動きを封じるトレント。

 これで決まればよかったが、そう簡単にはいかない。



ジュワァァァ!!

【ウグッツ・・・!!クサラサレルカ】

『ははは、どうやら貴様たちが原因のようだな!!村人の居場所は勘でも分かるが、吐かせた方が早そうだ!!』


 蔓を瞬時に腐らせ、拘束は意味を無くした。

 それどころか悪魔は僕らに向きなおり、完全に敵としてみなしたらしい。


 いや、村人失踪はこのトレントが原因で、僕らは思いっきり部外者なのだが…話を聞いてくれそうにもない。



「タゴサック!!奴が来るぞ!!」

「ハクロ、悪魔が来るよ!!」

【グマグマァ!!】

【相性が悪そうですが…ジャックに指一本、触れさせません!!】


 悪魔はすぐに地面を砕く勢いで蹴り上げ、僕らに向かって突っ込んでくる。


 その前に、タゴサックが立ちはだかり、悪魔を真正面から向かえう、


『相手にもならぬ獣はぶっとべ!!』

バシィィィィィン!!

【グッマァァァ!?】

「タゴサァァァック!?」


 タゴサックが跳ね飛ばされ、ガンゴードさんが悲鳴を上げる中、無視して悪魔はこちらに向かってくる。


『他、障害にも値しないが、どうやら別貴様だけがこの中で別格と見たぞ、蜘蛛女!!』

【っ!!】


 瞬時に糸を編み上げ、ハクロはその手に大鎌のようなものを作り上げ、悪魔の攻撃を受け止める。



ドォォォォン!!ジュウウウウウウ!!

【やはり、相性最悪ですね!!どういう悪魔かはわからないですけれども、腐食を権現に持つ類ですか!!】


 悪魔の攻撃を受けた鎌が腐食し、折れつつもハクロはすぐにバックステップで距離を取る。


 出てきた様子や先ほどの攻撃などから、あの悪魔は全身に強い腐食の力をもつらしい。

 糸も蔓も拘束する手段としては優れているが、それらを腐らせてしまうようだ。



【ヌグッツ、マダコッチガオワッテナイゾ!!】


 トレントが咆哮を上げ、バサバサと幹を揺らして何かを落とす。

 見ればリンゴのような木の実だったが…落ちている途中でぼんっと音を立て、まっすぐに悪魔に向かって飛び始めた。


ボボボボン!!ビッシャァァァ!!

『むっ、なんだこれは、果汁か?』


 そのまま悪魔の真上にいったかと思えば爆発し、何か液体をぶっかける。


ジュウウウウウウウウウウウ!!

『むぉっ!!こ、これは…!!』

「何だ?」


 ただの果汁であれば、何も意味をなさなかったはず。

 だがしかし、そんなものではなかったようで、悪魔の体から煙が立ち上り始めた。


『生意気な、我が腐食の力に劣ると言え、同種の毒か!!』


 毒リンゴというべきだったか、猛毒だったらしい。

 腐食の力を持っていた悪魔だったが、毒への耐性というのはそこまででもなかったようで、腐らせる類の毒を浴びせられたらしい。


『だが、この濃度、貴様自身の内側も同様に腐らせるものと見た!!この時のためだけに用意したようだが、甘かったな!!』

【グッ…!!】


 悪魔の言葉が図星だったのか、唸り声をあげるトレント。

 今の木の実は悪魔に向けて用意していたものだったらしいが、多くは持っていなかったようだ。



…だが、悪魔の腐食の力が恐るべきものだったとはいえ、毒が効いたというその情報は大きかった。

 

【毒ですか…なら、これでどうですか!!】


 ハクロが腐食した鎌を捨て、指先を悪魔に向ける。


バシュ!!

『ぬうっ!?』


 何かが飛び出したかと思えば、悪魔に着弾した。


『こっちも毒か!!』

【正解です!私、爪に切り替えできる毒があるので、それを飛ばしました!!】


 そういえば出会った当初に、毒を一応持っているとか言っていたような…そうか、それ飛ばせたのか。


【残念ながら、腐食するような毒の類ではないのですが…】

『確かに溶けはしないが…ぐ、ぐがががっつ!?』


 突然、悪魔が胸元を抑え、酷く苦しみ始めた。


【…私の毒は、そんなに強いものではなく、普通に使ってもちょっと痺れる程度です】

『ぐぐぐげご、ななら、なぜこの…ごげっぶ!!』

【全部の爪の毒を一つに集中させ、ある一つの爪に仕込んでおいた薬と混ぜることで…その効果は変化します。村で子供たちに教える傍ら、薬草学の本を読んでより知識を使って…その毒は】

『おごごげげぼぼぼぼっつ!!』

【何種類か、村に襲撃してくる獣で試しましたが…毒が回ったから獲物として出せなくなったのではなく…】

『くけぇぇぇぇぇ!?』



ボォォォォォォォォォォン!!

【…何をどう間違えちゃったのか、心臓を大爆発させる毒になりました】

「いや、本当にどういうこと!?」

「悪魔が爆発したぁぁぁ!!」

【グマァァァ!?】

【--トカスヨリ、グロクナイカ?】


 まさかの、悪魔の大爆発。

 どうやら毒としての効果が従来よりも強力になったということのようだが、なにをどうまわりまわって爆発ということになるのだろうか。


 あまりの惨状に思わず全員があっけにとられていたが…それでも、悪魔はまだしぶとかったようだ。


『おごご、おのれおのれおのれ…!!』


 もくもくと上がっていた土煙が晴れると、そこには肉塊しかなかった。

 しかし、口もないのに悪魔の言葉が伝わってきており、まだ息の根があることが分かるだろう。


『おのれ、蜘蛛女、だが、この程度でこの‥‥!!』



『---いい加減にしろ、■■■。見ていたが、盛大に無様な敗北をしただろ』

「「【【【!?】】】」」



 肉塊が諦めずに蠢こうとしたその時、何者かの声が響き渡った。

 その声の場所を見れば、あの悪魔が出てきた門からであり…その奥に、赤い瞳が浮かび上がっていた。


『あ、あ、あは…な、何故、貴方様のようなかたが、ここに…』

『…単なる偶然だ。一介の悪魔が、契約を実行するために、ここに出ると聞いてな。大方、ずさんな契約を履行し、人の魂を得ようとしたのだろうが…ずさん過ぎて、自身も気が付かない間に色々とやられているとは、どれほどの愚か者だ』


 悪魔の声が怯えるように出つつ、門の中の目の存在は声を出す。


『流石に、爆発させるような毒を持つアラクネは想定外すぎるのは同情するがな…』


 その眼はハクロに向けられ、どこか物凄く呆れたような声も出した。

 あの悪魔が出てきた門な以上、あの目の存在も同様の悪魔…いや、今回のものよりもさらに上の何者かだということが推測できるだろう。

 そんな存在でも、ハクロの毒は意外過ぎたのかもしれない。


『…何にせよ、そのまま続けられまい。悪魔の契約は、信用が第一で、徹底的に相手を調べ上げる必要があるというのに、それをしなかったお前が悪い。よってこれは■■■、お前の有責で破棄となり…戻ってきて、上からありがたい説教でも喰らうんだな』

『ま、まってほしい。まだやれ、』

『問答無用』

『ぎゃあああああ!!』


 悪魔が願う前に、門の中から影のような手が伸び、肉片を握りつぶすように持って、全てを回収していった。


 後に残っていたのは門だけだったが…それももう、存在が薄くなり、扉が閉じようとしていた。


『…さて、後始末はそちらに任せるとしよう。この大馬鹿者がやらかしたとはいえ、契約者はそちらに…いや、当の昔の人物か。その負債の整理は、今の者になるのは同情するが…二度と、会うようなことが無いことを、願うとしよう』


 そう聞こえ、バタンと扉が閉じ、次の瞬間には消え失せていた。

 どうやらこれで、悪魔は無事に去ったようであった…


「…えっと、とりあえず、助かったということで良いのかな?」

【多分、そうですね。…正直、あの何者かが分からない、赤い目の人が悪魔の味方をしなくてよかったと思いますよ。アレ…絶対に、今の私では、勝てないですからね】















…扉が閉じ、あの世界とのつながりも切れた。

『お願いしますお願いします!!どうにか、お取次ぎを、再度あの村の贄を!!』

『黙れ、■■■』


 うるさい肉片を凍結させ、包装し、しかるべき場所へ向けて運び出す。

 腐食を持つ類が表に出ると、色々と後始末が面倒になるところだったので、こうやって早期に片が付いたのは、助かったと言えるだろう。


 そう思い、あの爆発で幾分か楽になったのだと、赤い目の悪魔は思う。


『それにしても、まさかつながっていた先が…アレとは、奇妙な縁でもあるのか、それとも単なる偶然か…いや、あるいは呪いの類か。なんにせよ、二度と会うことが無ければいい、それだけの話だ』


…召喚されるようなことさえなければ、交わることが無い道。

 気にしなくてもい、偶然の出来事だろう。


 気持ちを切り替え、肉片をしかるべき機関へ引き渡すために、歩みを速める。

 これは本当に、ただの偶然だったのかは…神のみぞ、しるだろう…


悪魔は去った

その字面だけならば、全て片付いたと思いたい

でも、去ったところで現実は、その他色々な問題が…まず、何故出てきたのか…

次回に続く!!


…なお、この毒。調整すれば薬にもなる模様

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