log-182 まずはぶちゅっと
―――最後の水の大剣の一撃。
これで勝負が決まり、晴れて決闘に勝利した…はずだった。
「…がっ」
しかし今、ジャックが切りつけたはずの相手はおらず、剣は盛大に空振りし、姿勢を崩させられた。
「どこだ、ここ?」
目の前にいたはずの相手が消え、聞こえていたはずの決闘の場の声も失われ、いつの間にかいる場所が変わっていた。
まるで、何者かに別の場所へ転移させられられたような感覚。
周囲を見れば開けていた決闘場ではなく、ごつごつとしたどこかの洞窟内…
「違う、岩とかじゃなくて…肉?いや、内臓的な…うぇ‥」
よく見れば、ばくんばくんっと脈を打っており、蠢く生物的な壁や床になっている。
ゲームでちょっとトラウマになるような、生物の内臓ステージと言ったような造形になっており、足元から脈動が伝わってくる感覚が酷く気持ち悪い。
一体ここはどこなのか、何かに捕食されているような状態なのか、すぐには理解できない。
けれども確実に断言できるとすれば、何者かにこの場所へ連れてこさせられたということだ。
悪魔の手のものかもしれないが、すぐに周囲に何かの気配を感じ取れるわけではない。
むしろ、生きた血肉のような壁や床のせいでわかりづらい。
「とりあえず…探るしかないか」
一番手っ取り早いのは、この壁をぶち抜いて突破するようなごり押しなのだろうが、あいにくながら先ほどまで決闘していたことで体力も魔力も少なく、無茶はできない状態。
ハクロ達もいないのでその力を借りることもできないが…それでも、素っ裸で連れ去られたわけではなく、ローブの中に仕込んである道具で何とかできないか模索することにした。
「とりあえず、何かの胃の中だったりして溶かされる可能性も無きにしも非ずだから…その備えをしておかないとね」
酸攻撃に備えての中和剤、毒ガス対策のマスクにゴーグル…身軽に戦うために重いものが仕込めないので軽いものに限られるが、対策して損は無し。
まぁ、本当のことを言えば毒を入れた糸玉や、花粉症の症状を引き起こす花粉団子なども用意していたようで、使用時に支障が無いように用意していたというのはあるが…流石に決闘の場で、それをやらかしたら絵面が酷くなるため、秘匿していたりする。
一応、手元に残していたりするが…いざという時には、これを全力投球するときが来るかもしれない。
来ないほうが絶対いい。
ひとまずは、疲れた体を把握して動きを抑えつつ、じっとしていたらそれはそれで不味そうな気配もするため、警戒しながらジャックは動くのであった…
「…でも、ここの光景だけでも相当精神にダメージが来るよぉ…」
…無事に帰還出来たら、絶対にハクロ達に慰めてもらおう。
そのためにも、絶対に帰らないと…
妙な場所へ一人、来てしまったジャック
ゲームのならばともかく、リアルでは絶対に見たくない光景
がりがりと何かが削れていそうな中、先へ進むが…
次回に続く!!
…なお、当初の予定では実はここでもう一つあったけど…ちょっとネット障害でね…




