log-閑話 私たちができること
―――深夜、誰も彼もが寝静まっている中、その一室には薄明かりが付いていた。
そこで眠る、大事な少年を起こさないように、彼女たちだからこそ十分知覚できる程度に抑えつつ、さらには秘匿すべき内容のため、用心して人の声には聞こえない音域で語り合う。
【…では、やはりその方向で来る可能性があると】
【間違いないでしょウ。情報源は色々とありますが…まぁ、予想できてたことではありまス】
【正直言って、そんな馬鹿が出るのかと言いたいが、聖女様に仕えていた時も似たようなのがでたから、人っていつの時代も変わらないのかと呆れるぞ】
夏季休暇ももう間もなく終わり、やってくる新学期。
それからしばらくすれば留学の期限を迎えてエルメリア帝国からグラビティ王国へ戻る時が来るのだが、その前に彼女たちの主であるジャックを取り巻く環境に関して、確認を行っていた。
【ギルドで得られた情報では、悪魔の動きも見えてきましたネ。無力教がほぼ確実に、怠惰に関する悪魔が起こしたものの要であり…アルガンドリア法国は8割、堕ちているかト】
【わぉ、悲惨なの】
各国につながるギルドから得られる情報だからこそ、多種多様な話が舞い込んでくる。
人が集まる場所だからこそ、中には怪しい話も混ざってくるが、他で保管したりして真偽や整合性を確認しておくのだ。
【最近、この帝国の騎士たちとも剣術で交える機会もあるが…ゴゴンドラズといったか?あの面々の国がその状況とは相当不味そうだが、似たような国の状況も聞いたな】
【聖ヴァレス公国は色欲を名乗る悪魔が出て、聖女候補が共に駆け落ちしたとか…時期的には、オレたちが対峙したやつより前らしいけれどな】
【同一悪魔…ではないのかも?前任者とか、そういうの…かな?】
色々と気になる動きはあるが…彼女たちにとって、正直国が一つ二つ、陥落するぐらいなことは良い。
一番警戒すべきなのは、彼女たちの主に対して、どの程度の害になるかと言うことだ、
【木々や草花伝手の話だと…前に宣戦布告があったように、ミーたちへの敵対はやる気なの】
【人々の思考誘導もあちこちでやっている様子だな。単純に、我々の力を目当てにする馬鹿もいるようだが、いるからこそ将来的に邪魔になると思わせ、暗殺する動きもあるようだ】
【目に見えないところから、証拠を残さないようにするためか、呪いでもかけようとしているのもいるっぽいぜ。ただまぁ、その手のは我が君につながらないようにぶっ飛ばしているけどな】
【ふみゅ…正直、聖なる力を扱えるようになった時点で、呪い系はほぼ意味なくなるの…】
悪意ある輩は、密かに動こうとしているだろう。
だが、わかりやすいモノであれば未然に防ぎやすく、やろうと思えば直接潰すこともできる。
けれども問題になるが、わかりにくい方からやってくる者たちだ。
【貴族のほうでいくつかは、好意的な感じに接しておこうという動きもある一方で、主殿を危険視する動きもあるようだな】
【はぁぁぁ…本当に人間の疑う心とかは面倒ですね】
ジャックのほうに、誰かがを害しようとする気や、ハクロ達を利用して世界征服をするなどの邪悪な思想は無いだろう。
それでも人と言うのは、完全に人を信頼するのは難しいもので、中には悪い方向へ疑いをかけ、次第にそれを積もらせていくことがあるのだ。
その結果として、じわりじわりと悪意が周囲へ伝播し、より邪悪な物へ変わっていく。
【…いっそ、私たち以外は必要ないので、全部滅ぼすという手も…】
【それは流石に駄目だと思うぜ…と言いたいけど、その案もありだよなぁ…】
【二人とも、ものすっごく悪い顔になるからやめたほうが良いのなの】
【その実力がある者が言うと、シャレにならんぞ】
【ふみゅっ…本気じゃないにしても、やったらだめだよ?】
【討伐対象にされたら、お仕えしているマスターもまとめて人々に悪者扱いされますヨ】
【【うっ…】】
…悪意に対してジャックが折れるよりも先に、こっちのほうが悪に染まる可能性はないのかと、彼女たちは密かに思うのであった。
【と言うか、魔法の火力があるルトライトと比較して、ハクロはどうやるのなの?】
【簡単な話と言うか…人間って、脆いですし…】
何をどうするのかは、やり方次第
ド派手な方法でなくとも、手段はある
だからこそ、厄災と言うか…理不尽な力の差と言うべきか…
次回に続く!!
…糸っていろいろできるからね




