log-166 悪の警告
「-----え」
【今、なんと…】
【物凄く、申し上げにくいのですガ…ナモアリ村が、滅亡したそうでス】
…夏季休暇へ向けて村へのお土産として何を持っていくのが良いのか、和気あいあいと談義しようとしていた時、もたらされた訃報。
ギルドからもたらされた情報だというが、その内容にその場の時が止まったように、ジャックたちは感じられた。
「…うそ」
【残念ながら、事実でス】
信じたくはない。
しかし、それは変えようがない事実であり、本当にあったことだ。
【ばかな!!あの村は我々も相当防衛力を上げていたはずだぞ!!】
【我が君の故郷、下手にやられないようにと微力ながらもオレたちの力をちょっとだけ入れ込んでいたが…それでも簡単には落ちないはずだ!!】
【なのなの、がっつり敵対者には容赦ない爆弾花や劇酸人面草などもあったはずなの!!】
何か聞いていないやらかしも聞こえたような気がしなくもないが、今はそんなことはどうでもいい。
大事なのは…
「母さんや父さんは?いや、滅亡したと言っても村が前の竜種騒動みたいに壊れただけで、全員生きて…」
【---残念ながら、村人全員、生存は絶望的だそうです】
『ああ、間違いなくあれは…もう、いないな』
「っ!!」
【リア…いや、その姿は…悪魔ゼリアス】
ファイの言葉に被せるようにして、いつの間にかやってきていたのは悪魔ゼリアス。
いつもの教師としての姿ではなく、悪魔としてのその姿には偽りの表情がない。
【どういうことだ?貴様、既に見てきたようだが】
『ああ、その通りだ。…悪魔が使う、魔界の門。これを使えば相当離れた場所でも瞬時に向かうことが可能だが…それで、見てきたんだ』
悪魔ゼリアス曰く、嫌な予感を感じ取って、すぐに出向いたらしい。
しかし、向かった先…ナモアリ村に到着した時にはすでに何もかも終わっていたようだ。
『酷いありさまだった…凄惨の一言で言い表しきれず、生存者はいないといわんばかりに、全員が食い散らかされていた』
「食い…!?」
『隠蔽した形跡もあったが、それでもわかったよ。その惨事を引き起こしたのは間違いなく…悪魔、それも大罪の…暴食の仕業だ』
推測ではなく、断定。
同じ悪魔だからこそ、どういうものなのか瞬時に理解したのかもしれない。
いや、それよりもその情報は…
「大罪系…色欲や憤怒などとは違う、別の…そいつの仕業か」
『間違いないだろう。正確に言えば、他にも誰かがいたようだが、それでもほぼ暴食だ』
ゼリアスの言葉に、息をのむ一同。
大罪系の悪魔…これまで何度か、様々な物と相対してきたが、未だに出会ったことがないもの。
それが、ジャックの故郷を襲撃したのは単なる偶然とは思うことはできない。
「偶然で済まないどころか…ほぼ確実に、狙ってか…」
何度も対峙し、すでに葬り去ったものもいる。
相手が出てきて敵対してきたからこそ、すぐに潰していたが…今度は、それよりも早くやってきたのだ。
『世の中、勧善懲悪、悪い奴がぶっ飛ばされてそれで終わりとはそうはいかない。潰してそれで済んだことではなく、だからこそ完全に敵対を表明して、犠牲が出ることもある。…悪魔としての立場ゆえに、介入しきれないが…それでも一応、アルミナ隊長の縁もあって一つ、告げておくとしよう』
「何を」
『悪魔の悪意と言うのは、たかが知れているもの。襲撃されて、その復讐に走って潰しに行くというのは別に止めることもない。ただ…問題は、その悪魔の悪意からつられて出てくる人の悪意…それに注意をしろ』
情報を処理しきれず、怒りや悲しみの感情がジャックたちの中で混ざり合う中、そう告げるゼリアス。
大悪魔としてではなく、縁を得た者としてのこの場で出せる一つの警告。
『それにどう立ち向かうかは、結局のところまた人次第であり…お前次第だ。それを忘れるな』
そう言いながら、彼は教師の姿へ戻り、その場を去った。
その言葉に、ジャックはより一層、嫌な予感を覚えるのであった…
【…主殿、色々と複雑な気持ちがあるかもしれないが…あいつのあの言葉、覚えておいたほうが良いぞ】
「え」
【仮にも、あの聖女様に狙われ続けてきたやつだからこそ、狙われる可能性に関してよく理解しているし、なおかつ…人ではないからこそ、人の恐ろしさも理解している…と、何となく、昔の同僚のよしみで感じ取れるがな】
…それは、かつて彼の同僚だったからこそ、理解させられるのだろう。
そして、その言葉の真意に対して、人ならざる彼女たちだからこそ、より深く感じ取る。
これから起こりえるであろう、最悪の可能性を…
‥‥空気が重いが、滅ぼされたのを理解した
復讐しに向かう?それで済めばいい。
しかし、そう事が進まないのは…わかっているのだ。
次回に続く!!
本当にシリアス…ギャグ的な部分入れたいけどタイミングが…




