log-161 綺麗なタップダンスは地獄の踊りに
…自分は大丈夫だろう。
そう考えて、痛い目を見る人は古今東西、どこの時代でもありえることで尽きることはなく、その中でさらに見事に地獄へ向かって華麗なタップダンスを知らない間に踊ってしまう人もいるだろう。
そう、例えば今、帝都へ向かってモンスターを凶暴化させる香りを風に乗せてちょっとばかりそれで苦にいることにできなくなったところをわざとらしく拾ったりしようとする企みをしたばかりに…
「…おい、おい!!どこにいる!!いや、何だ、この状況は…!!」
…分厚い雲に覆われていることで、星々の明かりが届かない闇夜。
それでもまだ多少は火の明かりなどで周囲が見えていたはずだった。
しかし、今はどういうことなのだろうか。
一寸先は闇どころか、何も見えない、叫んでも返答がない…いや、そもそも…動けているのか。
「どういうことだ、本当に何が起こったのだ…なにかがこう、ぷちんと切れた音がしたあの一瞬で何もかもが奪われて…!!」
何かが切れた音、ほんの一瞬だけ響いただけで、全てが失われた。
周囲にいたはずの仲間も何もなく、闇夜からさらに深い深淵へ、気が付けば体の感覚すらも奪われている。
それなのに、確実に何かが一歩ずつ近づいている感覚もある。
コツ、コツ、コツ…
「ひ、ひぃいいいい!!」
間違いなく、殺気を放つ何者かが存在し、距離を詰めてきている。
必死になって逃げようとするも、身体が言うことを聞かず…
【---エエ、無駄でスよ。その肉体ト魂の繋ガりは既に、糸でかロウじてつながっているだけですからね】
「ひぃっ!!」
ぞわっと心の底から凄まじい悪寒を感じさせつつも、姿が見えないながらも分かる美しい女性の声。
しかし、その感情はどこかに置いてきたかのような冷たさを感じさせ、なおかつ悍ましい説明もまた理解できないながらも心でわからされる。
がしっと頭を握りつぶされるような、もっと大事なものを締め上げられるような痛みが走り…
「…ふわぁ…んーっ、何かこう、今悲鳴が聞こえてきたような…?」
【おはよう、主殿…】
「おはよう、ルミ…って、どうしたの、そのクマ。アンデッドなのに、寝不足でもなるの?」
【いや、違う…単純に、血行不全と言うかなんというか…少々昨晩は無茶をしてな】
朝日が入り込み、自然と目が覚めたジャック。
その彼の前にはルミがいたのだが、彼女の顔はどこか疲れ切っていた。
「無茶?何をやったの?」
【んー…まぁ、主殿が知らなくても大丈夫なことだ。本当にアレはな…】
「?」
何を言っているのかはわからないが、隠すほどのことなのだろうか。
変なものでも拾ってきたとかそういうものではないかと思って、周囲を見渡すがいつもの寮の室内なのは変わりはない。
どこかが壊れたとか、変なものが入ってきたとかいう様子もなく…ならば、外の方で何かがあったのだろうか。
「…あれ?そういえばハクロは?」
【ああ、あ奴なら今…】
【ふわぁ…ジャック、おはようございます…んにゅ…】
普段側にいるハクロの姿も見えないので疑問に思うと、上から声がしたが…姿が見えない。
「ハクロ?天井裏にいるの?」
【んん…すみません、ジャック…昨晩ちょっと色々とありまして…少しばかり、お見せできないので今日は一日、ここで過ごします…おやすみ…すぅ…】
何をしでかしたのか、凄い気になるところだが、酷く疲れている様子。
ルミといいハクロと言い、寝ている間に何があったのだろうか。
「それに他の皆も‥何で、でかいたんこぶ作って倒れ伏しているの?」
カトレアにファイ、ルトライトやレイも皆例外なく大きなたんこぶを作って、ベッドの上で倒れていた。
寝息は立てているようだが、本当に昨晩何があったのだろうか。
「…大喧嘩でも…したのかな?うーん…後で、聞いてみるか」
今のままでは皆、丸一日何も聞くことが出来なさそうである。
「何があったのか…なんか変な記憶操作を受けたとかは…ないかな?うん、悪魔とかがこっそり出てきたとかあり得そうな話ではないけど…この面子で?」
昨晩何か騒動を起こしていたのならば、目撃者とかいるはず。
そう思って声をかけてみたが、他の寮の生徒たちの話だと昨晩は何もなく静かな夜だったとか言わず…本当に不思議な話であり、ジャックは首をかしげるのであった…
「…始末書関係はこれで避けられるが、こっちはどうしたものかな…ガチでこういうことになるのは貴重な記録と言うか、人が見たらSAN値直葬と言うべきか…えっと、」
…その裏で、本日有休を取得しつつも、残っている大きなゴミの後始末に悩む教師がいることは知らずに。
どこかの悪魔が一晩でやってくれました
それはともかく、これは放置はできないことなので、
限られた相手へ報告はすぐにされそうだが…
次回に続く!!
…ホラーって難しいね




