log-125 喰らわれたのは哀れなもの
―――その日、朝からエルメリア帝国の学園内は騒ぎになっていた。
「生徒たちが行方不明になっただって！？」
「どうも全員忽然と姿を消したらしい！！」
「馬鹿をしでかして退学して出ていく場合もあるけど、こんな勝手になることはないぞ！！」
あっちこっちで教師たちや生徒たちが行きかい、情報が錯綜し、混沌とする。
何事かと情報を整理してみると、どうやら一部の生徒たちが行方不明になったようなのだ。
ただの行方不明であれば、まだやりようはある。
エルメリアて帝国の帝都の構造上、どこかの壁で留まる可能性もあり、人々の目撃情報が０にはならない。
だがしかし、どうも単純に学園から姿を消したわけではないようで…
【…なるほどな。これは…魔法陣か。しかも、悪魔を呼ぶ類の】
【そりゃ、悪魔なんてものを呼んだかもしれない形跡が見つかったら、ただ事ではない可能性しかなくて、相当な騒ぎになるわけですネ】
「ええ、そうですわ。それで、悪魔と交戦したことがあると聞くあなた方に見てもらって、判断を仰ぎたかったのですわ」
学園内のとある一室にて、床に描かれた魔法陣を見て分析しているルミとファイの二人の言葉に対して、ミラージュはそう口にする。
単純な行方不明ならばいざ知らず、ここの惨状を見れば確かにただ事ではないと判断できるだろう。
何故ならば、何かしらの魔法陣が敷かれていると同時に、室内は惨劇があったかのように赤い肉塊や何かの液体が飛び散った状態になっていたのだから。
そのため、かなりの厳戒態勢が直ぐに敷かれ…悪魔が関わっているのならば万が一に備えての対策と対峙したからこその経験から何か得られるものが無いかと思い、彼女たちを呼んだのだ。
【我が君への安全性も考慮して、この場にはオレとルミとファイで来たけれども…これは、連れてこなくて正解だったかもな。相当きついだろうぜ】
室内の惨劇を見て、顔をしかめながら告げるルトライト。
他の面子は警戒のためにジャックのもとに集まっており、この場には彼女たちだけしかいないが…それでも大事な人がこの精神的にきつい光景を見なくて済んだと心で想う。
【だが…数が合わねぇな】
「数？何かわかるのかしら」
【ああ、魔法陣の内容はたぶん、常人じゃわからねぇが…こりゃ、オレたちモンスターが扱う圧縮言語…それを使ったもののようだぜ】
【あたしたちの鳴き声、文字にするとこうなるようですネ】
【あー…我一応、元人間でもあるため理解しきれていなかったが…うむ、確かにそのようだな。意識すれば、読めないこともない…悪筆過ぎるが】
既に読み解いている内容は、魔法陣の見かけ以上に複雑でかなりの長文になっているらしい。
だがしかし、中身が相当悪筆レベルと言って良いほどの最悪な物にもなっているようで、読むのにも苦労するようだ。
【それでも、読み解けた内容を大雑把にほどけば…妙な仕掛けの魔法陣のようだぜ】
かくかくしかじかと説明をすると、どうもこれは確かに悪魔を呼び出す魔法陣のようだが、単純に呼び出すものではない。
【何かの形に無理やり当てはめる…それである程度の指定をした悪魔に変質させて、その性能を向上させるようだ】
【ねじ込み、贄の血肉からガワを作り上げて…それでいて、悪魔の強化も行っているようでス】
「悪魔の強化を！？」
【だが、強化の方向性と悪魔の性質が違えば、中途半端な実力に…もしも相性が良ければとんでもなく強化されるようだな…恐ろしいぜ】
読み解いていくと、恐ろしい内容が次から次へと飛び出してくる。
しかし、こんなものが一介の学生たちに用意できるものではない。
【外部から、誰かが入れ知恵でもしたか…そのうえこれは既に、召喚された後のようで、恐らくはもう…】
悪魔を召喚して、ただで済むわけがない。
それはこの惨状を見るだけでもわかり切っていることだが、探してもおそらくは無駄だろう。
もうすでに、贄として利用されてこの世からいなくなっているか…あるいは…その血肉が利用され、ここに散らばっているのは余った分だけと言うべきか。
とにもかくにも、召喚の形跡が認められた上に、既に悪魔がいるかもしれないこの現状。
帝国内の警備レベルが一気に引き上げられていくのであった…
【それにしてもこの内容、悪魔を無理やりはめ込む型枠が…色欲と書いているな】
【色欲…何を呼び出したのか、その悪魔がきちんと当てはまったのか興味がわきますネ】
【興味が湧いたら駄目だぜ、ファイお姉ちゃん…あ、でもこの式はちょっと利用できそうか…？】
「利用しないほうが良いですわよ」
…呼び出された模様
ただし、それはどこへ向かったのか
気になりつつ警戒しつつ…
次回に続く！！
…気が付けば年末。昔は毎日投稿していたけど、今はこうやって時々書けない日も出てくるなぁ…
