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log-119 見て学べるのならば、まだいいのだが

―――エルメリア帝国の中にある、エルメリア学園。


 帝国で様々な優秀なものを産みだしている、各国にいくつか存在する教育機関の一つだが、グラビティ王国と異なる点が一つ、存在している。



 それは、グラビティ王国は大闘争会のような行事も含めて時々交流する程度ではあるが、貴族と平民の身分で学園を分けているのに対して、この帝国では身分に関係なくまとめて扱われていることだろう。


 しかし、単純に身分の違う者同士のごった煮になるようなことはせずに、暗黙の了解での身分の敬いはあること以外にも、しっかりと実力によってクラスが定められている。


 もちろん、単純に学業での成績以外にもマナーや他者とのコミュニケーション、定期的な細かいテストも含めた評価が加わるために一概に頭が良いだけでは上に上り詰めることはなく、しっかりと自己研鑽できるような施設も多く併設されており、誰も彼もが自己研鑽して自身の価値を高めているのだ。




 そんな中で、この学園に通う貴族の中でも最上位…エルメリア帝国の第3皇女であるミラージュは、メイドのアンナを引き連れて廊下を歩いていた。



「ふふふ…どうやら久しぶりに、彼と出会えそうですわね」

「ええ、聞いた話によれば留学しにやってきたとのことです。まぁ、初日は学園案内として、生徒会長が自ら留学生たちを案内するため、すぐに出会えるということはないですが、どこかで姿を見ることはあるでしょう」


 楽しそうな声でそう口にするミラージュに対して、アンナも微笑みながら答える。


 彼女たちは数年前の一件でジャックと出会ったことがあり、その時はそこまで深くは身分を明かさなかったが…その後の情報もしっかりと追っていた。


 当時はデュラハンまでは確認できていたが、その後に入ったのはスライムにオーガ…しかし、そのどれもが実力が桁外れのモンスターだということも聞いている。



「それだけ集めれば、注目があるのも間違いないですわね…」

「どれほどの運があれば、こうなるのでしょうかね」


 色々とツッコミどころがありそうだが、戦力だけを見れば一国を相手にしても勝利が可能…いや、厄災種がいるとのことなので、いくつでも可能だろう。


 今回、そんな彼が留学してきたのは、それなりに成績が優秀と言うのもあるらしいが…どう考えても、国の何かしらの思惑が働いている可能性も否定できない。


「それでも、何事もない方が一番良いのですけれども…」


 考え事をしつつ、相当な馬鹿が出なければいい。

 そう思っていた、その時だった。


「おやおや、ミラージュ様ではないですか」

「…アラモンドですか」


 前からやってきたのは、同じクラスメイトの伯爵家の子息の一人、アラモンド。

 これでも一応成績は良い方ではある男だが、どことなくわかめのようなぬるっとした感じの雰囲気をもっており少し苦手な相手。


 それでも表情を変えず、相手にしておく。


「何か用でもあるのかしら?わたくしたちはそこまで暇はないのですけれども」

「いえ、何かこう、今期の留学生に関しての話題が聞こえましてね。この帝国にとって、どれだけ有用なのか、その情報を狙っているようでしたので、たまたま仕入れた情報がありましたので、お届けしようかと思ったのでございますよ」


 わざとらしい素振りだが、どうやら皇族相手に情報を売って縁をつなごうとしている様子。


 浅はかな想いが透けて見えるが、一応聞いておく。


「どのようなものなのかしら」

「へい、少しだけその姿を見たのですが…アレはやばいかと」


「…あら?誰がかしら?」

「留学生たちの中で、従魔を連れている者がいるという話がありましたが、その人物だと思われます。彼が引き連れている美女のようなモンスターたち…美しさには驚かされましたが、秘めたる実力はそうとうなものかと…姿を見かけた、他の生徒たちも同じような感想を抱いたようです」


 生徒たちは自己研鑽を積み重ねるが、真面目にやっているものほど相手の力量を感じやすいモノ。

 留学生がどの程度の実力を持っているのか、気になり様子を見に行ったものが多かったようだが、人よりもその周囲にいたモンスターのほうに目を惹かれるものが多かったようだ。



「…案外、まともな感性を持っているのが不思議ですわね」


 正しく、彼の周囲の危険性を理解しているものがいるのは良いことなのだろう。

 うかつにやらかさずに、注意深く見て相手を理解できるだけの感性が育っているのならば、そのままやらかさないでほしいところ。


 だがしかし、そうではない者…真面目ではなく、今にもこの実力主義な学園から叩き落とされそうなものがいた場合は、やらかす可能性があるだろう。


 やったところで、トドメを刺すようなことにはなるだろうが…そういうものがいないことを願うばかりだ。


「ふふふ、でも刺激としては良かったですわね」


 いかんせん、学びの場所と言うのはどれほど広げたとしても、その場所で得られるものは限りがあり、全てが手に入るわけではない。

 

 だからこそ、留学生を用いた外からの刺激も期待したいところだったが、どうやらそれが思った以上の刺激にもなった様子。


 これからここで再会する前に、他の人たちの反応も見て楽しめることから、ミラージュは少し心で喜ぶのであった…



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