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log-106 言葉は腹の底から

ようやくコミュニケーションの第一歩

しかし同時に面倒事も発覚

上の方が確実に悩む中…

次回に続く!!



…連続で狙われているようなこの感じ、呪われているとも言いたくなる

【ウガッ…ウガッガッツ、ウウウー!】

【…良し、しっかり言えてますね。お腹の底からの、声出し成功です!】

【ウガー♪】


 ハクロによしよしと頭をなでられて嬉しそうにしているオーガの子。

 声帯部分の再生は未だに遅いようだが、その前に喉をできるだけ使わずに行う会話方法として、腹話術を練習し、見事に取得したようだ。


「でも、人の言語には聞こえないな」

【一応、モンスター用の圧縮言語版腹話術ですからネ。パペットロベッドというモンスターが行う方法を今回、利用したのでス】


―――

『パペットロベッド』

友好的なモンスターの一種で、基本的に両腕に人形をはめた真っ黒な人形のモンスター。

物凄く平和な国にしか出現せず、人の前に姿を現しては人形劇を見せて笑わせ、そのエネルギーを糧にして生きているとされている。

戦闘能力は皆無に等しいとされているが、話術が巧みであり、交渉時にいたらほぼ確実に敗北を覚悟しなければならないとも言われている。

―――


 姿を見せることはほとんどなく、時たま人前に出ては笑いを得るために動くモンスターらしいが、その腹話術の方法が記録されたことがあるらしく、その方法を用いてオーガの子に仮でも良いので話せるようにしたのだ。




【ミーたちの、本来のモンスターとしての言語のほうが、話すのが楽だったりするのなの。人の言葉に直すのはそれなりに頭を使ったりするから、こっちのほうが楽だと思ったのなの】

「そうなのか…日常的に会話がしやすいから、人に伝わる言葉で言ってくれるのは助かるよ」

【まぁ、楽な方が覚えやすくもあるからな。我の場合は、元人間でもあるが…確かに、モンスターとしての圧縮言語のほうが楽だろう。単純な言葉で多く伝えられるとなると、説明をものすごく省けるのが利点だろう】


 うんうんとうなずきながらカトレアとルミも話しつつ、今はこれでようやくオーガの子とより深くコミュニケーションが取れるようになった。


 なので、どうして彼女があの状態になっていたのか、気になっていたが…ようやくこれで、伝えてくれる。


【それじゃ、その状態でわかる範囲で良いから説明してみてください】

【ウガ。ウガガッ、ウガ、ウーウーガ】

【【【【…あー…それはまた…うん…】】】】


「え、どうしたの皆?何を説明されたの?」


 ようやくまともに伝わるのがうれしいのか、嬉々として発したオーガの娘。

 しかし、その説明をまともに聞いて理解したらしいハクロ達は複雑そうな表情を浮かべた。


【えっと、ジャックにわかりやすく伝えるとして…そうですね、グロい部分とか大幅カットしてお伝えしますね】

【元気になっているのは良いけれども、生々しすぎる説明が多かったのなの】

【まさに目で見て感じ取った言葉をそのまま伝えて…圧縮で長い話をかなり削減して伝わるが、ド直球なこれは…きっついぞ】

【良かったですね、マスター。モンスター言語をよく理解できてなくテ。‥‥本当に、よかったのでス】

「いったいどういう説明をされたの!?」


 何やら生々しいような、まだ幼げな子供からは出してはいけないような内容が多々あったらしい。


 そのため、大幅に聞いたら駄目そうな部分をカットしてもらい、分かったほうが良い部分だけを説明してもらった。



「…つまり、オーガの群れで平和に暮らしていたところに、突然悪魔の襲撃にあったということか」

【そのようですね。群れ自体は相当な実力を持つものが多かったようですが…敗北し、その長が悪魔に乗っ取られたのもあって、完全に壊滅したようです】

【そのうえ、資金稼ぎとして違法な奴隷商人たちへまともに治療しないひどい状態で、売り払いまくったとか…最悪なの】




 思った以上に外道と言うか、最悪すぎる内容。

 これでもまだやばい部分を抑えているらしく、このオーガの子が実際に見たその場所は凄まじい惨劇の現場になっていたのだろう。


【しかし、その長の肉体に悪魔がのっとって受肉か…これは、厄介だ】

「厄介ってどういうこと?先日の悪魔もそうだけど、普通に誰かに乗っ取って肉体を得ている悪魔は誰もかれもが大迷惑レベルなのは間違いないとは思うよ」

【まぁ、確かにそれも厄介だが…それとはまた違うほうでな】


 むぅっと悩むような表情をするルミに問いかけると、すぐに説明してくれた。


 悪魔は本来、この世界に召喚されたときは仮初の肉体…基本的には何かしらの動物を模したようなものが多いらしい。


 だが、それはあくまでも悪魔にとって人とのコミュニケーション手段として形作っただけのものであり、そこから力をより発揮するのは難しい。


 しかし、手段は色々とあるもので…その中で、生き物に憑りついてこの世界で悪魔は活動するために動く肉体が手に入ると、その脅威度は増すようだ。


【これが並大抵の人間の肉体でも相当力を振るえるが…オーガの肉体を利用したとなれば、その肉体の強さも増してやってくるのだ】

【なるほど…意外と知っているのなの】

【かつて、生前の居場所は悪魔に滅ぼされた神聖国らしいが…だからこそ、悪魔に関する知識も持っていたりするのだ。一部が生前の記憶の無い部分と重なるせいで穴あき部分もあるが、悪魔本人に確認を取った部分もあるから、正確性も一応はあるだろう】


 悪魔そのものに確認したのかよと思ったが、生前のことなのでどういう相手だったかはまだ覚えてない部分の記憶にあるらしい。


【ただ、一つ言えるのは国を滅ぼしたと言われている悪魔とはまた別で…そうだな、もしもまた巡り合う機会があれば、確か殴ると決めていたような…】

「物凄く私怨的なものを感じるのに、忘れてしまったのは駄目じゃない?」


 


 とにもかくにも、話を聞く限りでは現在、オーガの肉体を得た悪魔がいるという情報だ。


 どう考えても百パーセント大問題になるのが目に見えている。


「…これ、報告したとして、上の人たちが相当頭を抱えそうな話だね…」

【ほぼ間違いなく、そうなるだろうと思えル】


 まぁ、厄介事の話で悩んでもらうほうが、こちら側の精神的な負担を軽減できるかもしれないのであった…




【ところで、ジャック。この子に結局、名前を付けないんですか?】

【ウー?】

「んー、そうだなぁ…今なら双方確認しやすしいし、やっておくかな」


…いつまでもオーガの子とだけ言うのは、ちょっと不便なのもある。




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