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log-098 マナ酔い

…大闘争会が悪魔の手による妨害を受けてから数日後。


 悪魔の気配は消え失せ、安全は確保されたようではあったが、それでも起きた被害から様々な部分で人が動き、今年の大闘争会は余儀なく中止となった。


 そのことを残念に思う一方で、あれだけの騒ぎが起きたのだから妥当だと思うもの。

 もっと警備をしっかりしていれば、侵入されることはなかったというもの。

 そもそも生徒たちに対しての教育がもっと行き届いていればよかったなどと言うもの。


 そんな様々な人々の思いが蠢く中でも、しっかりとした対応は行われていく。



「まずは、被害者でもありつつも、子供とは言えある程度の自己判断ができるにも拘らず、悪魔の誘惑に乗ってしまった子供たちだが‥こちらは今のところ、どうなっている?」


 グラビティ王国の王城内、会議室。


 そこでは今、先日の騒動に関しての会議が開かれており、それぞれの現状に関しての確認が行われていた。


「本来であれば、爵位の下降や没収、重い罰金の予定もしておりますが…肉塊と化していた子供たちは今、病院で入院中です」

「筋肉がほぼ失われて、今もなお寝たきりレベルであり、回復の見込みは薄いようです」

「なるほどな…」


 情報を色々と集約したところ、どうやら今回現れた悪魔は筋肉を異常に成長させる薬を使っていたようであり、その薬の効果が失われた今、後遺症がかなり重く出ているようだ。


 空気中のマナとかいうものを利用し、異常成長した分、マナが失われたことで成長が抑えられて減少したようだが…どうも今は全身の筋肉がほぼ失われたらしい。


 生きるために必要な臓器やその他機能は一応正常らしいが、その分まともに動けなくなったのは相当きついだろう。


「また、今回の騒動で悪魔の手によって行動を抑えられていた教師たちのほうも、治療が行われました。皆、幻惑や幻覚、衰弱などの症状が出ておりましたが、完治したとのことです」

「悪魔がどうやって入ったかと言えば、変装していたり、物陰からガスや薬なども使われていたようで…」

「むぅ…警備の不備もあったのかと思いたかったが、やはり少々工作もされていたか…難しいな」


 悪魔による被害が出てきたが、これが中々重いところ。

 入られないようにしていたとしても、彼らは心の隙間を突くようにしてかいくぐり、狙ってくることがある。


 今回も、そのすきまをいろいろとぬけてやってきたようであり、かなりの厄介さを見せているだろう。


「まったくなんて厄介なものを…特に今回は、直に王都が吹っ飛ばされかねないものだったというのが…」


 危うく人間爆弾ですべてが吹き飛びかけたが…それに関しては収めた者がいるようだ。


「それで、どうにか爆発を防いだのは…ああ、例の厄災種の彼女か」

「これは本当に助かったな…避難も時間がかかっていたし、下手すれば…」


 想像したくない、王都の民が全て悪魔の手によって命を奪われる光景。


 そうなりかねなかったところを救われたのは、非常に大きいだろう。


「この件に関しても、褒美を与えたいところだが…モンスターに送る形になるか」

「一応、なんやかんやと因縁を付けそうな馬鹿もありそうでしたが、今回に限っては紛れもなく救った行動がありますからな…反対意見も出さないでしょう。いえ、出すのであれば、お前があの人間爆弾を止めて見せろとでもいえば、どうにでもなるでしょう」


 王都を吹き飛ばしかねない、危険物。

 それに一人立ち向かい、解除して見せた功績はかなり高い。


「ただ…与えるにしても、しばらく時間がかかりそうですが」

「む?どういうことだ?」

「なんでも、大量のマナを浴びた影響で…」









「‥‥なるほど、これはマナ酔いだね」

「マナ酔い?」

【ヴヴヴヴゥ…気持ち悪いです…うぇ…】



…以前の褒美で与えられた、ジャックの邸。


 その一室、ハクロ用の部屋にて、ハクロはグロッキーな様子を見せていた。


 人間爆弾の恐怖が去ったのは良いのだが、その後に倒れてここに運び込み…色々と思うところがあるとはいえ、こういう時の専門家を模索した結果、シルフィさんを呼んだのである。


 モンスターに対して呪いで怒りなどを抱かせてしまうのもあり、一旦全員離れてはいるが、それでもモンスターに関しての研究家でもあるため症状を見てもらったのだが…どうも、マナによるものらしい。


「流石にこの状態を見てまで、色々好き勝手に調べるつもりはないから真面目に診察したけど、大量のマナを扱ったことによって、体内のバランスが崩れた状態よ。わかりやすく言えば…酒の中に頭を突っ込んで飲みまくったような、そんな状態かな」

「精霊が扱うらしいものが、酒扱いか…」

「んー、間違ってもないのよね、これ」



 エルフであるからこそ、彼女は知っているらしい。

 精霊が扱うマナ…それは、本来空気中には微量に含まれている力らしいが、適量取り込むことができれば、身体の活性化など良いことがある。


 だがしかし、薬と毒は表裏一体のように、マナもまたいいことばかりではなく、多すぎると体のバランスを崩し、二日酔いのような症状が出るマナ酔いと呼ばれるものを引き起こしてしまうようだ。



「マナ酔いは人間もエルフもモンスターも関係なく起こりえることがあるもので…大体1~2週間ぐらい、この症状で苦しむわね」

「うわぁ…きっついな」

「ついでに言えば、魔力も乱されるから魔法を扱う人は魔法が使えなくなるし、身体能力が高い人は極端に落ちるし、ひどいことばかりね。まぁ、本来はそこまでマナが大量にある場所なんてそうそうないから、この症状が出ることはないのだけれども…」



 一応、精霊が何かやらかしてマナが大量に満ちたマナだまりなんて場所があるらしいが、そういうものはそんなに発生せず、滅多に見ることはない症状らしい。


「今回はその悪魔がやらかした筋肉膨張に扱ったマナが原因ね。吐き出させる過程で大量に放出させれば、マナ晒されまくって…こうなるのよ」

【ヴヴヴヴヴヴゥ…ヴぅぶ…お腹に中に今、何もないのにまだ何か吐きそう…】

「この症状、緩和できないでしょうか」

「無理ね。こればっかりは自然回復を待つしか治療方法が無いのよ…まぁ、幸いなことに確実に治るから、永遠に続くわけではないことぐらいかもね」



 悲しいことに、多少の緩和もできないらしい。

 そのため、当分の間ハクロは動くことが出来なさそうであった‥‥





「…それにしても、よくマナを扱えたわね。いいえ、結構荒っぽい方法をとったようだけれども…モンスターが扱えるなんて、初めて聞いたわよ」

「え、シルフィさんにもですか?」

「ええ、だから本当は滅茶苦茶根掘り葉掘り聞きだしたいけど…うん、流石にこれは無理ね」


…多少は良心というか、常識は持ち合わせていたようであった。



「ああ、でもそれならばそっちのファイさんのほうが気になるわねぇ…」

【ヒィェッ!?】

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